更新日: 2020.09.03 その他年金
年金記録に漏れが見つかったらどうなる?(2)本人死亡後に判明した場合
では、本人が他に年金記録があることに気が付かないまま亡くなった場合、あるいは記録の訂正をしないまま亡くなった場合で、その遺族により記録が判明した場合はどのようになるのでしょうか。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
年金記録が死後に判明した場合は遺族へ
すでに年金を受給している本人に、年金の計算に含まれていない他の記録が存在するにも関わらず、その記録が判明する前に亡くなることもあります。
短期間しか勤務していない会社での厚生年金加入期間だと、本人も厚生年金に加入していなかった期間と思い続け、他の記録があることに気が付かないまま亡くなることがあるかもしれません。この場合、本来受け取れる年金が他にあるにもかかわらず亡くなったことになります。
その遺族には、亡くなった人の年金記録について細かいところまではわからないことも多いでしょう。しかし、もし遺族によって亡くなった本人の記録が判明した場合については、その判明した記録の分の年金は未支給年金として遺族に支給されます。
未支給年金の対象となる遺族は、亡くなった本人と生計を同じくしていた(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹、(7)その他の3親等以内の親族で、遺族の優先順位については(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)の順です。「もらい忘れの年金」については遺族が代わりに受け取ることにます(【図表1】)。
生前のうちにすべての記録が整い、本人が生前に受けられる年金のすべてを受けるのが一番ですが、このように亡くなった人の記録が亡くなった後に明らかになっても、前回取り上げた年金時効特例制度と遅延特別加算金の対象となり、その分を遺族が受けられることになっています。
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遺族厚生年金が受けられる場合
また、亡くなった人に生計を維持されていた(1)配偶者・子、(2)父母、(3)孫、(4)祖父母がいれば、遺族厚生年金が支給されることがあります(遺族の優先順位は(1)(2)(3)(4)の順。ただし、夫、子、父母、孫、祖父母は年齢要件を満たしていないと対象になりません)。
この遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で計算されます。配偶者のうちの妻が遺族厚生年金を受給する場合が多いですが、亡くなった夫の厚生年金加入記録を追加できた場合、遺族厚生年金の計算の元となる夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が増えることになるため、その4分の3である妻の遺族厚生年金についても増えることになります(【図表2】)。
亡くなった人の記録の訂正により、亡くなった人の老齢厚生年金と、遺族の遺族厚生年金両方があるため、年金の計算には時間がかかることがありますが、記録をしっかり整えた上で遺族厚生年金も支給されることになるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー