更新日: 2023.09.13 その他税金
所得税は超過累進税率。税率の変わり目は働かないほうが得?
例えば、課税所得195万円を超え330万円以下の場合は税率10%、330万円を超え695万円以下の場合は税率20%となっています。それでは、課税所得330万円の人はそこでやめておいて、331万円にしないほうが得なのでしょうか?
330万円×10%=33万円
331万円×20%=66.2万円
だとしたら、たった1万円多く稼いだだけで、66.2万円-33万円=33.2万円も多く所得税を支払わなくてはならないのでしょうか?この疑問に答えてみたいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
課税所得とは?
まず、その前に課税所得とは何かを簡単に説明したいと思います。給与所得者の場合、課税所得の求め方は次の通りです。
収入金額-給与所得控除額=総所得金額
総所得金額-所得控除額=課税所得金額
それでは、課税所得金額は収入に換算するといくらという疑問が出てきますが、それは少し複雑です。給与所得控除額は収入が決まれば算式により求められますが、所得控除額は家庭の状況や保険料等の費用の支払いによって異なります。
イメージをつかむために大まかに言うと、給与生活者、専業主婦、15歳以下の子どもしかいない世帯では、収入700万円程度が課税所得330万円に相当すると考えていただいて結構です。
所得税の計算方法
それでは、下表を見てください。
(平成27年分以降)
(注) 例えば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。
700万円×0.23-63万6000円=97万4000円
「税率」の右側に「控除額」という欄があり、表の下の(注)に税額の計算方法が書いてあります。この計算方法を上記の例に当てはめてみると次のようになります。
収入 330万円×10%-9万7500円=23万2500円
収入 331万円×20%-42万7500円=23万4500円
差額 2000円
差額は2000円となりました。この表はどのようなことを意味するのかと言うと、例えば課税所得700万円の人でも、
課税所得0から195万円までは、税率5%
課税所得 195万円超から330万円までは税率10%
課税所得 330万円超から695万円までは税率20%
ということを示しています。超過累進税は、「課税される所得金額」がその枠を超えた際、超えた分に対してのみ、高い税率となるのです。
すなわち、
195万円×5%=9万7500円
(330-195万円)×10%=13万5000円
(331-330万円)×20%=2000円
となるので、
課税所得330万円の場合、9万7500円+13万5000円=23万2500円
課税所得331万円の場合、9万7500円+13万5000円+2000円=23万4500円
で上記の計算と一致します。
ですから冒頭に計算したような「課税所得1万円の差で、所得税33.2万円の差」はつきません。「控除額」は、所得税額を滑らかに上昇させるためのものだということが分かります。
まとめ
結論から言うと、税額の変わり目を気にせずに働いても損はないということになります。もっとも1万円で33.2万円も変わってしまうような制度を作ったら、みんな税率の変わり目ばかり気にして働く変な社会になってしまいますよね。
国税庁タックスアンサー No.2260 所得税の税率
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー