年末調整はなぜ必要?所得税が余分に差し引かれていたら、還付金はいつ戻ってくる?
配信日: 2019.11.19
執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。
親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
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なぜ年末調整をするのか
会社員や公務員の方は、毎月の給与やボーナスから所得税が差し引かれています。年末調整は、1月から12月までの年間の所得税を再計算して過不足を精算する手続きです。年に1回、年末の時期に行うこととなっています。
給料やボーナスから差し引かれる所得税は、「源泉徴収税額表」に基づいて勤務先が源泉徴収しています。しかし、年の途中での給料の変動や、結婚や出産などによる扶養家族の増減の変化などは考慮されていません。また、保険料控除の金額も人によって異なります。
そのため、源泉徴収した金額と実際の所得税の金額とは異なってしまうのです。それを調整するのが年末調整の目的です。
還付金が戻ってくる時期
年末調整の結果、余分に差し引かれた所得税については還付金として払い戻されます。年末調整の手続きは勤務先が行いますので、還付の手続きも勤務先により異なります。
還付金が戻ってくるのは多くの場合12月から翌年1月の間であり、年末調整の手続きが完了する時期によって異なります。早く手続きが完了した場合は12月に還付されますし、遅くまでかかった場合は翌年1月になることもあるでしょう。
例えば、配偶者控除の適用ができるかどうか、配偶者の所得を確認してから年末調整の手続きをする場合もあるでしょう。その場合、配偶者の12月の所得を確認してから手続きをする必要があり、どうしても手続きが遅くなってしまいます。
また還付の方法についても異なります。給料の支払時に調整される場合もあれば、個別に振り込みや手渡しとしている場合もあります。勤務先に問い合わせるとよいでしょう。
年末調整できる項目とは
年末調整の対象となっているものは意外と多いです。人それぞれ適用できる控除やその金額が異なりますが、ここでは概要を示します。
勤務先で把握できる控除としては次の控除があります。
・基礎控除
・社会保険料控除
本人や家族に関する控除として次の控除があります。
・配偶者(特別)控除
・扶養控除
・障害者控除
・寡婦(寡夫)控除
・勤労学生控除
その他、保険料の支払いなどに関する控除として次の控除があります。
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・住宅ローン控除(2年目以降)
最近広く知られるようになった個人型確定拠出年金(iDeCo)については、小規模企業共済等掛金控除に該当します。住宅ローン控除については、年末調整ができるのは2年目以降です。初年度は年末調整では対応できないので注意しましょう。
生命保険料控除などでは控除証明書の添付が必要です。年末にかけて保険会社から控除証明書が送付されますので、しっかり保存しておきましょう。
年末調整できない控除は確定申告が必要
よく知られている控除のなかには、年末調整の対象になっていない控除もあります。例えば「医療費控除」や「寄附金控除」です。先述した初年度の住宅ローン控除も年末調整の対象外です。年末調整できない控除がある場合は確定申告をしましょう。
ふるさと納税についても寄附金控除の対象ですので、基本的には確定申告が必要です。ただし、ワンストップ納税制度を利用した場合は除きます。
なお、給与収入が2カ所以上からあるなど、年末調整をしても確定申告が必要な場合があります。確定申告が必要な人は、国税庁のホームページ等に記載がありますので、確認するようにしてください。
還付金は余分に払った税金が戻ってきたものです。決して得をしたわけではありませんので、還付金を無駄遣いしないように有効に活用しましょう。
出典 国税庁「令和元年分 年末調整のしかた」
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員