医療費が「年10万円ちょっと」なら、確定申告しても意味はない?「年収600万円」の場合、実際いくら戻ってくるのかを試算
配信日: 2025.03.17


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
医療費控除とは?
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に適用される所得控除の制度です。基本的な仕組みを確認しましょう。
医療費控除の基本ルール
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。これにより、払いすぎた所得税の還付を受けることができます。また、住民税の軽減にもつながる可能性があります。
ただ、医療費控除を受ける際には、年末調整ではなく、確定申告を行わなければなりません。また、控除を受けるためには、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計が、10万円以上である必要があります。
控除の対象となる医療費は?
医療費控除の対象となるのは、以下のような費用です。
●病院や診療所での診察/治療費
●子どもの不正咬合の歯列矯正費用(容貌の美化を目的としたものは対象外)
●薬局で購入した医薬品(処方薬を含む)
●通院にかかった交通費(公共交通機関の利用に限る)
●介護サービス費用の一部
一方で、以下の費用は対象外となります。
●美容整形手術費用
●美容目的の歯列矯正費用
●予防接種費用
●健康診断の費用(治療が必要と診断された場合は医療費控除の対象となる)
医療費控除の計算方法
医療費控除額は、次の式で算出します。
【(年間の医療費合計-保険金等の補填額)-10万円】
※所得金額200万円未満の場合は、総所得金額の5%
控除額が確定すると、その分の課税所得が減少し、結果として所得税や住民税が軽減されます。なお、控除できる金額の上限額は200万円です。
「医療費11万円」だったら?
医療費が10万円を超えたら、税金が戻ってくるとはいっても、例えば11万円の医療費でも確定申告したほうがいいのでしょうか。年収600万円の会社員を想定し、控除の適用条件や還付額について具体的に試算してみましょう。
年収600万円の場合で計算
戻ってくる税金がいくらになるかは、所得税率によって変わってきます。通常、年間の収入から給与所得控除やほかの所得控除(基礎控除や配偶者控除など)を引いた給与所得に応じて、所得税の税率が決まります。
給与等の年収が600万円の会社員の場合、給与所得控除を引いた給与所得は436万円程度となります。家族構成や配偶者の有無、生命保険料の金額などによっても異なりますが、所得控除を差し引くと、一般に所得税率は10%となるでしょう。
「医療費11万円」だといくら戻ってくる?
医療費が10万円を超えた分に対して税金が還付されるため、11万円の医療費だと「11万円-10万円=1万円」が控除対象となります。
医療費控除対象1万円に対する所得税の減額分は、所得税率10%とした場合「1万円×10%=1000円」となります。
また住民税は一律10%の税率が適用されるため、「1万円×10%=1000円」です。
つまり、合計2000円の税負担が軽減される=還付されることになります。
確定申告するメリットはある?
医療費が11万円程度の場合、確定申告をすることで本当に得になるのかを判断することが重要です。医療費を確定申告するメリットは、所得税の還付だけではなく、翌年度の住民税の負担の軽減も挙げられます。医療費控除が適用されることで課税所得が減少し、その分住民税の負担も減るためです。
ただし「医療費が11万円程度」の場合、申告の手間を考えると2000円程度の還付では大きなメリットを感じにくいかもしれません。
とはいえ、PCやスマートフォンで申告できるオンライン納税システム「eーTax」を使えば、税務署へ出向くこともなく、簡単に手続きが可能です。
まとめ
医療費控除は、年間の医療費が10万円を超えると適用される制度ですが、10万円を少し超えた程度では還付される金額はあまり多くないかもしれません。しかし、少額でも節税には違いありません。できるだけ正確な情報で申請し、還付される金額をきちんと受け取り節税につなげましょう。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー