年金を「繰下げ受給」すると“最大84%”も増額される? 年金受給額が“平均である月額15万円程度”の方が「5年繰下げ」た場合の“年金額”は?

配信日: 2025.12.29
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年金を「繰下げ受給」すると“最大84%”も増額される? 年金受給額が“平均である月額15万円程度”の方が「5年繰下げ」た場合の“年金額”は?
老齢年金は原則65歳から受給できますが、受け取り開始を遅らせることで年金額を増やすことができます。なかでも「繰下げ受給」を選択した場合、75歳まで繰り下げることで年金額は最大84%増額される仕組みです。
 
では、年金受給額が月額15万円程度の人が、5年間繰り下げた場合、実際にいくら受け取れるのでしょうか。
 
本記事では、具体的な計算例を用いながら、「繰下げ受給」による年金額の増え方を分かりやすく解説します。
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「年金の繰下げ受給」の増額率は“最大84%”

老齢年金は、原則の受給開始年齢である65歳を過ぎても受け取らず、66歳以降に繰り下げて請求することで年金額を増やすことができます。この「繰下げ受給」による増額率は、1ヶ月あたり0.7%で、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%です。繰下げ受給をした場合の年金額は、65歳時点の年金額に、この増額率を加えて算出されます。
 
増額率=0.7パーセント×65歳に到達した月から年金を請求する前月までの月数
 
一例として、65歳から68歳まで繰り下げた場合の増額率を計算してみましょう。
 
68歳から老齢年金の受給を始めた場合は36ヶ月の繰り下げとなりますので、「0.7パーセント × 36ヶ月」という計算になり、増額率は「25.2パーセント」になります。ちなみに繰り下げ期間は1ヶ月ごとに算入されます。
 
表1は請求時の年齢に応じた増額率の一覧です。
 
表1

請求時の年齢 増額率
66歳 8.4%
67歳 16.8%
68歳 25.2%
69歳 33.6%
70歳 42.0%
71歳 50.4%
72歳 58.8%
73歳 67.2%
74歳 75.6%
75歳 84.0%

出典:日本年金機構「繰下げ増額率早見表(詳細版)」を基に筆者作成
 
振替加算額を除く老齢基礎年金の額および加給年金額を除く老齢厚生年金の額に、増額率をかけて加算することで老齢年金の受給額が決定します。老齢厚生年金と老齢基礎年金はそれぞれが増額され、増額は生涯にわたって続きます。また、どちらか一方のみ繰り下げすることも可能となっています。
 
なお、老齢年金には65歳より前に受給を開始することで年金額が減額される「繰上げ受給」もあります。
 

老齢厚生年金受給権者の繰下げ率は“1.6%”で上昇傾向

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和5年度」によると、令和5年度末時点で、基礎年金月額を含む厚生年金保険(第1号)の受給権者平均年金月額は「14万6429円」となっています。
 
また、老齢厚生年金受給権者の繰下げ・繰上げ受給状況の推移は、令和5年度末現在で繰下げ受給率は1.6パーセント、繰上げ受給率が0.9パーセントとなっており、70歳での繰下げ・繰上げ受給状況の推移では、繰下げ受給率は3.2パーセント、繰上げ受給率は0.9パーセントと、繰下げ受給を選択する人の割合は上昇傾向にあります。
 

年金受給額が“平均である月額15万円程度”の方が「5年繰り下げ」た場合の“年金額”は?

ここでは上記の平均年金月額をおよそ「15万円」として、65歳から5年繰り下げた場合、増額率は「0.7パーセント×60ヶ月=42.0パーセント」となるため、70歳から受け取れる年金額は下記のように算出できます。
 
15万円×1.42=21万3000円
 
また、令和7年度における夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額である「23万2784円」をおよそ「23万円」として計算した場合、5年繰り下げた際の年金額は下記のように算出が可能です。
 
23万円×1.42=32万6600円
 

まとめ

繰り下げ期間にもよりますが、繰下げ受給の増額分はなかなか大きい金額になると考えられます。例えば1年待つだけでも多少の増額となるため、非常に悩ましい選択となるのではないでしょうか。そのときの健康状態や経済状態を踏まえ、家族としっかり相談した上で年金受給のタイミングを決めたいところです。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 繰下げ増額率早見表(詳細版)
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和5年度
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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