10月から10%に引きあがる消費税。よく聞く「軽減税率」は何のために導入するの?
配信日: 2019.07.30
もうすでにニュースや新聞で見たり聞いたりされたと思いますが、今回の消費税増税のタイミングで「軽減税率制度」が実施されます。適用される消費税が10%に増税されるものと、8%に据え置かれるものにはどんなものがあるのでしょうか?
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、キャリアコンサルタント
ウェディングドレスショップ「Atsu Nishikawa」を17年間経営。
接客の中でこれから結婚するおふたりのお金の不安や子供を授かったときの給付金や育児休業のこと、また親からの贈与や年金のことの悩みを伺い、本格的にファイナンシャルプランナーとして活動を始めました。
みなさまの「小さな疑問や不安」を分かりやすく解決していくことを目指しています。
目次
軽減税率は何のために導入するの?
軽減税率は、低所得者の税負担を軽減するため導入されます。高所得者、低所得者それぞれの年収に対する税金の負担割合を考えると、低所得者の人の方が圧倒的に高く、増税後はさらにそれが高くなります。
そこで収入に占める割合が大きい飲食料品(酒類や外食は除く)にかかる消費税は8%に据え置くことで、税負担を和らげるという目的があるのです。
ざっと年間どれくらいの増税になるの?
軽減税率適用の細かい内容は次にお伝えいたします。まずは年間どれくらいの増税になるかを見ていただきます。
ざっと月に3400円、年間4万円強になります。科目に入っていない出費はさらにプラスになります。例えば「一年に一回の家族旅行」に20万円使えば、4000円加算されます。
消費税増税は社会保障のため
消費税増税の使い道についてです。「社会保障と税の一体改革」の考え方のもと、消費税率の引き上げ分は全額を社会保障の充実と安定化に使うとされ、その具体的な使いみちが「経済財政運営と改革の基本方針2018」に示されています。
この中で「人づくり革命」として子育て世帯に大きく影響を与える「教育の無償化」などもあります。例えば、幼稚園保育料の無償化上限額は月額2万5700円となっています。その他、働き方改革の一部「リカレント教育」の充実にも充てられます。
軽減税率適用のモノって何?
では、本題の「軽減税率が適用されるモノ」についてお伝えいたします。先にもお伝えいたしましたが、軽減税率は、低所得者の負担を軽減するため導入されます。では、具体的にはどんなものが適用されるのでしょうか。大きく分けて2つです。
(1)外食と酒類を除く飲食料品
(2)定期購読契約をしている新聞(週2回以上発行される新聞のみ)
毎日届く新聞は軽減税率の対象となります。業界紙のような月1回や、月2回発行される新聞は対象外となります。コンビニで毎日購入しても対象外となります。また、電子版の新聞も対象外です。
本当に低所得者に配慮されているの?
前述の通り、軽減税率の導入は「低所得者へ経済的な配慮をする」という目的のもとで進められています。具体的には、所得に関係なく一律の割合で納める必要のある消費税について、生活する上で必須となる食料品などの税率を現行のまま据え置くというものです。
贅沢品といわれるものには10%の消費税ということになるのですが、日常、自宅で飲むアルコールが贅沢品ということになると、実際に低所得者対策として有効なのかという点においては懐疑的な意見もあります。
複雑な仕組みの軽減税率
消費税8%と10%が混在してしまう今回の増税。複雑な仕組みのため、消費者だけではなく、お店にとってもかなり複雑で手間がかかる仕組みになっています。
例えば、飲食店が料理とアルコールのセットをテイクアウトとして販売した場合の消費税率は、料理については8%ですが、アルコールについては10%となります。
アルコールは軽減税率の対象外であるため、スーパーマーケットで買っても、外食で飲んでも消費税率は10%です。ただし、ノンアルコールビールは軽減税率が適用される飲料なので料理と同じく8%に該当します。
これにより、お店はこの消費税に対応するスタッフへの教育やレジスターの準備が必要になります。
まとめ
1989年3月に初めて3%の消費税が開始された時も、多くの問題点が指摘されたり、制度が複雑に感じられたりしました。ただ年月が過ぎ、国民が慣れてくれば問題を感じづらくなりました。
今回の大事な点は、10%への増税も大きな変更点ですが、それ以上に、軽減税率が新しく取り入れられて、8%と10%の2通りの税率が採用され、自分が購入するものが、どちらの税率になるのか、消費者もお店側も理解しづらいところにあります。
特にお店は、2段階で消費税の計算をしなければならないのです。インフラが整備され、私たちの考え、行動も慣れていき、数年後には複数税率が普通になっていくことでしょう。
出典
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2018」
政府広報オンライン「消費税の軽減税率制度」
執筆者:西川誠司
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)