更新日: 2019.12.13 控除
あとであわてないために! 知っておきたい「配偶者控除」いくらまでなら働いても扶養内?
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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そもそも「103万円の壁」って?
よくいわれている「103万円の壁」とは、パートもしくはバイト勤務の妻の収入が103万円以内なら所得税がかからず、かつ夫には配偶者控除が適用され38万円の所得控除を受けることのできる妻の収入ラインです。では、なぜ103万円なのでしょう?
ひとつは、所得税の計算からみた収入ライン。所得税を計算するとき、収入から控除される(引かれる)ものがいくつかあります。収入と課税対象となる所得(課税所得)の関係を簡単に式にすると以下のようになります。
収入 - 必要経費 - 各種控除 = 課税所得
所得には事業所得や不動産所得などいろいろありますが、パート収入は給与所得となります。給与所得には必要経費としてみなされる給与所得控除があり、収入に応じて控除できる額は変わってきますが、最低でも65万円を収入から引くことができます。さらに人的控除である基礎控除の38万円を控除することができます。
つまり、パート収入から引かれる額は最低でも65万円 + 38万円 = 103万円となるため、103万円以内の収入であれば所得税はかかりません。
そしてもうひとつが夫の配偶者控除からみた収入ライン。配偶者控除は、妻の収入から必要経費を引いた額が38万円以下の場合、夫が38万円の所得控除を受けられます。つまり、こちらも妻のパート収入が103万円以内であれば最低必要経費65万円を引いた額が38万円以下となり、配偶者控除の対象となるわけです。
新たな「150万円の壁」と「201万円の壁」
では、2018年の改定で何が変わったのでしょう? 実はこれまでみてきた「所得税の計算からみた収入ライン」には変更はありません。
つまり、103万円を超えれば所得税は発生しますので、依然として「103万円の壁」は存在します。ただし、所得税はあくまで増えた所得に応じて課税されるため手取りが減ってしまうというデメリットはありません。
変更があったのは「配偶者控除」と「配偶者特別控除」についてです。どちらにも共通の変更点として、夫の合計所得金額が900万円を超えると段階的に控除額が減少していく点です。1000万円を超える場合は控除がありません。
以下が改定後の配偶者控除と配偶者特別控除の控除額表です。夫の合計所得が900万円以下の場合をみてみると、妻の収入が150万円以下の場合に配偶者控除と同じ38万円の配偶者特別控除が受けられることが分かります。これが新たな「150万円の壁」といわれるものです。
妻の収入が150万円を超えると段階的に控除額が減少していき、201万円を超えると配偶者特別控除もなくなります。これが「201万円の壁」です。
「150万円の壁」を超えたからといって控除がなくなってしまうわけではなく、段階的に少なくなっていくものです。夫と妻の総手取り額が減ってしまうというデメリットはありませんのでこちらの壁も基本的にはあまり意識する必要はないかと思います。
扶養手当(家族手当)からみた「103万円の壁」
夫が会社員の場合、もうひとつの「103万円の壁」が扶養手当(家族手当)にある場合があります。こちらは会社ごとに手当の出る条件は異なるかと思いますが、扶養手当を出している会社の多くは税法上の扶養配偶者(給与収入が103万円以下)を条件としているケースが多いようです。
もし仮に扶養手当が月2万円出ているとしたら、年にして24万円にもなります。103万円に抑えていた妻の収入が104万円になった場合、妻の収入は1万円増えますが、夫の年24万円の扶養手当がなくなり夫婦では年23万円の収入減となります。こちらの影響は大きいと思いますので会社の手当の条件はしっかり確認しましょう。
106万円と130万円の社会保険料の壁
これまでみてきた壁以外にも「106万円の壁」や「130万円の壁」があります。一定規模以上の会社でパートをすると、年収106万円以上で社会保険に加入することになり、給料から厚生年金、健康保険を負担することになります。これが「106万円の壁」です。
例えば月収9万円の年収108万円の場合、社会保険料は年間約18万円ですので、手取りが約90万円となります。厚生年金は保険料を支払った分、将来自分に戻ってくる分もありますので単純に手取りが90万円とは言い切れない面もあるかと思いますが、105万円以内であれば社会保険料は発生しないので違いは大きいかと思います。
なお、一定規模以上の会社の要件とは、下記を指します。
・正社員が501人以上
・収入が月8万8000円以上
・雇用期間が1年以上
・所定労働時間が週20時間以上
・学生ではない
上記に該当しない会社で働いているのであれば、年収130万円を超えると自分で国民年金と国民健康保険に加入することになります。こちらが「130万円の壁」です。この場合の社会保険料の負担額は年間約36万円になります。
例えば年収131万円の場合、社会保険料36万円を引くと手取りは約95万円になってしまうだけではなく、所得税と住民税もかかるようになります。そのため収入が130万円を超えるのであれば180万円以上くらいは働かないと家族の手取りが減ってしまう可能性があります。
今回は主に会社員の夫とパートの妻という視点からいろいろな「壁」をみてきました。特に意識するポイントとしては、夫の会社で扶養手当があるような場合はその手当の条件内(例えば年収103万円以内)で働くかどうかや、たくさん稼ぐなら年収180万円以上を目指す働き方などを検討してみるのがいいのではないでしょうか。
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)