65歳以降も元気なうちは働こうと思いますが、年金がカットされると聞きました。本当ですか?
60歳以降に厚生年金を受給できるようになる際、賃金と年金の合計額が一定額を超えると老齢厚生年金が減額されます。このしくみを、「在職老齢年金」といいます。
このしくみがあるため、本来ならもっと働きたいのに就業を抑制する高齢者もおり、働く意欲を低下させています。2026年4月から在職老齢年金の支給停止となる基準の額が大幅に改正され、高齢者の就労が促進され人手不足の解消も促されるでしょう。
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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在職老齢年金のしくみ
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。
一方、老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合、老齢基礎年金に上乗せして、原則65歳(男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた方)から受け取ることができます。つまり、会社員等は原則65歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できます。
在職老齢年金とは、働きながら老齢厚生年金を受け取る方の賃金(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額の合計が一定準額を超える場合に、超えた額の半分を老齢厚生年金から減額するしくみです。支給停止額(月額)は、以下の計算式で求めます。
【 支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2 】
※ 基本月額は、老齢厚生年金(加給年金額、経過的加算額、繰下げ加算額を除く)の年金額を12で除した額をいいます。厚生年金基金加入期間がある場合、代行部分は本来国が支給する年金額とみなされ、その金額をもとに基本月額が計算されます。
※ 総報酬月額相当額は、その年の標準報酬月額とその月以前12ヶ月間の標準賞与額を12で除した額の合計をいいます。
在職老齢年金のポイントは、以下のとおりです。
・賃金と年金の合計が、支給停止基準額を超えた場合、超えた額の半分が老齢厚生年金の額から減額されます。
・年金のうち、支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみです。
・老齢厚生年金の一部でも受け取れれば、加給年金は全額受け取れます。
・老齢基礎年金は、減額されません。
・支給停止される額の計算は、月額単位で行います。
・支給停止基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
・支給停止となる部分は、繰下げ受給をしても増額の対象となりません。
・70歳以降も働く場合、保険料の負担はありませんが、在職老齢年金のしくみは継続します。
支給停止調整が大幅に改定された
2026年3月までの支給停止調整額は月51万円でしたが、在職老齢年金制度の見直しにより、2026年4月から65万円に引き上げられました。これにより、60歳以降の働き方が大きく変わるでしょう。
例えば、総報酬月額相当額が50万円、老齢厚生年金の基本月額15万円の人は、2026年3月までは基準額の51万円を14万円上回るため、その半分にあたる7万円が基本月額15万円からカットされ、8万円しか受け取れませんでした。
それが、2026年4月からは支給停止調整額が65万円に引き上げられたため、老齢厚生年金は全額支給となり、1年間に換算すると老齢厚生年金の支給額が84万円増えることになります。
まとめ
健康寿命が延びるなかで、働き続けることを希望する高齢者の方が増えています。一方、年金がカットされるなら、年金額が減らないよう時間を調整し働く方も少なからずいて、在職老齢年金制度が労働の意欲を低下させています。
そこで、高齢者の活躍を後押し、働きたい人がより働きやすいしくみとするため、老齢厚生年金が支給停止となる基準額を2026年4月より51万円から65万円に引き上げられましたので60歳以降の働き方を見直しましょう。
出典
内閣府 令和7年版高齢社会白書(全体版)
日本年金機構 在職老齢年金制度が改正されました
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。