「ウチは別居だから」と“親への仕送り”を申告しないと、税金「8万6000円」をドブに捨てることに!? 過去の分も取り戻せる? 親を“扶養親族”にして節税する方法とは
しかし、その親を「扶養親族」として申告できることを知っていますか? 別居していても条件を満たせば、数万円単位で自分の所得税や住民税が安くなります。ただ口座にお金を振り込んでいるだけでは、本来払わなくていい税金を国に納め続けているのと同じです。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
別居している親も「扶養」に入れる!? 知られざる節税のカラクリ
「親は別の家で暮らしているし、自分は妻や子どもを扶養に入れているから関係ない」。そう思い込んでいる人は、非常に多いです。しかし、税金の世界では、必ずしも同居している必要はないのです。常に生活費や療養費の送金が行われていれば「生計を一にしている」と認められ、親を扶養親族にすることができるのです。
もちろん、誰でも無条件で扶養に入れられるわけではありません。親の年間の「合計所得金額が48万円以下」であることが条件です。年金収入だけであれば、親が65歳未満なら年金収入108万円以下、65歳以上なら年金収入158万円以下であればクリアできます。
「うちの親、毎月国民年金しか受け取っていないはず」という場合は、まさにこの条件に当てはまる可能性が高いです。これを知らずに会社員として毎月高い税金を天引きされ続けているのは、本当にもったいない事態だといえます。
手渡しは絶対NG! 「仕送りの証拠」が運命を分ける
親を扶養に入れるために、絶対に気をつけなければならない落とし穴があります。それは「仕送りの方法」です。
お盆や年末年始に実家へ帰省したとき、親に直接現金を「はい、これ足しにして」と手渡ししていませんか? 実はこれ、税務署には「生活費を送っている証拠」として認めてもらえない可能性があります。別居している親族を扶養に入れるには、銀行振込や現金書留の控えなど、客観的に送金の事実が分かる次のような書類があると確実です。
・銀行の振込明細書
・通帳の写し
・現金書留の控え
きょうだいがいて、複数人で親に仕送りをしている場合も注意が必要です。親を扶養控除の対象にできるのは、きょうだいのうち1人だけです。誰が申告するのか、前もって話し合っておく必要があります。
実際にいくら税金が安くなる? 驚きの還付額シミュレーション
では、実際に親を扶養に入れると、どれくらい税金が安くなるのでしょうか。
親が70歳以上の場合、「老人扶養親族」という扱いになり、別居していても所得税の計算から48万円を差し引くことができます。さらに、住民税の計算でも38万円が控除されます。
例えば、所得税率が10%の会社員が、70歳以上の親1人を扶養に入れた場合を計算してみます。
・所得税:48万円×10%=4万8000円
・住民税:38万円×10%=3万8000円
なんと、1年間で合計8万6000円も税金が安くなる計算です。もし両親2人とも条件を満たして扶養に入れれば、その額は倍になります。毎日のランチ代を数百円削って節約するよりも、はるかに大きな金額が手元に残るのです。
過去の分も取り戻せる!? 今すぐやるべき手続き
「ずっと仕送りしていたのに、申告してこなかった!」 と顔面蒼白(そうはく)になっている人もいるかもしれません。でも、安心してください。過去にさかのぼって申告することで、払いすぎた税金を取り戻せる「還付申告」という制度があります。
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間おこなうことができます。過去5年分の銀行の振込履歴と親の年金受給額が確認できれば、まとまったお金が戻ってくるかもしれません。
会社員であれば、毎年おこなわれる年末調整で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に親の名前やマイナンバーなどを記入し、送金証明書類を添付するだけで手続きは完了します。年末調整に間に合わなかった場合や、過去の分を取り戻したい場合は、自分で税務署へ行き、確定申告をおこなう必要があります。
まとめ
離れて暮らす親の生活を支えるためのお金。制度を知らないだけで国に余分な税金を払い続けるのか、しっかりと手続きをして自分たちの生活費や子どもの教育費に回すのか。運命の分かれ道は、たった1つの知識と行動にかかっています。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2030 還付申告
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士