退職したら、翌年の税金はどうなる? 住民税が大変って聞くけど大丈夫?
配信日: 2018.10.30 更新日: 2019.08.20
退職したら翌年の生活はどうなるのでしょう。退職した後で慌てないために、検証してみます。
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
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住民税の支払時期は要注意
Nさんは会社員ですが、約27年間勤めた会社の早期退職を考えています。転職が決まっているのではなく、一度仕事から離れて、将来をじっくり考えたいと思っています。退職金は貰えますが、これまでの貯金は100万円程度です。老後資金を考えると、退職金は取り崩したくありません。
充電期間の後、再就職はしますが、希望の仕事が見つからなかった場合に備えて、退職後1年間に必要な費用が心配です。特に住民税について知りたい、というのがご相談の内容です。
「退職したら、翌年の住民税の負担が大きい」という話を、よく耳にします。住民税は所得に応じて税金を支払いますが、そこには期間のズレがあります。
住民税に関しては、H30年度はH30.6~H31.5となります。例えば、10月に退職した場合、今年度の残り期間にあたる、11月から来年5月に納めるべき住民税の納付書が12月に届きます。この納付金額はH29.1.1~12.31の所得を基に計算されています。
H31年度に関しては、H30年の所得(H30.1.1~退職までの期間)を基に納付金額が計算されます。これを6月から4回払いで納付することになります。収入が無くなってから、この支出は多額です。別に管理して備えることをお勧めします。
退職金には勤続年数に応じた控除額が適用
退職金の税金も気になるところだと思いますが、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておけば、源泉徴収で課税関係が終了します。原則として確定申告の必要はありません。退職金に関する税金は以下のように計算されます。
(1)退職所得控除額を算出
・勤続年数が20年以下の場合 40×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続年数が20年を超える場合 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
勤続年数;端数の月数は切り上げます
(2)(退職手当額-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額(千円未満切捨て)
(3)所得税の算出 課税退職所得金額×所得税の税率-控除額=所得税額(基準所得税額)
これに、復興特別所得税=基準所得税額×2.1% が加算された金額となります。
住民税の算出 市町村民税(東京23区は特別区民税)=課税退職所得金額×6%
都道府県民税=課税退職所得金額×4%
合計額が住民税となります。
<勤務年数26年7か月 退職金2000万円の場合>
(1) 800+70×(27-20)=1,290万円
(2) (2,000-1,290)×1/2=355万円
(3) 所得税 基準所得税額 355×20%-42.75=28.25万円 (税額速算表参照)
28.25+28.25×2.1%=288,432
住民税 355×6%+355×4%=355,000
288,432+355,000=643,432
この金額が退職金から差引され、銀行に振り込まれることになります。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職金の収入所得から一律20.42%の所得税が源泉徴収されます。確定申告で精算することになります。
今回は税金を取り上げましたが、他にもこれまでは会社で払っていた健康保険や国民年金などの支払いもあります。もちろん生活費もかかります。しっかり準備が必要です。
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士