妻が亡くなったとき、遺族年金はもらえる? 共働き世帯の落とし穴

配信日: 2019.09.09 更新日: 2021.06.22

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妻が亡くなったとき、遺族年金はもらえる? 共働き世帯の落とし穴
総務省が発表した「労働力調査(2019年6月分)」(※1)によると、女性の就業者数が初めて3000万人を超えました。これは、女性の生産年齢人口(15~64歳)の実に71.3%が就業していることになり、専業主婦が減り、共働きの世帯が増えていることが分かります。
 
しかしながら、わが国の遺族年金制度は、男女で格差があり、妻が亡くなったときの保障が必ずしも十分ではありません。そこで今回は、遺族年金の仕組みと受給例について解説します。
 
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

遺族年金が想定しているモデル世帯と遺族年金の仕組み

わが国の遺族年金(※2)は、サラリーマンの夫と専業主婦の妻とその子どもをモデル世帯として設計されました。したがって、夫が死亡したときに妻が困らないように作られています。
 
遺族年金の仕組みは、下図のとおりです

 

 
図について簡単に解説します。もし仕組みをご存じの方は読み飛ばしていただいて構いません。
 
まず、18歳になった年度末までの子がある妻には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。そして、末の子どもが18歳の年度末を迎えると、遺族基礎年金は支給停止、遺族厚生年金は継続されます。
 
また、妻が40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金には「中高齢の寡婦加算額」が加算されます(ただし、遺族基礎年金を受給している間は中高齢の寡婦加算額は支給停止されます)。この中高齢の寡婦加算額は、夫が死亡した時点で40歳以上65歳未満の子のない妻にも加算されます。
 
65歳になると、老齢基礎年金の支給が開始されます。一方、老齢厚生年金を受給できる場合、遺族厚生年金の額が老齢厚生年金の額を上回れば、その差額が支給されることになります。

 

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夫婦共稼ぎ世帯の妻が亡くなったとき遺族年金はどうなる?

それでは本題ですが夫婦共働きの世帯で妻が亡くなったときの遺族年金はどうなるのでしょうか。年代別に見て行きましょう。
 

(1)子どものいない新婚世帯

子どものいない夫婦共働き世帯で妻が亡くなった場合、夫が55歳未満であれば遺族基礎年金も遺族厚生年金も一切ありません。
 

(2)18歳の年度末までの子のいる世帯

18歳の年度末までの子がいる夫婦共働きの世帯で妻が亡くなった場合、末の子が18歳の年度末を迎えるまでは、遺族基礎年金と、子に支給される遺族厚生年金を受給することはできます。しかし夫が55歳未満であれば夫には遺族厚生年金の受給資格はありません。
 


 

(3)18歳の年度末までの子のいる夫(55歳以上)の中年世帯

18歳の年度末までの子がいる夫婦共働きの世帯で妻が亡くなった場合、夫が55歳以上であれば、末の子が18歳の年度末を迎えるまでは遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給することができます。
 
また、末の子が18歳の年度末を迎えると遺族基礎年金は終了し、遺族厚生年金は支給が停止されます。そして、夫が60歳になると遺族厚生年金の支給が再開されます。
 


 

(4)夫55歳以上の中年世帯

対象の子がいない夫婦共働きの世帯で妻の死亡時に夫が55歳以上であれば、遺族厚生年金を受給することはできますが、受給できるのは原則60歳からです。
 


※2を参考に筆者作成

遺族基礎年金は男女平等に変更されました

遺族基礎年金の支給対象者は、2014年3月までは、死亡した者によって生計を維持されていた「子のある妻」となっていましたが、現在では、「子のある配偶者」となっていますので、この点では男女平等になりました。
 
この規定にある「子」とは、「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」または、「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子」に限られます。また、子どもが婚姻している場合は、対象外となります。
 
なお、遺族基礎年金を受給するためには、一定の支給要件と保険料納付要件を満たすことが必要です。
 

遺族厚生年金には男女格差があります

遺族基礎年金とは異なり、遺族厚生年金は男女平等とはなっていません。遺族厚生年金の支給対象者は、以下の優先順位となります。
 

(1)子のある妻、子のある55歳以上の夫
(2)子
(3)子のない妻、子のない55歳以上の夫
(4)55歳以上の父母
(5)孫
(6)55歳以上の祖父母

 
したがって、遺族厚生年金では、対象となる夫は死亡当時55歳以上であることが条件となっており、男女格差が色濃く残っています。
 
そして、夫、父母、祖父母に支給される遺族厚生年金の受給開始は60歳からになります。ただし、遺族基礎年金を受給できる夫については、その間は、60歳前でも支給停止が解除されるようになりました。
 
また、遺族厚生年金の受給対象となる「子」と「孫」は、遺族基礎年金の「子」の規定と同様になります。なお、遺族厚生年金を受給するためにも、一定の支給要件と保険料納付要件を満たすことが必要です。
 

まとめ

夫婦共働き世帯が増える中、妻が亡くなったときに支給される遺族厚生年金は、男性にとって不利な制度になっています。したがって、妻と夫の収入の割合に応じて、生命保険等の死亡保険金で妻の死亡保障を補っておく必要があります。
 
出典
(※1)総務省 労働力調査 2019年6月分
(※2)日本年金機構 遺族年金
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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