年金の繰上げ・繰下げ受給ってどんな仕組み? 一体、どれくらい利用されてるの?

配信日: 2020.04.30

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年金の繰上げ・繰下げ受給ってどんな仕組み? 一体、どれくらい利用されてるの?
公的年金は原則65歳から支給されますが、請求すれば最短60歳から受給でき、請求しなければ最長で70歳まで受給を引き延ばすことができます。
 
年金受給の繰上げ・繰下げによって受給額に差が生じますが、この制度が実際にどのくらい利用されているのか、その利用状況と、繰上げ・繰下げ双方の注意点について解説します。
 
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

年金の繰上げ・繰下げ受給制度とは?

20歳から60歳になるまでの40年間、全期間にわたり保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。65歳から受給できる満額年金額は約78万円です(2019年4月からの年金額)。(※1)
 
年金は、以下の通り、受給開始年齢を早めたり引き延ばしたりすることができます。

〈繰上げ受給〉

受給開始年齢を早めて請求する制度です。早く受給する分、本来の年金受給額は減額されます。1ヶ月繰り上げることにより0.5%ずつ減額されますので、例えば60歳0ヶ月に繰り上げると、受取額は本来支給される額の70%となります。

〈繰下げ受給〉

繰上げ受給に対して、繰下げ受給では年金受給開始の年齢を引き延ばすことにより、年金受給額が増額していきます。1ヶ月繰り下げることにより0.7%ずつ増額されますので、例えば70歳0ヶ月に繰り下げると、受取り額は本来支給される額の142%となります。

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制度の利用状況と注意点

まず、年金受給の繰上げ・繰下げ制度の利用状況を見てみましょう。
 
2019年12月に公表された厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2018年度末における70歳の国民年金受給権者の繰下げ受給利用率は1.7%、同繰上げ受給利用率は18.8%となっています。(※2)
 
人生100年時代といわれる今、65歳を超えても働き続けることで、年金受給年齢を繰り下げることは、老後の収入を増やす手っ取り早い手段といえます。
 
しかしなぜ、繰下げ受給の利用者は少ないのでしょうか。その理由は、以下に示す繰上げ・繰下げ受給双方の注意点から読み解くことができます。

〈繰上げ受給の注意点〉

60歳まで受給を繰り上げると……
・本来の年金受給額より一生涯減額される。
・一旦請求すると取り消しができない。
・繰上げ受給を請求した場合、妻は寡婦年金を受けられなくなる。
・国民年金の任意加入被保険者になれない。
・65歳までは遺族厚生年金との併給はされない。
・76歳以降は、65歳受給のケースと比べて受取り合計額が少なくなる。

〈繰下げ受給の注意点〉

70歳まで受給を繰り下げると……
・扶養家族がいても加給年金を受け取れない。
・繰下げ受給により年金が増えることで税金や社会保険料も増える。
・65歳からの受取り総額を追い抜けるのは82歳以降となる。

まとめ

以上の通り、年金の繰下げ受給は加給年金を受け取る機会を失ううえ、長生きしないとお得にならないことが分かります。そのため、自分の健康寿命をかんがみると、将来の収入が増えるといっても繰下げ受給は選びにくいものかもしれません。
 
しかし、意欲をもって働き続けることで年金の繰下げ受給を請求することは、日本の経済にも年金財政にも寄与するものといえるでしょう。そのような方が功労者として増額された年金を長く受け取っていただけるよう、末永く健康で長生きしてほしいものです。
 
出典
※1 日本年金機構「年金の受給(老齢年金)」
※2 厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
 
執筆者:遠藤功二


 

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