年末に入院して、退院したのが年明けでした。年をまたぐと、支払った医療費の確定申告はどうしたらいいですか?

配信日: 2026.03.12
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年末に入院して、退院したのが年明けでした。年をまたぐと、支払った医療費の確定申告はどうしたらいいですか?
年末から年始にかけて入院したAさん。
 
「12月分は今年? 1月分は来年? それともまとめて?」医療費控除と高額療養費のルールが混ざり合い、頭が混乱してしまったそうです。実はこのケース、FPがよく受ける“医療費控除の勘違い相談”のひとつなので、本記事で分かりやすく整理します。
植田周司

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

医療費控除の鉄則は「支払日」にあり

年末から年始にかけて入院すると、医療費の確定申告は「12月分と1月分で申告を分けるの?」「いつの確定申告で申請すればいいの?」などいろいろな疑問が湧いてきます。また、高額療養費の還付金は月単位なので、どう計算するのか複雑に感じるでしょう。
 
まず結論からお伝えすると、医療費控除の対象となる年は、診療を受けた日ではなく、「窓口で実際に代金を支払った日」で決まります。これを所得税の考え方で、「現金主義」と呼びます。つまり、「“いつ治療したか”ではなく“いつお金を払ったか”で決まる」という意味です。
 
たとえ2025年12月中に手術や治療を受けていたとしても、退院が2026年1月で、その時点でまとめて支払ったのであれば、その全額が「2026年分の医療費」となります。
 

・2025年分(2026年2月申告):2025年12月分の費用は含まない
・2026年分(2027年2月申告):12月分と1月分を合わせた「支払額」をすべて含めて申告

 
つまり、Aさんのように年明けに一括で支払った場合、2025年分の確定申告で分ける必要はなく、翌年の2027年2~3月の確定申告でまとめて申告すればよいのです(※1, 2)。
 

「高額療養費制度」はマイナ保険証でスマートに

高額な医療費の負担を抑える「高額療養費制度」は、月単位(1日~末日)で計算されます。
 
以前は一度窓口で3割分を全額支払い、数ヶ月後に差額を返してもらう「立て替え払い」が一般的でしたが、今はマイナンバーカード(マイナ保険証)があれば立て替え払いは不要です。
 
窓口の機械で情報の提供に「同意」するだけで、その月の支払いが最初から自己負担限度額までで止まります。大金を用意しなくて済む、負担を大きく軽減できる仕組みです(※3, 4)
 

Aさんの具体的シミュレーション

Aさんのケースで、実際に窓口で支払う額と確定申告の額を計算してみましょう。
 

・入院期間:2025年12月20日~2026年1月10日
・本来の窓口負担(3割の例):12月分60万円(手術代を含む)、1月分 15万円
・支払日:2026年1月10日(退院時)
・Aさんの限度額区分:年収約370~770万円(標準報酬月額28~50万円)
※高額療養費の限度額計算式:8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%

 

【マイナ保険証を使った場合の窓口支払い】

マイナ保険証を提示して同意した場合、窓口での支払いは月ごとの「限度額」までとなります。
 
・12月分の支払い:約9万7430円((1)60万円ではなく限度額まで)
・1月分の支払い:約8万2430円((2)15万円ではなく限度額まで)
・退院時の支払合計:17万9860円

 
(1)12月分の限度額(高額療養費の計算)
12月の総医療費(10割)が200万円の場合
・限度額:8万100円+(200万円-26万7000円)×0.01=9万7430円
 
(2)1月分の限度額(高額療養費の計算)
1月の総医療費(10割)が50万円の場合
・限度額:8万100円+(50万円-26万7000円)×0.01=8万2430円

 

【2026年分の医療費控除の計算】

2027年2~3月の確定申告では、上記の実際に支払った「17万9860円」を元に計算します。
 
・実際に支払った医療費:17万9860円
・差し引く給付金:0円(すでに窓口で減額されているため)
・医療費控除額の計算:17万9860-10万円=7万9860円

 
この「7万9860円」が、医療費控除の対象額となります。

 
※マイナ保険証を使わず、いったん75万円を支払って後から還付を受けた場合も、最終的な控除額は同じ「7万9860円」になります。
 

医療費控除を申請するときの注意点

1. 「差額ベッド代」や「食事代」は控除対象外

病院に支払う金額すべてが、医療費控除の対象になるわけではありません。
 
・対象外:本人の希望で利用した「少人数の部屋(差額ベッド代)」
※ただし、治療上やむを得ない理由で個室に入った場合は対象になることがあります。
・入院中の食事代(標準的な自己負担分)、パジャマのレンタル代、洗面用具などの日用品
・注意点:領収書にはこれらが合算されていることが多いので、確定申告の際は領収書の明細を見て、「治療に関わる費用」だけを抽出して集計する必要があります
 

2. 「民間の保険金」も差し引く必要がある

高額療養費だけでなく、ご自身で加入している生命保険や医療保険から受け取った「入院給付金」や「手術給付金」も、支払った医療費から差し引かなければなりません。
 
・計算式:(支払った医療費)-(その医療費を補てんする給付金)=差引金額
※給付金が後日支払われた場合は、その給付金が対応する医療費から差し引きます。
・保険金が多くて「引ききれない(マイナスになる)」場合は、その入院費用の分を「0円」として扱います(他の無関係な医療費から引く必要はありません)。
 

3. 通院のための「交通費」を忘れない

入院・退院時のタクシー代(公共交通機関が利用できない場合)や、通院のための電車・バス代も医療費控除の対象です。
 
・ポイント:公共交通機関の場合、領収書がなくても「いつ、どの区間で、いくらかかったか」をノートや家計簿にメモしておけば申告可能です。
・ただし、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外です。
 

4. 家族の医療費も「合算」できる

医療費控除は、生計を一にする家族(配偶者や子ども、仕送りしている親など)の分をまとめて、「家族の中で一番所得が高い人」が申告するのが最も有利です。
 
・例えば、Aさんの入院費だけでなく、その年に奥さまの歯科検診費用や、お子さまが風邪をひいて受診した費用もすべて合算して「2026年分の医療費」として確定申告できます。
 

5. 所得が200万円未満なら「10万円」引かなくていい

医療費控除は「10万円を超えたら」というイメージが強いですが、正確には「10万円、または所得金額の5%のいずれか少ないほう」を超えたら受けられます。
 
・所得が200万円未満(年収でいうとおよそ300万円以下)の方の場合、10万円に届かなくても控除が受けられる可能性が高いため、諦めずに計算してみましょう。
 

領収書は大切に保管

マイナ保険証を使うと支払いは楽になりますが、確定申告が不要になるわけではありません。
 
・領収書は大切に
病院から発行された領収書は、申告内容の確認のために5年間の保管義務があります。
 
・マイナポータル連携
確定申告の際、マイナポータルと連携すれば医療費のデータが自動で取り込まれます。ただし、年末年始の分はデータ反映にタイムラグがある場合もあるため、領収書との照らし合わせをしましょう。
 

まとめ

医療費控除で迷ったら覚えることはたったひとつ、「いつ治療したか」ではなく「いつ支払ったか」です。これだけ覚えておけば、年をまたぐ入院でも迷うことはないでしょう。
 

出典

(※1)国税庁 令和7年分 確定申告特集 医療費控除を受ける方へ
(※2)国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
(※3)厚生労働省 高額療養制度を利用される皆さまへ
(※4)厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット
 
執筆者 : 植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

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