更新日: 2024.01.13 控除

クローゼットから「50万円」の現金を見つけました。妻のハンカチに包まれていたのですが、隠れて副業したお金であればマズいですよね? 扶養から外れる場合もあるのでしょうか…?

クローゼットから「50万円」の現金を見つけました。妻のハンカチに包まれていたのですが、隠れて副業したお金であればマズいですよね? 扶養から外れる場合もあるのでしょうか…?
専業主婦で収入がないはずの妻が多額の現金を所持しているとわかったら、夫としては現金の出所が気になるものではないでしょうか。
 
「宝くじでも当たったかな?」「親からもらったものかもしれない」「不測の事態に備えて、家計から少しずつ貯めていた?」、それとも「どこかでパートでも始めたのかも……?」など、あれこれ考えてしまうかもしれません。
 
妻が宝くじを買おうが贈与を受けようが妻の自由で、夫が口出しをしたら、夫婦間の喧嘩にもつながりかねません。ましてや妻が家計をやりくりして、コツコツ貯めたお金であるなら、全く問題はないでしょう。
 
しかし、もし専業主婦の妻が夫に黙ってパートに出ていた場合は、状況が変わってきます。本記事では、扶養に入っている妻が実は就労していたケースの問題点について、社会保険の観点から説明します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

被扶養者の妻が収入を得たときの問題

夫に扶養されている妻が収入を得ると、どのような問題が生じるのでしょうか? 解説していきます。
 

妻が社会保険に加入しなければならない可能性がある

物価が高騰している昨今、専業主婦だった妻がパートなどで働き始めるケースも少なくないでしょう。それでも就労時間や就労日数が少なく、かつ収入も多額でなければ、特に支障はないはずです。
 
しかし働くうちに仕事が面白くなり、周囲の信頼も厚くなるにつれ、次第に就労時間や日数、収入などが増えていくことは充分あり得ます。そうなると出てくるのが「社会保険の扶養」の問題です。
 
妻がパートなどの勤務先で一定時間または一定日数以上働くと、勤務先の社会保険に加入する必要があります。その場合、妻自身が健康保険料と厚生年金保険料を支払わなければならず、夫の扶養からも外れることになります。
 

年収次第で、国民健康保険・国民年金妻に加入しなければならない場合も

また妻の労働時間などが社会保険に加入するほど長くなくても、時給単価が高いなどの理由により、年間収入が130万円以上(60歳以上は180万円以上)になることがあります。この場合、妻は夫の扶養から抜け、国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。
 

夫の扶養から外れる手続きをしていないとどうなる?

妻が自分で社会保険料を支払った結果、世帯全体の手取りが減少する可能性はありますが、妻が働くこと自体は決してマイナスではありません。働くことで、自身のスキル・仕事仲間・人脈など、お金以外にも得るものがとても大きいからです。
 
問題は、扶養から外れなければならない状態なのに、被扶養者のままでいることです。
 

被扶養者は調査によって収入を確認されている

全国健康保険協会や健康保険組合では、年に一度、被扶養者の調査(再認定)を実施しています。これは被扶養者の収入などが扶養の範囲内かどうかを確認するためです。この調査で妻の収入増加が判明し、扶養から外れる人もいます。しかし遡及して扶養を外すと、少し厄介な事態になるかもしれません。
 

遡及して扶養を外すと保険料も遡及分を支払わなければならない

妻の収入が年130万円以上になってから一定以上経過していると、遡及して扶養を外すように言われることがあります。この場合、扶養を外れた妻は、遡って国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。そして遡及分の保険料も支払うことになります。
 
国民健康保険料の所得割は前年の所得から計算されるため、前年が無職の場合は、それほど多額にはならないでしょう。しかし国民年金は月1万6520円(2023年度の金額)の保険料がかかります。6ヶ月遡及して加入すれば9万9120円を支払わなければならず、痛い出費になるかもしれません。
 

病院にかかっていた場合、医療費の返還をしなければならない

さらに、遡及する期間内に病院にかかっていた場合は、より面倒なことになります。この場合は、かかった医療費の7割を夫の会社の医療保険者に返還する必要があるからです。そして国民健康保険に遡及加入した場合、やむを得ない理由があるときを除き、医療費の請求ができません。
 
このような理由から、妻が一定以上の就労を始めたら、まず収入が扶養の範囲内か確認し、範囲外の場合は早めに扶養を外すことがリスク管理として重要といえるでしょう。
 

まとめ

もし、専業主婦である妻の持ち物として現金が出てきた場合、お金の出所を妻に聞くべきかどうか悩むことと思います。現金は、妻がパート勤務で得たものかもしれません。
 
「パート収入なら給与は口座振込だろう」とも思えますが、小規模な店舗などでは現金支払いのケースもあるため、パート収入という推測はあり得ないことではないでしょう。
 
妻のお金に夫が干渉しないほうが家庭の平穏が保たれるのかもしれませんが、それがもし妻の収入である場合、社会保険の扶養の問題が出てきて、そのまま扶養を外さず放置しておくとリスクが生じます。
 
全国健康保険協会や健康保険組合によって社会保険の被扶養者に関する調査が行われますが、その調査結果を待つのではなく、早い時期にそれとなく妻に尋ねてみるほうが安心かもしれません。
 

出典

全国健康保険協会 被扶養者とは?
全国健康保険協会 事業主・加入者のみなさまへ「令和5年度被扶養者資格再確認について」
日本年金機構 国民年金保険料
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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