うつ病になったら、年金制度で保障されるってホントですか?

配信日: 2020.07.22

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うつ病になったら、年金制度で保障されるってホントですか?
年金といえば、老後の生活を支える老齢年金のみと思っていませんか。今回は、病気やけがによって、生活や仕事などが制限されるようになった場合、現役の方が受給できる「障害年金」について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

うつ病で働くことが困難なときは障害年金が利用できる

働くことが困難となった方の生活を支える障害年金。受給要件には、身体的のみならず、うつ病などの精神的な障害も含まれることを理解しましょう。

1.公的年金制度を理解しよう

わが国の公的年金制度には、全国民が対象となる国民年金と、会社員などが対象となる厚生年金があります。
 
そして、それぞれの年金制度には、老後の生活を支える老齢年金、残された遺族の生活を支える遺族年金、そして、重度の障害を負ってしまったときに受け取ることができる障害年金があります【図表1】(※1)。
 
【図表1】

2.障害の程度に応じて支給される障害年金

障害年金は、病気やけがによって、生活や仕事などが制限されるようになった場合に、20歳以上の方が受け取ることのできる年金です(※2)。
 
厚生年金には、障害の程度に応じて1級から3級の障害厚生年金と障害手当金がありますが、国民年金には障害基礎年金3級と障害手当金はありません【図表2】。
 
【図表2】


 
2級と3級の障害厚生年金額(A)は、給与や賞与の額と加入期間により算出される額となりますが、加入期間の合計が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。また、2級の障害基礎年金額(B)は、定額の78万1700円(2020年度)になります。そして、1級の年金額は、2級および3級の1.25倍になっています。
 
また、障害手当金は、3級の年金額の2年分が一時金として支給されます。
 
なお、障害厚生年金が支給される方には、合わせて障害基礎年金も支給されます。また、障害年金を受給されている方に生計を維持されている配偶者や子(注)がある場合は、障害厚生年金に配偶者の加給年金が、障害基礎年金には子の加算があります(※3、4)。
 
(注:18歳到達年度の末日を経過していない子、20歳未満で障害等級1級または2級の障害者)

3.障害年金を受給するための三要件とは

障害年金を受給するためには、図表3の三要件を満たす必要があります(※3、4)。
 
【図表3】


 
初診日要件では、初診日に会社員などで厚生年金の被保険者であった方は、障害厚生年金と障害基礎年金の受給権がありますが、自営業など国民年金の被保険者であった方は障害基礎年金のみが対象となります。
 
また、保険料納付要件は、次のいずれかの要件を満たすことが求められており、学生や自営業者など国民年金の第1号被保険者が保険料を長期間滞納していた場合などは受給要件を満たしません。
 
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
 
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
 
障害状態要件は、障害の原因となった病気やけがによる障害の程度が、障害認定日または20歳に達したときに、法令の定める障害の状態にあることとされており、障害の部位ごとに障害の程度に応じて詳細に規定されていますが、その概要は図表4のとおりです。
 
【図表4】

 
障害年金に認定される障害には、身体の障害以外に、うつ病を含む精神障害も含まれます(※5)。したがって、けがや体の病気だけでなく、うつ病などの精神的な障害で働くことが難しくなった場合も、障害年金を請求することができるのです。

4.書類のみで認定される障害年金

障害年金の請求手続きは、図表5の流れで行います。
 
【図表5】


 
ここで注意すべき点は、障害認定は、面談などの実地調査ではなく、すべて書類で行われるということです。中でも、認定の可否と等級を決めるうえで「病歴・就労状況等申立書」と「診断書」が重要になります。
 
診断書は、障害の原因ごとに様式が定められており、うつ病の場合は精神の障害用の用紙を使用します。
 
診断書は、障害等級の判定に影響しますので、診断書の作成を依頼する際には、日本年金機構が医師向けに作成している「障害年金の診断書(精神の障害用)記入要領」(※9)を、担当医に参考にしてもらうと良いでしょう。
 
また、病歴・就労状況等申立書は、自分自身で作成することも可能ですが、障害年金の申請手続きを含めて社会保険労務士に依頼することもできます。

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まとめ

障害年金というと、重度の障害で仕事が全くできなくなった人のためのものと考えてはいませんか。障害年金を受給しながら、障害の程度に応じて無理のない範囲で働くという選択もできるのです。
 
また、直接的な身体の障害でなく、うつ病など精神的な障害であっても、障害年金は適用されるものです。該当すると思われる方は、お近くの年金事務所などでご相談ください。
 
なお、うつ病を発症した原因が仕事に起因する場合は、障害年金ではなく労働者災害補償保険(いわゆる「労災保険」)が適用されますので、あわせて確認してみてください。
 
[出典]
(※1)厚生労働省「教えて! 公的年金制度 年金はどのようなときに受け取れるの?」
(※2)日本年金機構「障害年金」
(※3)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※4)日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※5)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
(※6)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
(※7)日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」
(※8)日本年金機構「障害厚生年金を受けられるとき」
(※9)日本年金機構「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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