求職中で「年金保険料1年分」の支払いを“猶予”されてました。追納に「20万円」かかるのですが、払うと年金はいくら増えますか? 払わなくても正直“影響はない”でしょうか?
このままでは満額の老齢基礎年金が受けられないので、追納を検討していますが、追納保険料を考えると「本当に追納したほうがよいのか?」と迷っています。仮に追納した場合、老齢基礎年金はいくら増えますか? 追納する価値はあるのでしょうか?
本記事では、このようなケースの場合、追納によって増える年金額や、追納すべきかについて紹介します。
特定社会保険労務士・FP1級技能士
国民年金保険料が納められないとき
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入することが義務付けられています。このうち、会社員などは厚生年金保険料を給料から天引きされますが、自営業者や無職の人などは、国民年金保険料を自分で毎月納付する必要があります。
しかし、長い人生の中では、収入の減少などにより納付が滞ることもあるかもしれません。2025年度の国民年金保険料は1万7510円で、決して安くはありません。
とはいえ、支払いが大変だからと未納にしていると、万一の場合の障害年金が受けられなくなるなど、大きなデメリットが生じます。そうしたときに活用できる制度が「納付猶予」制度です。
国民年金保険料の納付猶予とは
納付猶予とは、国民年金保険料の支払い義務を猶予し、将来、本人の判断によって追納(=後で支払う)できる制度です。納付猶予された保険料は10年以内であれば追納できるため、今は保険料が支払えなくても、将来、経済的に安定したときに納めればよいのです。
また、全く追納をしなかった場合でも、法的な罰則はありません。納付猶予された期間は、年金の受給に必要な「10年」の受給資格期間にもカウントされます。ただし、「将来の老齢基礎年金の額が、生涯にわたって減額される(満額にならない)」という大きなデメリットがあります。
納付猶予の対象者
納付猶予制度が適用されるのは、次の全てに該当する人です。
・20歳以上50歳未満
・本人と配偶者の前年所得(1月~6月に申請する場合は前々年所得)が一定以下
・学生納付特例の対象者ではない
なお、本人と配偶者の所得は、次の額以下とされています。
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
また、失業や倒産などにより保険料の納付が困難になったときは、前年の所得をゼロとして計算されます。
納付猶予された保険料を追納すると
納付猶予されていた保険料は、追納が承認された月の前10年以内であれば追納できます。追納することで、将来の老齢基礎年金を満額に、または満額に近づけることができます。
では、仮に1年分を追納すると、老齢基礎年金はどのくらい増えるのでしょうか?
1年分を追納すると
老齢基礎年金の額は、20~60歳の40年間の保険料納付月数によって決まります。納付猶予を受け、追納しなかった期間があれば、その月数に応じて、生涯にわたり年金が減額されます。2025年度の老齢基礎年金額(満額は83万1700円)で計算してみましょう。
・83万1700円/480月(40年)×12月=2万792.4…円
追納することで、1年につき約2万円、老齢基礎年金が増える結果になります。仮に20年間受給した場合、追納しなかったときとの差額は40万円以上になる計算です。
追納は分割でも
「1年分を追納するのは、今でもやはり経済的に厳しい」という人もいるでしょう。追納は一括でする必要はなく、分割でも可能です。少し余裕があるときに、少しずつ追納することもできるのです。
なお、追納額は、原則として「納付猶予された保険料+加算金」です。納付猶予当時の保険料に、経過期間に応じた額が加算されます。2025年度に追納する場合の具体的な追納額は、図表1のとおりです。なお、追納額は追納する年度により異なります。
図表1
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
追納はしたほうがよい?
国民年金保険料を追納すれば、将来の老齢年金が満額、あるいは満額に近づき、増加した年金額が生涯支給されます。
また、追納した国民年金保険料は社会保険料控除の対象になるため、その年の節税にもつながります。そう考えると、経済的に少し余裕がある人は、余裕の範囲内で追納を検討してもよいと考えられます。
一方、現在も経済的に厳しい状況であれば、食費や教育費など必要な費用を削ってまで、無理に追納する必要はないでしょう。追納するかどうか、また追納する場合はどのくらい追納するかの基準は、一人ひとり異なります。自身の状況をよく見極めて判断してください。
まとめ
国民年金保険料の納付猶予制度は、非正規雇用労働者の増加を受け、2005年度から開始されました。このときの名称は「若年者納付猶予」制度で、対象者の年齢は「30歳以下」でした。その後、2016年から対象者の年齢が50歳に引き上げられ、名称も「納付猶予」制度に変わりました。
以前、納付猶予を受けていて、今は経済的に少し余裕がある人は、将来の年金を満額に近づけられ、かつ節税にもつながるため、追納を検討してはいかがでしょうか?
出典
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
厚生労働省 国民年金保険料の納付猶予制度について
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
