年金を受け取りながら働く「在職老齢年金」年金改正でどう変わる?

配信日: 2020.07.30

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年金を受け取りながら働く「在職老齢年金」年金改正でどう変わる?
定年退職後は悠々自適の生活も1つの選択ですが、定年退職後も働き続ける方は増えています。
 
しかし、老齢厚生年金を受け取りながら働く(厚生年金加入)の場合、老齢厚生年金と給与や賞与の額によって、年金が支給停止(一部分や全額)になる場合があります。これを在職老齢年金といいます。
 
令和2年の「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、年金を受給しながら働く高齢者の生活基盤が充実するように、以下2点について改正されました。
 
(1)在職定時改定の導入
(2)60歳から64歳の在職老齢年金制度の支給停止基準額を47万円に引き上げ
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

退職改定から定時改定へ

老齢厚生年金は、給与・賞与と加入期間により、受け取れる年金額が決められます。加入期間が長くなるほど、受け取れる年金額が増えるのです。
 
現在の制度では、老齢厚生年金の受給できる年齢になった後に就労した場合、つまり、老齢厚生年金をもらいながら厚生年金に加入している場合は、退職時・70歳到達時などの厚生年金加入者資格喪失時に老齢厚生年金額の改定がされます。
 
65歳時の確定された年金額に、65歳以降に被保険者であった期間分の年金額が加算されます。
 
65歳以降も働き続け70歳で退職した場合、65歳から70歳になるまで厚生年金保険料を支払っても、退職時(この場合は70歳)にしか年金額の再計算が行われないので、70歳になるまでは、65歳で決定された年金額を受け取り続けます。
 
ところが今度の改正で、65歳以上の者については在職中であっても、年金額の改定が毎年1回10月分から定時に行われます。よって、65歳以降に支払った厚生年金保険料は翌年から年金受取額に反映され、退職前でも受け取る年金は年々増額されます(令和4年4月施行)。

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在職定時改定の導入で、受給額がどれだけ違う?

具体的には、65歳以降、標準報酬月額20万円で70歳まで継続して働いたとします。
 
老齢厚生年金の増加額は、1年間で20万×5.481/1000×12ヶ月≒1万3000円程度、5年間では6万5000円程度です。
 
現行では、65歳から70歳になるまでは、65歳で決定された年金額のままですが、70歳(退職が早くなればその年齢)以降は65歳で確定した年金額に6万5000円がプラスされます。
 
改定により、年金保険料の支払いが毎年1回反映されるので、翌年から年金額が増額になります。66歳からは65歳の年金額+1万3000円、67歳からは+2万6000円、68歳からは+3万9000円、69歳からは+5万2000円と、70歳になるまでで約13万円増えます。
 
保険料の支払いが受取年金額に翌年に反映されることは、働く意欲増進につながりますね。

65歳未満の在職老齢年金、支給停止金額の引き上げ

年金は60歳から70歳の間で受給時期を決められます。65歳が基準となり、65歳未満は繰上げ受給、65歳を超えるのは繰下げ受給とされます。
 
それとは別に、65歳未満で老齢厚生年金を受給できる場合があります。特別支給の老齢厚生年金です。昭和36年(女性は昭和41年)4月1日以前に生まれた人には、65歳未満で老齢厚生年金を受け取れる期間があります。
 
しかし、65歳未満で年金を受け取りながら働く場合、在職老齢年金(低在老)による支給停止の基準額が28万円(令和2年度)と低く、働いて収入を上げたくても年金の支給が停止になってしまうため、就労に影響が出ていました。
 
よって、今回の改正で、支給停止基準額を65歳以上の在職老齢年金(高在老)47万円と同じまで引き上げられました。対象の多くは女性で、女性の就労を支援する目的もあります。(令和4年4月施行)
 
(参考・引用)
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者


 

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