更新日: 2020.04.06 確定申告
【確定申告前に一読!】今回から申告書に添付が不要となった書類とは?
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
確定申告書への添付が不要になった(?)
株式や投資信託など昨年1年間の取引内容等について、1月になると証券会社などの金融機関から書類等で届く「特定口座年間取引報告書」も、添付が必要になることのある書類でした。
ところがこの報告書に、今回は「税制改正により、2019年分の確定申告から添付する必要がなくなりました」といった案内が注記されています。一体どうしたのでしょうか。
確定申告と添付書類のイメージ
確定申告とは、所得の金額とそれに対する税金(所得税・復興特別所得税)の額を計算し、税金を支払う(源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する)ための手続きです。
個人の所得は1月1日~12月31日の1年間で計算され、確定申告書や添付書類などの必要書類をそろえて税務署に申告・納税します。年末調整が済んでいてほかに該当事項がなければ確定申告は不要ですが、人によっては納め過ぎた税金を確定申告によって取り戻すこと(還付申告)もできます。
医療費控除、ふるさと納税ほかの寄附金控除、株式譲渡や配当で税金が納め過ぎの状態となっている場合などで、それぞれ書類添付が必要です。それが今回から、株式譲渡や配当などでの還付申告で「特定口座年間取引報告書」の添付が不要になったのです。
実は「源泉徴収票」も、今回から添付不要に
国税庁のサイト「国税関係手続が簡素化されました」(※1)を見ると、各種書類の添付省略について「納税者の利便性向上を図る観点から、(中略)平成31年4月1日以後(※)に提出する以下の申告・届出等については、住民票の写し等の各種書類の添付が不要となりました。」(※の注記省略)とあり、所得税申告(確定申告書および修正申告書)の手続きには添付不要とする書類が8つ示されています。
そこに「源泉徴収票」まで含まれているのは、少し意外な感じでした。これまでの確定申告では、確定申告書の添付書類として次のように、いの一番に登場するものだったからです。
「確定申告には、とにかくまず源泉徴収票を用意しなければ」と考える方もまだ多いかもしれません。しかし先ほどのように「納税者の利便性向上を図る観点から」今回より添付は不要なのです。
一方、このサイトに添えられている説明リーフレットの方には「ご注意ください!!」として、源泉徴収票の内容を確定申告書の所定箇所に必ず記載することや税務署等で確定申告書を作成する場合には源泉徴収票を必ず持参するようにと注意喚起がされています。
実は「添付はしなくてよい」だけで、その内容や数値は正確に確定申告書に反映しなければならないのは、もちろん当然です。その点は、一部の書類の提出や提示を省略できる電子手続きの確定申告「e-Tax」(※2)でも同じです。
申告する側の書類保存義務は、まちまち ~そしてまとめ
ペーパーレス化は、官民を問わずに省資源、省エネルギー、そして省スペースなどの観点から近時の重要なテーマのひとつです。確定申告する側の利便性もさることながら、申告書を受け取る側の事務簡素化や省スペース化にも少なからずメリットがあるものと推測されます。
なお、先ほどの国税庁のサイトには「(前略)添付不要とする書類については、納税者に保存義務はありません。」とあります。医療費の領収書が自宅で5年間保存する必要があるのと対照的です。
その違いですが、このサイトからの引用で先ほど(中略)と示した箇所には実は、「国税当局が他の添付書類や行政機関間の情報連携等で記載事項の確認を行うことにより」と書類添付不要にできる理由が説明されています。
支払者が税務署に提出を義務付けられている「支払調書」により、源泉徴収票の内容の裏付けは取れることに代表されるようなチェックの流れですね。確定申告書への書類添付が不要になっても、申告する側の手間が大きく軽減されたわけでもなく、いずれにしても正確に漏れなく申告しなければならないという本質は何も変わっていないのです。
出典:(※1)国税庁「国税関係手続が簡素化されました」
(※2)国税庁「令和元年分確定申告特集」「e-Taxならこんなにいいこと」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士