更新日: 2020.06.01 その他税金

事業所得とは?

執筆者 : 浦上登

事業所得とは?
10種類の所得のうち、事業所得について説明をしたいと思います。
 
事業所得の内容については、記事の中で詳しく説明しますが、一言でいうとビジネスから生じた所得といっていいと思います。すなわち、事業主の独立した勤労=経済活動から継続的に得られる所得ということです。
 
給与所得との違いは、給与所得が雇用主に従属した半独立的な勤労=経済活動に基づく所得であるのに対して、事業所得は独立した勤労=経済活動に基づく所得だということです。
 
ビジネスの内容が多岐にわたること、および、その経費も多岐にわたることから、細かい売上計算、原価計算が必要になってきます。
 
それでは事業所得について、国税庁ホームページの情報を引用しながら説明したいと思います。
 
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

事業所得とは?

基本的に実際のビジネスから生じた所得を事業所得といい、具体的には次の事業から生じる所得をいいます。

営業等所得

●卸売業、小売業、飲食店業、製造業、建設業、金融業、運輸業、修理業、サービス業などのいわゆる営業
●医師、弁護士、作家、俳優、職業野球選手、外交員、大工などの自由業
●漁業などの事業 など

農業所得

●農産物の生産、果樹などの栽培
●養蚕、農家が兼営する家畜・家きんの飼育
●酪農品の生産 など
 
また、事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得は事業所得とみなされます。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得に分類されます。

事業所得とされるかどうかの考え方

ある経済活動が所得税法上の事業所得を生ずべき事業に該当するかどうかは、その経済活動が次の条件をすべて満たしているかどうかで判断されます。
 
(1)自己のリスクと計算において、独立して営まれていること
(2)営利性、有償性を有していること
(3)反復継続して営まれる業務であること
(4)社会通念上事業と認められること
 
こういうと難しいのですが、上記の4条件を満たす経済活動とは、「ビジネス」といってよいと思います。前項の「事業所得とは?」に挙げた項目以外に、事業所得とみなされるものの具体例は次の通りです。
 
イ プロ野球選手、プロゴルファー、モデルなどの報酬
ロ ホステス、保険営業員などの報酬
ハ 営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡(商品の販売など)
ニ 貸衣装業における貸衣装の譲渡、パチンコ店におけるパチンコ器の譲渡、養豚業における種付用の豚の譲渡など(少額重要資産のうち継続売買による所得)
ホ 事業的規模の土地などの継続売買
ヘ 取得後5年以内の山林の譲渡(事業又は雑所得)
ト 事業を営む者の従業員宿舎の使用料収入
チ 時間貸有料駐車場の収入(事業又は雑所得)
リ 商品が被害に遭い支払を受けた損害賠償金

事業の遂行に付随して生ずる収入

事業所得の総収入金額には、その事業活動の本来の収入のほかに、事業の遂行に付随して生ずる収入も含まれ、次のようなものは事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるので、注意が必要です。
 
これらは、事業活動に派生して生じるものなので、事業所得とみなされることになります。
 
イ 事業の遂行上取引先又は使用人に貸し付けた貸付金の利子
ロ 事業用資産の購入に伴って景品として受ける金品
ハ 新聞販売店における折込広告収入
ニ 浴場業、飲食業等における広告の掲示による収入
ホ 空箱や作業くずの売却収入
ヘ 仕入割引や得意先からのリベ-ト
ト 少額の減価償却資産(10万円未満)又は一括償却資産(20万円未満)の必要経費
算入の適用を受けた資産の売却

事業所得の計算方法

事業所得の金額は、次のように計算します。
 
総収入金額-必要経費=事業所得の金額

(1)総収入金額

総収入金額には、それぞれの事業から生ずる売上金額のほかに、前項「事業の遂行に付随して生ずる収入」で説明したものも含まれます。

(2)必要経費

必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、例えば、次に掲げるようなものがあります。
 
イ 売上原価
ロ 給与、賃金
ハ 地代、家賃
ニ 減価償却費
 
事業所得における収入はいろいろな商行為によって生じるため、それぞれを1つずつ積み上げる必要があります。また必要経費も同様で、1つひとつの経費に対して経費性を確認しながら、積み上げていく必要があります。

申告時期と課税方法

事業所得については、毎年2月16日から3月15日までに確定申告をする必要があります(この期間は、その年の曜日により変動があります)。事業所得への課税方法は、総合課税です。すなわち、確定申告により、他の所得と合算して税金を計算する方式をとります。
 
ただし、事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得については、申告分離課税となり、確定申告により、他の所得と分離して税金を計算する方式となります。
 
これは株式等の譲渡所得や先物取引にかかる所得は、事業的規模でなくとも、申告分離方式をとっているので、それに合わせたものです。

まとめ

事業所得の性格、内容は以上の通りです。所得は発生する形態に応じて10種類に分類され、課税方法も異なるので注意が必要です。
 
(1)自己のリスクと計算において、独立して営まれていること
(2)営利性、有償性を有していること
(3)反復継続して営まれる業務であること
(4)社会通念上事業と認められること
 
その中でも事業所得とは、上記(1)から(4)の4条件を満たした経済活動から生じる所得であることを認識してください。
 
[出典]
国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
国税庁「所得の種類と課税方法」
国税庁「税大講本 所得税法(基礎編)令和2年度版/第3章 所得の種類」
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー


 

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