更新日: 2023.01.11 控除
【税金相談】72歳の母親がいます。扶養に入れたほうがよいでしょうか?
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
税法上の扶養に入れる場合
扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養があります。まず、税法上の扶養からお伝えすると、お母さまをひとみさんの扶養に入れられる条件は下記のとおりです。
(1) お母さまの合計所得が48万円(年金収入のみなら年金額が158万円)以下
(2) お母さまとひとみさんの生計が同じ
まず(1)について、お母さまの年金は現在70万円程度です。収入は年金しかありませんから、年金額158万円以下となり、条件クリアです。次に(2)について、生計が同じというのは国税庁のホームページ(※)によると、
“生計を一にするとは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。”
とあります。ひとみさんは、毎月お母さまに仕送りし、お母さまは年金と仕送りで生活しているため、この条件もクリアしているといえるでしょう。したがって、ひとみさんはお母さまを税法上の扶養に入れることができます。
では、扶養に入れることで、ひとみさんはどの程度節税できるのでしょうか。別居の場合、扶養控除額は48万円です。ひとみさんの年収は400万円ですから、所得税と住民税合わせて、ざっと2~3万円ほど節税できることになるでしょう。
社会保険上の扶養に入れる場合
では次に、社会保険の扶養について考えましょう。現在、お母さまが負担している社会保険料は国民健康保険です。もし、ひとみさんがお母さまを社会保険上の扶養に入れるなら、ひとみさんが加入している健康保険の扶養に入れることになります。
まずは、お勤め先の健康組合の扶養ルールを確認する必要があるでしょう。例えば、健康保険組合によっては以下のようなルールがあります。
1、お母さまの年収が180万円未満
2、別居の場合、仕送り額はお母さまの年収以上である
ひとみさんの場合、1のルールには該当します。しかし、該当しないのは2のルールです。ひとみさんの仕送り額は月3万円、お母さんの年金は月約6万円ですから、健康保険の扶養には入れられません。
また、もし扶養に入れるなら、ひとみさんのご主人の健康保険に入れることになるでしょう。ひとみさんの年収は400万円、ご主人の年収は650万円とのこと。扶養に入れるのは収入が多いほうという原則があるため、ご主人の健康保険の扶養に入れるのが原則かと思われます。したがって、ご主人の健康保険扶養ルールを確認するとよいでしょう。
扶養に入れることによるデメリット
一方、ひとみさんは親を扶養に入ることについて、デメリットも心配されていました。ひとみさんにはデメリットはありませんから、お母さまのデメリットを考える必要があります。
ポイントは、お母さまの納める国民健康保険料・介護保険料、医療介護サービスを受ける時の自己負担割合、受けるサービスが高額になった場合の自己負担上限の3つのケースを考えることです。
これらは、同居・別居の別、親の年齢や子の年齢によって異なります。例えば、介護保険料は世帯の収入が保険料に影響しますが、ひとみさんとお母さまは、当分同居する予定はありません。扶養に入れることでデメリットはないでしょう。
そのほかのポイントについても扶養に入れることによる影響はなさそうです。また、そもそもお母さまが75歳になると、後期高齢者になるため扶養には入れられません。
まずはご主人の健康保険組合の扶養に入れられるかどうか確認しましょう。もし、健康保険の扶養に入れられなくても、税法上の扶養には入れられますから、安心してください。
ひとみさんは健康保険の扶養は75歳までと知り、また税法上の扶養には入れられることを知りスッキリしたようでした。
出典
(※)国税庁 No.1180 扶養控除/「生計を一にする」の意義
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ