今さら聞けない! 国民年金・厚生年金・共済年金の違いとは?

配信日: 2020.12.25

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今さら聞けない! 国民年金・厚生年金・共済年金の違いとは?
今回は、わが国の公的年金制度の変遷と国民年金・厚生年金・共済年金の違いについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

公的年金制度の変遷と概要

国民年金、厚生年金、共済年金の公的年金制度は、時代を異にして誕生し、紆余曲折を経て今日の姿になっています。ここでは、それぞれの年金制度の生い立ちから、大きな変換点である基礎年金制度の導入と被用者年金の一元化について解説し、現在の公的年金制度の概要について説明します。
 

 

1.各年金制度の生い立ち

公的年金制度は、1875年(明治8年)に導入された旧軍人に対する国家補償制度である恩給制度がそのルーツとなります。そして、その恩給制度の流れを受けて1959年(昭和34年)に国家公務員に対する共済年金制度が誕生しました(※1)。
 
また、厚生年金は、1942年(昭和17年)に工場や炭鉱に勤める男子労働者を対象とした「労働者年金保険」としてスタートしましたが、その後、対象者を拡大して1944年(昭和19年)に「厚生年金保険」に移行しました(※2)。
 
また、自営業者などを対象とした国民年金は、1961年(昭和36年)に誕生しています(※2)。
 

2.基礎年金制度の導入

1985年(昭和60年)の年金制度改正によって、1986年(昭和61年)から各制度共通の仕組みとして基礎年金制度を導入することになり、厚生年金と共済年金は2階建て構造となりました。この際、被用者の被扶養配偶者が任意加入から強制加入となり、女性に対する年金制度が拡充されました(※4)。
 

3.被用者年金の一元化

2015年(平成27年)10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が厚生年金に統一されました(※3)。
 

4.年金制度の概要

基礎年金制度の導入と被用者年金の一元化に伴って、わが国の公的年金制度は下図のとおり大きく分けて国民年金と厚生年金の2種類、2階建ての構造になりました。そして、国民年金の被保険者区分には、第1号から第3号の3種類があります。さらに、第1号と第2号被保険者には、3階部分が上乗せされています。
 

 
(1)第1号被保険者
国民年金の第1号被保険者は、自営業者、学生、フリーター、無職の人などで、自分自身で納付書や口座振替などで保険料を納付します。そして、受給できる年金は基本的に1階部分の基礎年金のみとなりますが、国民年金基金に加入することや付加保険料を納付することにより3階部分を構築することができます(※5)。
 
(2)第2号被保険者
国民年金の第2号被保険者は、厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する会社員や共済組合の組合員である公務員などで、国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれています。そして、受給できる年金は1階の基礎年金、2階の厚生年金に加えて3階の企業年金(ただし、企業年金が無い事業所もあります)や退職等年金給付があります(※5、6、7)。
 
また、被用者年金の一元化に伴い、厚生年金の被保険者は下表のとおり、第1号から第4号に区分されています。
 

 
(3)第3号被保険者
国民年金の第3号被保険者は、第2号被保険者の被扶養配偶者である20歳以上60歳未満の人で、国民年金保険料は配偶者が加入する年金制度が一括負担します。ただし、年間収入が130万円以上で健康保険の被扶養者となれない人は第3号被保険者とはならず、第1号または第2号被保険者となります(※5)。
 

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共済年金と厚生年金を受給する場合とは

1.退職等年金給付制度とは

被用者年金の一元化前の共済年金は、1階部分の基礎年金、2階部分の共済年金の報酬比例部分、3階部分の共済年金の職域部分がありました。しかし、一元化後は、3階部分の職域部分は退職等年金給付制度に移行されました(※9)。以下、老齢年金を例に解説します。
 

 
退職等年金給付は積立方式の年金制度で、年金の半分は10年または20年の有期年金として、残り半分は終身年金として受け取ることになります。
 

2.経過的職域加算額は共済年金として支給

被用者年金が一元化された2015年(平成27年)10月1日以降は、基本的に共済年金として年金が支給されることはありませんが、一元化前の退職共済年金の受給要件を満たすときには、その人に経過的職域加算額として退職共済年金が支給されています(※9)。
 

3.職歴によっては複数の年金

国家公務員であった方を例にすると、被用者年金が一元化された時点で退職共済年金を受給していた人には、一元化に伴い共済年金の報酬比例部分が老齢厚生年金として、また、職域部分は従来どおり退職共済年金として国家公務員共済組合から支給されるようになりました(※8)。
 
また、国家公務員と一般企業の被用者として勤務していたことのある方が受け取る老齢年金は、国家公務員共済組合から老齢厚生年金と退職共済年金(経過的職域加算額)が支給されるとともに、一般企業に勤務していた間の老齢厚生年金は日本年金機構から支給されます(※8)。
 
さらに、国家公務員と地方公務員や私立学校の教職員として勤務した経歴がある方には、それぞれの年金の事務実施機関(保険者)から複数の年金が支給されることになります(※8)。
 

まとめ

国民年金は自営業者など、厚生年金は会社員など、共済年金は公務員などを対象とした年金制度として誕生しました。その後、基礎年金制度の導入に伴って、国民年金は各年金共通の制度である1階部分を構成する基礎年金として生まれ変わりました。
 
また、被用者年金の一元化に伴い、共済年金は厚生年金に統合されましたが、年金事務実施機関として共済年金の仕組みは残されるとともに、制度統合の経過的措置として経過的職域加算額が退職共済年金として支給されています。
 
出典
(※1)総務省 恩給制度の概要
(※2)日本年金機構 年金制度、被保険者証等の変遷(年表)
(※3)国家公務員共済組合連合会 公的年金制度のあらまし
(※4)厚生労働省 資料II-24 昭和60年改正による基礎年金制度(及び第3号被保険者制度)の導入
(※5)日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
(※6)国家公務員共済組合連合会 退職等年金給付
(※7)国家公務員共済組合連合会 退職共済年金(経過的職域加算額)
(※8)厚生労働省 厚生年金保険法
(※9)国家公務員共済組合連合会 平成27年10月から共済年金は厚生年金に統一されます

執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
 

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