年金を繰下げ受給しない選択をしました。結果的に「早めにもらっておいてよかった」と感じているのですが、世間ではなぜ繰下げがいいと言われているのでしょうか?
ただし、誰にとっても正解というわけではありません。生活費、健康状態、貯蓄、働き方によって、早めに受け取るほうが合う人もいます。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
繰下げ受給がよいと言われる理由は年金額が増えるから
原則として65歳から受け取ることができる老齢年金を60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることを「繰り上げ」受給と言います。一方で、66歳以降75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることを「繰り下げ」受給といいます。
繰下げ受給がよいと言われる大きな理由は、受け取り開始を遅らせるほど年金額が増えるためです。厚生労働省や日本年金機構によると、増額率は1か月あたり0.7%です。
・ 繰下げ増額率=0.7%×繰り下げた月数(65歳~75歳)
この計算式に当てはめると、70歳まで繰り下げた場合は42%、75歳までなら最大84%増額されることになります。
表1
| 請求時の年齢 | 割合 |
|---|---|
| 66歳 | 8.4% |
| 67歳 | 16.8% |
| 68歳 | 25.2% |
| 69歳 | 33.6% |
| 70歳 | 42.0% |
| 71歳 | 50.4% |
| 72歳 | 58.8% |
| 73歳 | 67.2% |
| 74歳 | 75.6% |
| 75歳 | 84.0% |
昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなりますので、増額率は最大で42%となります。
※日本年金機構HP 「年金の繰下げ受給」より引用
この増額は一時的なものではなく、生涯続きます。そのため、長生きするほど、繰下げ受給のメリットは大きくなります。人生100年時代と言われるなかで、老後の長い期間に備える方法として繰下げが注目されているのです。
また、65歳以降も働いていて生活費に余裕がある人は、すぐに年金を受け取らなくても生活できます。その場合、年金を後回しにして将来の受取額を増やす選択は、老後後半の安心につながります。
ただし、増額されるから必ず得とは限りません。受け取らない期間は年金収入がないため、その間の生活費を貯蓄や給与でまかなう必要があります。貯蓄を大きく取り崩してまで繰り下げると、かえって不安が増えることもあります。
早めにもらう選択にも大きな意味がある
65歳から年金を受け取る選択にも、十分な意味があります。まず、毎月の生活費に年金を使えるため、貯蓄の取り崩しを抑えられます。退職後すぐに収入が減る人にとって、年金は生活を安定させる大切なお金です。
健康状態に不安がある人や、長く働く予定がない人も、早めに受け取るほうが安心かもしれません。繰下げは長生きすれば有利になりやすい一方、早く亡くなった場合は、受け取れる総額が少なくなる可能性があります。
また、年金を受け取りながら、旅行や趣味、家族との時間に使うことも大切です。老後の前半は体力があり、行動しやすい時期です。将来の金額を増やすことだけを重視しすぎると、元気なうちに使えるお金が少なくなることがあります。
「早めにもらっておいてよかった」と感じるのは、制度上間違った判断だったという意味ではありません。自分の生活に合っていたからこそ、満足できているのです。年金は損得だけでなく、安心感や暮らし方も含めて考える必要があります。
繰下げには税金や保険料が増える可能性もある
繰下げ受給では年金額が増えますが、その分、税金や社会保険料に影響することがあります。年金収入が増えると、所得税や住民税、国民健康保険料、介護保険料などが増える場合があります。
また、医療費や介護サービスの自己負担割合に影響することもあります。年金額だけを見ると増えていても、手取りで見ると思ったほど増えない場合があるのです。厚生労働省も、繰下げ受給では税金や医療保険、介護保険などに影響する場合があると案内しています。
さらに、加給年金や振替加算などは繰下げの増額対象にならない点にも注意が必要です。配偶者がいる人は、繰下げ待機中に受け取れない給付があるかもしれません。自分の年金だけで判断すると、世帯全体では不利になることがあります。
繰下げを考えるなら、年金事務所で見込み額を確認し、税金や保険料の影響も含めて考えることが大切です。単純に「増額率が高いから得」と決めるのではなく、手取り額と生活設計で判断しましょう。
まとめ
年金の繰下げ受給がよいと言われるのは、受け取り開始を遅らせることで年金額が増え、その増額が生涯続くためです。長く働ける人や、貯蓄に余裕がある人、老後後半の収入を厚くしたい人には向いている場合があります。
一方で、65歳から受け取る選択にもメリットがあります。生活費にすぐ使えるため貯蓄を守りやすく、元気なうちにお金を活用できます。健康状態や家計によっては、早めにもらうほうが安心につながることもあります。
繰下げは有利な制度ですが、誰にでも正解とは限りません。税金や保険料、配偶者の年金、生活費、健康状態を含めて考えることが大切です。結果的に「早めにもらってよかった」と感じているなら、その選択はあなたの暮らしに合っていたと考えてよいでしょう。
出典
厚生労働省 年金制度の仕組みと考え方_第11_老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給
日本年金機構 老齢年金
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
