テレワークで年金が減る? いったいなぜ? 知っておきたい年金の仕組み
配信日: 2021.01.13
いったいどういうことなのか解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
年金の金額はどうやって決まっている?
将来受け取れる年金の金額は、自営業の方など国民年金の場合は年金保険料を支払った期間によって決まっています。年金保険料(2020年度:月1万6540円(※2))も将来の年金額(2020年度:40年間納付で満額の年78万1700円(※3))も一定の金額が定められています。
一方、会社員や公務員など厚生年金に加入されている方はもう少し複雑です。年金保険料を納めた期間だけでなく、働いている間に得た収入額も反映されます。現役時代の収入が高かった人ほど、老後にもらえる年金額が多くなる仕組みになっています。
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テレワークで年金が減るってどういうこと?
厚生年金では収入も年金額に影響するとご説明しましたが、この「収入」は正確には「標準報酬月額」や「標準報酬額」と呼ばれるものです。将来受け取ることができる年金額だけでなく、普段支払っている(給料から天引きされている)厚生年金保険料の金額にも影響します。
これには、基本給だけでなく役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当など各種手当も含まれます。手当も年金の計算に含まれるということは、テレワークになったことで通勤手当や残業手当が減れば、将来受け取ることができる年金額も減ってしまうということです。
ただ、会社によっては通勤手当が減る代わりに、新たに在宅勤務手当などを新設している場合もあります(※1)。新たな手当が増えたことで総収入が減らずに済めば、「テレワークで年金が減る」という事態は避けられるかもしれません。
標準報酬月額はいつ決まる?
標準報酬月額についてもう少し詳しく見ていきましょう。
厚生年金の標準報酬月額は、1カ月の総支給額(報酬月額)を32等級に分類して、保険料表と照らしてあてはまる金額から導き出します。
例えば、基本給や手当を含め会社から月31万円受け取っている人は、標準報酬月額でいうと20等級(32万円)になります。もしこの人がテレワークなどで受け取る手当が月2万円減り、報酬月額が29万円になった場合、標準報酬月額は19等級(30万円)です。
日本年金機構では、1等級下がる状態が30年続くと、将来受け取る年金額が年4万円ほど少なくなると試算しています(※1)。
標準報酬月額の等級は、基本的に毎年1回、4月~6月に受け取った報酬をもとに決められています。今年(2020年)の4月~6月といえば、新型コロナ対応として臨時でテレワークになっていた方も多いかもしれませんね。このとき決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます(※4)。
ただし、標準報酬月額が大幅に(2等級以上)変動した場合は、この時期を待たずに変動した月から数えて4カ月目に改定されます(※4)。その他、育休明けや産休明け(※5)の方、新型コロナに関連する休業で収入が急減した方など(※6)も年1回という規定にかかわらず改定されます。
まとめ:年金について知っておこう
働いている方、特に若い世代の方は将来の年金額を意識する機会は少ないかもしれません。しかし、会社員や公務員の方は、実は毎月の給料や手当の金額が老後に反映されます。テレワークをはじめ身近な変化が影響することもありますので、時々気に掛けて年金への理解を深めておくと、将来役に立つかもしれませんよ。
(※1)日本経済新聞 2020年6月11日「広がる在宅 通勤手当見直しで年金受給目減りも 社保料の算出基準変動」(※この記事は会員限定です)
(※3)日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※4)日本年金機構「Q 標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。」
(※5)
日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
(出典)
日本年金機構
「厚生年金保険の保険料」
「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表」
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表