扶養控除申告書ってなに?書き方・注意点を解説
配信日: 2020.02.21
扶養控除とは、扶養控除対象となる親族がいる場合に一定額の控除が受けられる制度で、受ける控除額が多ければ多いほど、納税額を抑えることができます。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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扶養控除等申告書とは?
扶養控除申告書とは、年末調整の際に勤務先に提出する書類のうちの1つで、正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。この扶養控除申告書を提出することで、扶養家族に当たる配偶者や親族がいることを申請し、その結果、所得控除を受けることができます。
基本的に提出する必要があるのは、給与収入のある会社員や公務員の方ですが、アルバイトやパートの方でも提出することは可能です。勤務先からは今年と翌年分の2枚が配られますので、両方に記載して提出するようにしましょう。
■扶養控除とは?
納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを所得控除の1つ、「扶養控除」といいます。この場合の控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、「その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」をいいます。
■扶養親族に該当する人の範囲
扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡し、または出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人のことをいいます。
(注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなること。
1.配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や、市町村長から養護を委託された老人であること。
2.納税者と生計を一にしていること。
3.年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)。
4.青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
■扶養控除額はいくら?
1.「一般の控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
2.「特定扶養親族」とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
3.老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
4.同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者またはその配偶者と普段同居している人をいいます。
同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱っても良いことになっています。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となるため、同居として取り扱うことはできません。
(※参考:国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」、「No.1180 扶養控除」)
扶養控除等申告書は提出しないとどうなる?
扶養控除等申告書を提出しなかった場合、勤務先に年末調整をしてもらえません。扶養控除申告書は年末調整に必要な書類の1つです。
したがってこの書類を提出しないと、勤務先の経理部門では提出されなかった方の年末調整をすることができず、その結果、自分で確定申告をしなければならなくなります。確定申告は時期が決まっており、税務署も混雑します。会社で年末調整を行うことができれば、基本的に確定申告をする必要はなくなります。
また、扶養控除等申告書を提出しなかったことが原因で、納税額が増えて手取りが減るということにもつながります。
なぜなら、扶養控除等申告書を提出することによって扶養家族の人数が分かるため、受けられる扶養控除の金額などについて税務署も把握できます。しかし、提出されないと、次の年度の扶養控除を税務署は把握できません。その結果、扶養控除が受けられなくなり、所得税の納税する金額が上がり、手取りが減少してしまうのです。
扶養控除等申告書を提出することで受けるメリットは?
扶養控除等申告書を提出する最大のメリットは、「所得税の金額が正確になる」ということです。それ以外にも、年末調整で所得控除を受けることができるというメリットがあります。
所得控除には、上述の扶養控除以外にも配偶者控除などさまざまなものがあります。仮に、現在、大学生(19歳)と高校生(17歳)の2人の子どもがいるとしましょう。
その場合、高校生のお子さんは「一般の控除対象扶養親族」に該当することから38万円の控除を、大学生のお子さんについては「特定扶養親族」に該当しますので68万円の控除となり、2人の合計で106万円の控除を受けることができます。
所得税の税率は所得金額によって異なりますので、控除の効果は一律ではありませんが、申告しないと控除を受けることはできません。扶養控除等申告書の提出は、節税効果につながるということを意識し、忘れずに提出することが大切です。
扶養控除等申告書の書き方を解説
扶養控除等申告書の様式は、以下のようになっています。
(引用:国税庁「令和2年分給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」)
そして、この扶養控除等申告書は、「個人情報」「源泉控除対象配偶者」「控除対象扶養親族」「障がい者、寡婦、寡夫または勤労学生」「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」「16歳未満の扶養親族」の6項目について該当があれば申請を行う必要があります。
では、それぞれの項目はどのように書けば良いのでしょうか。具体的な記入方法について説明します。
1.個人情報
右側には氏名住所、生年月日などの記入と押印をします。扶養控除等申告書は会社で保存される書類ですので、インク浸透印(シャチハタ)でも問題はありませんが、認印があればそちらのほうが望ましいといわれています。
個人番号(マイナンバー)については、会社から指示があれば記入します。また、「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」は空欄で構いません。
2.源泉控除対象配偶者
妻や夫が以下の「源泉控除対象配偶者」に該当するのであれば、配偶者の氏名や生年月日などを記入します。ここでいう源泉控除対象配偶者に該当するには、
・本人と配偶者が生計を一にしている
・本人の所得が900万円以下であること(給与収入では1120万円以下)
・配偶者の所得が85万円以下であること(給与収入がでは150万円以下)
の3つすべての要件を満たす必要があります。判断基準が配偶者控除や配偶者特別控除を適用できるかどうかではないことに注意してください。
3.控除対象扶養親族
家族が以下の「控除対象扶養親族」に該当すれば、その親族の氏名や生年月日などを記入します。控除対象扶養親族に該当するには、先の扶養親族に以下の条件が必要です。
・16歳以上であること(平成16年1月1日以前に生まれた人)
の条件を満たしている必要があります。
また、ここでの『16歳以上かどうか』については、1月1日時点の年齢が判断基準となります。控除対象扶養親族が18歳以上22歳以下の場合には、特定扶養親族ですので、氏名や生年月日などを記入した上で、「特定扶養親族」にチェックを入れます。
さらに、控除対象扶養親族が70歳以上の場合には、老人扶養親族ですので、氏名や生年月日などを記入した上で、「その他」にチェックを入れます。
ただし、老人扶養親族の場合で「本人や配偶者と同居している」もしくは「本人や配偶者の直系尊属(両親や祖父母)である」場合は、「同居老親等」にチェックを入れるので、間違えないようにしましょう。
4.障がい者、寡婦、寡夫または勤労学生
本人、配偶者、扶養親族が障害者である場合は、当てはまる障害の度合いによって該当する区分にチェックを入れます。内容の欄には、障害の等級や手帳を交付された年月日を記入してください。
また、本人が寡婦、寡夫、特別の寡婦のいずれかに該当する場合は、その該当箇所にチェックを入れます。そして内容の欄には、配偶者と別れた原因と本人の所得(見積額)を記入します。
本人が学生であれば、「障がい者、寡婦、寡夫または勤労学生」の欄の勤労学生にチェックを入れ、内容欄には学校名と入学年月日、所得の見積額を記入してください。場合によっては、学生証のコピーを一緒に提出する必要があります。
5.他の所得者が控除を受ける扶養親族等
この部分については、基本的に記入は必要ありません。
6.16歳未満の扶養親族
子どもなど16歳未満の親族がいる場合は、該当者の氏名や生年月日などを記入します。
まとめ
扶養控除等申告書における扶養控除は、年齢やその人の身体の状況などで区分が異なるので、項目が多く、判断が難しいと感じるかもしれません。しかし、1つずつ見ればそれほど難しくはありませんので、じっくりと条件を見ながら判断し、記入していくようにしましょう。
ただし、忘れてはならないのが扶養控除の要件には所得制限があることです。例えば、20歳の子どもがいて、その子がアルバイトで年間に104万円の収入がある場合は、扶養控除の対象外です。アルバイトをしている子どもがいる場合は、その収入についてもしっかりと把握しておく必要があります。
(参考)
国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
国税庁「No.1180 扶養控除」
国税庁「令和2年分給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員