年金の受給手続きを忘れて、勝手に「繰下げ」になっていた! 繰下げを撤回して、今すぐ受け取ることはできますか?
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
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繰下げて受給額を増やすのも一案
公的年金に関しては、日本年金機構から毎年誕生日月に定期的に通知が送られます。「自分の年金の状況や、将来どのくらいの年金を受給できるのかが分かるので確認してください」というのが、ねんきん定期便の趣旨ですが、開封せずにいる人も多いようです。
同様に、受給の手続きをすることなく「時期が来たら銀行口座に振り込まれるのだろう」と放っている例もあります。年金を受給するには、自ら「受給します」と年金請求の手続きをする必要があります。
今回の相談者のように、意図せずに繰下げになった場合は、受給の手続きをすればすぐに受け取ることができます。その場合、本来受け取れるはずの65歳からの受給金額がどうなるのか気になりますが、心配にはおよびません。
現在66歳ならば、1年分をさかのぼって受け取ることができます。ただし、ここで「一括で受け取るのがよいのか?」と立ち止まることも重要です。
というのも、現時点で受け取る方法には以下の2つの選択肢があるからです。
(1)繰下げを撤回する。
先述のように65歳から受け取れた分を一括で受け取ります。
(2)「繰下げを撤回する」ことを撤回する。つまり「繰下げ受給」を選択する。
現在66歳ならば、1年繰下げて受給します。66歳以降は1ヶ月単位で繰下げることができ、これにより年金の受給金額をアップできます。
66~75歳までの間に繰下げた場合の増額率は図表1のようになり、計算式は以下のようになります。
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申し出月の前月までの月数
(図表1)
実際の受給手続きと受給額のシミュレーションについては、年金事務所に相談されることをお勧めします。
自分にあった受け取り方を選ぶポイント
「どちらの受け取り方をするのか?」を考えるポイントは、次のように整理できます。
■今、まとまったお金が必要なのかどうか
=必要ならば、迷うまでもなく「一括でもらう」を選択
■「すぐにお金が必要ではないが、手元にまとまったお金があると安心」と「将来にわたり受給額が増えると安心」の、どちらが自分にとって安心かを比べてみると判断しやすいでしょう。
「どちらがお得なのか?」と考えがちですが、それは突き詰めれば「いつまで生きられるか」という難しさがあります。
ただし、それぞれに注意点があります。一般的には、一括で受け取ると、税金や社会保険料が増える可能性があります。繰下げ受給を選択した場合は、その待機期間中は加給年金や振替加算は支給されません。またそれらは、繰下げても増額されません。
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入していて、扶養家族(65歳未満の配偶者または18歳未満の子ども)がいるときに受け取れる家族手当のようなものです。これは老齢厚生年金にプラスして受給することになっています。
繰下げ受給によって受取金額は増やしたいが、加給年金も受取りたい場合は、「老齢基礎年金だけを繰下げて、老齢厚生年金は繰下げない」というやり方もあります。
老齢年金を請求するときに、65歳以上の人は、年金請求書にあわせて「老齢年金の受取方法確認書」を提出します。老齢基礎年金・老齢厚生年金、それぞれの受取方法については以下のとおりです。
■65歳から受け取ります
■今回請求しません(後日、あらためて繰下げ請求します)
■66歳までさかのぼって受け取ります
■今回請求しません(後日、あらためて繰下げ請求します)
■現時点で繰下げて受け取ります
このように、受け取り方を別々に選択できます。ただし、繰下げた年金を実際に請求できるのは66歳以降なので、65歳6ヶ月では繰下げできません。
「いつまで働くのか?」「自分の預貯金はどのくらいあるのか?」「今後の生活にはいくら必要なのか?」、年金は老後の生活の根幹になるものです。受け取り方だけでなく、将来の生活設計を考える機会にするとよいでしょう。
出典
日本年金機構 66歳以後に年金の請求(繰下げ請求または65歳にさかのぼって請求)をするとき
日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

