51歳シングルマザーです。シングルだと年金は夫婦で受け取る場合よりも少なくなるの? 増やす方法はありますか?
本記事ではそんな忙しいシングルマザーの方に向けて、年金の知識を少しでも増やせるよう、「夫婦で受け取る場合よりも年金は本当に少なくなるのか」、「どうすれば少しでも増やせるのか」という2つの疑問について解説します。
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
目次
シングルだと年金で本当に不利なの?
まずは、表題にある「シングルだと年金は夫婦で受け取る場合よりも少なくなるの?」について考えてみましょう。結論から言えば、「そうなる可能性もあるが、必ずしもそうとも言い切れない」となります。
いわゆる、「一般的な家庭」とされるケースのデータで考えてみましょう。
厚生労働省が毎年、老齢厚生年金の標準的な金額を公表しています。別名、モデル年金とも呼ばれているデータです。令和7年度のモデル年金は、月額23万2782円です。(毎年見直されます、※1)
この金額が少ないか、多いかは別として、この金額がどのように計算されているかご存じでしょうか。これは、次のような夫婦をモデルとして計算したものです。
・夫が会社員、妻が専業主婦
・夫は40年間働き、平均標準報酬(年金額計算の元となる数値。ここでは賞与を含む収入の平均値とお考えください)は月額45万5000円
・妻は厚生年金に一度も加入していない(その場合、受け取れる年金は老齢基礎年金のみです)
つまりモデル年金とは、夫が老齢厚生年金と老齢基礎年金、妻が老齢基礎年金だけを受け取った場合の合計額であり、式にすると以下のようになります。
■ 夫の年金(老齢厚生年金+老齢基礎年金)+妻の年金(老齢基礎年金)=23万2782円
「夫がずっと会社員で、妻がずっと専業主婦なんて、今の時代そんな家庭のほうが珍しいのでは?」と思われるかもしれません。たしかに、このモデル年金のあり方にはさまざまな議論がありますが、本記事のテーマを分かりやすく説明するための例にすぎないことは、ご了承ください。
では、もし夫が年金を受け取る前にいなくなり、妻がシングルマザーになったら年金はどうなるのでしょうか?
モデル年金を元に単純に考えると、夫の年金はなくなってしまい、妻が自身の年金しか将来受け取れないようにも見えます。しかし次に示すように、そうとは限りません。
死別の場合は、遺族年金がある
シングルマザーとなった要因が、「死別」「離婚」のそれぞれで考えてみましょう。
まずは、死別の場合です。夫が厚生年金に加入中に死亡するなどした場合(その他要件あり)、夫の分の年金がなくなってしまうのではなく、原則夫の死亡日の翌月分から遺族厚生年金を妻が受け取ることができます。
この遺族厚生年金は、夫の生前受け取った収入額と勤務期間などを元に計算される報酬比例部分の原則4分の3です。もし妻が30歳以上で死別した場合は、一生涯受け取ることができます(2028年4月以降は、60歳未満で死別すると原則5年間の有期給付に変更されます、※2)。
さらにお子さまがいる場合、その子が18歳になった年の翌3月31日まで(障害があるお子さまは状態により20歳未満まで)は老齢基礎年金を合わせて受け取ることもできます。
夫婦のままでいれば最低でも60歳になるまで年金は受け取れませんが、死別の場合は原則その時点から受け取ることができるので、“一生涯での合計”という視点で見れば、死別のほうが年金額は多くなる可能性もあります。
ただしこれは、あくまでも年金額での比較です。死別の場合は当然、働いていた夫がいないということになるため、トータルの収入は少なくなるでしょう。
離婚の場合は、離婚時の厚生年金分割制度がある
次に、離婚の場合を考えてみましょう。この場合は、死別ではないので、遺族年金を受け取ることはできません。
ただし、離婚しても夫の老齢厚生年金を受け取ることができる制度があります。それは、「離婚時の厚生年金分割」です。この制度では、離婚したときに夫婦の一方が年金額で不都合が生じないよう、もう一方の厚生年金記録(標準報酬月額および標準賞与額)を分割することができます。(※3)
つまり、モデル年金のケースでは、離婚時の厚生年金分割を行えば、妻は老後に老齢基礎年金だけではなく、夫の老齢厚生年金の一部に相当する額を受け取ることができるようになります。(その分、元夫の老齢厚生年金は少なくなります)
実際にどのような割合で分割するかは、夫との話し合いで決められますが、合意できない場合は、家庭裁判所の決定によります。
したがって、厚生年金の分割割合にもよりますが、前述の死別の場合と同様に、離婚の場合であっても夫婦でいたままのほうが必ず年金が多くなる、ということではありません。
年金を増やすためにしておきたいこと
次に、表題の2つ目の疑問、「(年金を)増やす方法はありますか?」について考えてみます。
表題の方は51歳。まだまだ人生これからで、かつ国民年金の加入終了まで(原則60歳まで)はあと9年、老齢年金受給(原則65歳から)まではまだ14年もあります。そこで、年金を少しでも増やすために、次の取り組みをしてみてはどうでしょうか。
1. 国民年金の加入期間に空白がないか、「ねんきん定期便」でチェック
国民年金の老齢年金である老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間、保険料を支払うことによって満額を受給できますが、もし空白期間(保険料が未納、もしくは保険料の免除を受けていたなど)があると、その分、年金額が少なくなります。
もし空白期間があるようであれば、保険料の追納制度(過去10年分まで)や、任意加入(60歳以降も保険料を支払うことが可能)を利用して、老齢基礎年金の受給額を満額にできるだけ近づけましょう。
2. 厚生年金に加入する
もし今、国民年金のみの加入であれば、勤務先と相談するなどしてシフトを増やすなどして厚生年金に加入して、老齢厚生年金の受給につなげましょう。もちろん、子育てや自身の健康に配慮しつつ、無理のない範囲で行ってください。
3. 国民年金の付加年金や、国民年金基金、iDeCoなどを利用する
少しでも家計に余裕があれば、これらを始めてみましょう。国民年金の付加年金は、月400円を国民年金保険料に追加するだけで、200円×付加保険料の納付月数に相当する年金を、老齢基礎年金に上乗せすることができます。
また、国民年金基金やiDeCoなど、自分で掛金や拠出額を決めて、それに応じた年金を受け取れる制度もあります。ぜひ、検討してみましょう。
4. 忘れていた年金がないかチェック
「将来の年金なんてほとんどない」と思っていても、実は年金があるというケースも考えられます。特に転職や退職の経験がある方は、前職の退職時に、将来年金受け取りで申請した退職金がないか、または、転職先の年金制度に移し忘れた年金はないでしょうか。もし少しでも思い当たるようであれば、前職の職場に確認してみましょう。
年金に限らず、家計全般についてFPに相談してみよう
ここまで、「夫婦で受け取る場合よりも年金は本当に少なくなるのか」、「どうすれば少しでも増やせるのか」という2つの疑問について解説しました。
本記事では、いわゆる「モデル年金」を元に検証してみましたが、男女の役割や仕事の選択、夫婦のあり方などが多様化している現在では、モデル年金にきっちり当てはまる場合のほうがむしろ少ないといえるでしょう。そのようななかで、夫婦でいる場合とシングルでいる場合、「どちらが年金のうえでは得か」という問いには答えがありません。
一方、年金だけでなく収入を含めた家計面では、シングルマザーの置かれた状況が、夫婦でいることと比べて厳しい面があるのは否めません。不安のある方は、FPなどの専門家に、年金だけではなく、家計全般について一度相談してみてはいかがでしょうか?
出典
※1 日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
※2 日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
※3 日本年金機構 離婚時の年金分割
執筆者 : 酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。


