夫の口座から妻の口座にお金を移した。贈与税がかかるって本当?
配信日: 2021.05.27
どのような時に贈与税がかかるのでしょうか。具体例を見ながら確認しましょう。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
どんな時に贈与税がかかるの?
贈与税がかかるのは、年間110万円を超えた財産が贈与された時です。年間とは1月1日から12月31日までのことで、110万円とは贈与税の基礎控除といって贈与税がまったくかからない金額のラインです。110万円を超える贈与が行われると、贈与税が発生し、贈与された金額が上がるにつれ、税率も上がる仕組みになっています。
では次に、ケースごとに贈与税がかかる場合・かからない場合について見ていきます。
・生活費や教育費
よくある夫婦間でのお金のやりとりだと生活費や教育費があげられるでしょう。夫が妻に生活費をわたす、子どもの教育費として夫が妻の口座に多額の資金を振り込むなど珍しいことではありません。
しかし、生活費や教育費は通常必要と認められる範囲であれば年間110万円を超えたとしても贈与税はかかりません。ただし、生活費としてお金をわたされたとしても、そのお金で株や不動産などを購入すると贈与税の対象となります。
・高額なプレゼント
プレゼントは原則非課税ですが、110万円を超えるような高額なプレゼントは贈与税の対象となることがあります。贈与税の対象となるかどうかは社会通念上相当と認められるかどうかです。ようは『常識の範囲内かどうか』ということです。常識の金額を超えたプレゼントには、税金がかかります。
・不動産の名義と頭金の負担割合が違う
頭金は夫婦で出しあったのに、不動産の名義は夫というようなケースです。この場合、不動産の名義と頭金の負担割合が異なります。夫婦で出しあった頭金の割合に応じて持ち分を登記すれば問題ないのですが、夫名義にしてしまうと妻が負担した頭金分は、夫への贈与とみなされ贈与税がかかることがあります。
・夫の保険契約の満期金を妻が受け取る場合
満期保険金がある契約で契約者(保険料負担者)は夫、満期金の受け取りは妻の場合、妻が満期金を受け取ると、夫から妻への保険金の贈与があったことになり贈与税の対象となります。
・不動産の贈与
不動産の贈与や不動産を購入するための資金贈与が行われた場合は、基本的に贈与税が発生します。しかし、一定条件を満たしていれば基礎控除110万円とは別に、配偶者控除2000万円まで控除できる制度があります。
一定の条件とは、結婚期間が20年以上であること、贈与される不動産が居住用不動産であることなどです。この配偶者控除は、今住んでいる家の名義を変える時にも利用できます。
夫婦間の資金移動には注意が必要
通常、生活をする上では夫婦間で贈与税が発生するケースは多くないでしょう。しかし、不動産購入や保険契約など大きな買い物をする時は、契約形態によっては贈与税がかかることもあります。贈与税の支払いによって、思わぬ出費が発生したということにならないよう注意しておきましょう。
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ