更新日: 2020.08.05 その他年金
こっそり学ぶ遺族年金(4)重婚的内縁関係や再婚、養子縁組の場合はどうなる?
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
重婚的内縁関係にあった場合は
前回は、事実婚が認められた場合など「良かったですね」と言える場合を紹介しました。しかし、表があれば裏があるように、「良かったですね」と言える場合ばかりではありません。とても深刻な場合や悩ましい場合があります。
深刻なのが、亡くなった人が重婚的内縁関係にあった場合です。重婚的内縁関係というのは、法律上の配偶者がいながら、内縁関係の人がいるという場合です。
遺族年金は、法律上の配偶者と内縁関係の人の双方が平等に受給できるものではないので、どちらか一方のみが受給権者になります。
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決め手は「生計を維持されていた」
遺族年金の受給条件の中に、「亡くなった人によって生計を維持されていた」という項目がありました。
仮に、法律上の配偶者と内縁関係の人の双方から日本年金機構等に遺族年金の請求が行われた場合、受給権者を決めるための審査が慎重に行われます。「亡くなった人によって生計を維持されていた」のはいったいどちらか、となるわけです。
どちらが受給権を得ても……
やはり、判断しづらい場合が少なくないそうです。
一方は、亡くなった人の健康保険の被扶養者になっていたが、他方は、亡くなった人と同居し、寝食をともにしていた場合、あるいは、一方は亡くなった人の老齢年金を本人に代わって受け取っていたが、他方は亡くなった人の生命保険金の受取人になっていた場合、などです。
これらのほかにも、亡くなった人を長く看病・介護していたとか、亡くなった人の葬儀で喪主を務めたとか、判断材料はいろいろあります。亡くなった人が、双方と良好な人間関係を保っていた場合は、審査はより難しくなります。どちらが受給権を得ても、すっきりしないことでしょう。
法律上の配偶者が、内縁関係の人より絶対的に強い民法上の相続の場合とは異なるところです。
再婚や養子縁組の場合は
悩ましい場合というのは、遺族年金を受給している遺族に再婚や養子縁組の機会が訪れた場合です。
遺族年金を受給している妻または夫が再婚したときは、例外なく遺族年金は失権となります。だからといって、再婚の機会があるのに再婚をしないというのは、やはり、本末転倒と言えるかもしれませんね。なお、親が再婚しても、それが原因で子が失権することはありません。
親の再婚相手の養子になった場合も遺族年金受給に影響なし
では、子の養子縁組はどうでしょうか。遺族年金を受給している子が養子縁組をした場合は、原則として、遺族年金は失権します。ただし、直系血族や直系姻族との養子縁組の場合は失権しません。
そのため、子が親の再婚相手の養子になった場合や祖父母の養子になった場合、子の受給権は継続します。
例えば、幼い子のいる母親が再婚した場合を考えてみましょう。遺族年金はそれまで、母親が受給していました。子は、母親がいるために受給停止でした。母親は再婚によって、遺族年金の受給権を失います。
その代わりに、受給停止になっていた子が遺族年金を受給することになります。ただし、この場合、受給できるのは遺族厚生年金のみです。
遺族基礎年金は、「生計を同じくする父または母」つまり、母親と同居しているため、支給停止のままです。先に説明しましたように、子が新しい父親と養子縁組をしても、遺族厚生年金を受給できることには変わりありません。
直系血族や直系姻族以外との養子縁組は
注意しなければならないのは、直系血族や直系姻族以外との養子縁組の場合です。遺族年金は失権します。だからといって、養子縁組を申し込んでくれる人の善意をおろそかにはできないことでしょう。この辺は難しいところです。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士