更新日: 2020.04.30 その他税金

所得の性質と10種類の所得を知っていますか?

所得の性質と10種類の所得を知っていますか?
所得税は、納税者の担税力に応じた課税をするため、原則として、個人のすべての所得を総合して課税することになっています。
 
担税力とは、税金を負担することのできる能力のことです。通常、担税力は所得の大きさによって決まりますが、所得の大きさが同じでも所得の性質に応じて担税力に差が出てくる場合があります。
 
そこで所得を、所得の性質に応じていくつかの種類に分類し、課税方法や税の計算方法を変えています。これから、約10回にわたって、それぞれの所得の特徴や課税形態について説明していきたいと思います。
 
まず今回は、所得の性質と定義を説明したうえで、各所得の概要を解説してみたいと思います。
 
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

所得の性質について

所得はそれぞれの発生原因および発生形態に応じて分類されます。

1.所得の発生原因別分類

所得をそれが発生する原因に基づいて分類すると次のようになります。
 
(1)資産を運用することにより生じる所得
預貯金の利子や株式投資による配当、地代・家賃など(利子所得、配当所得、不動産所得など)
 
(2)勤労から生じる所得
給料や賃金、報酬など(給与所得、事業所得など)
 
(3)資産と勤労の両方によって生じる所得
商工業、農業等の事業から生じる利益(事業所得など)
 
(4)資産を処分することによって生じる所得
土地・家屋、株式等の譲渡による処分など(譲渡所得など)

2.所得の発生形態別分類

(1)毎年繰り返し発生する経常的な所得
利子や配当、給与や事業等による所得
 
(2)臨時的に発生する所得
土地・家屋、株式等の譲渡による所得、福引や宝くじの賞金等の一時的な所得
 
(3)毎年発生しても、その大きさが変動する所得
漁業の所得
 
(4)長い年月にわたり形成されなければ生じない所得
山林の譲渡所得、退職金や年金など
 
このように、所得はその性質がさまざまです。それに応じて、所得税法では、単に量的な意味での担税力だけでなく、質的な面における担税力も考慮しながら、それぞれの所得ごとに、課税方法や税の計算の仕方を変えています。

所得と所得税について

所得はどのように計算するのでしょうか?所得とは、「収入」から「必要経費」を差し引いたものをいいます。「収入」とは1年間に得た金額の合計であり、給与所得者でいえば「給与の総額」、不動産賃貸業者でいえば「家賃の総額」、個人事業主でいえば「事業で得た金額の総額」です。
 
これに対し「必要経費」とは、それらの収入を得るためにかかった費用の総額です。そして、「収入」-「必要経費」=「所得」となります。1年間の家賃の総額を100万円、それに対する減価償却費や修繕費など必要経費の総額が80万円であれば、所得は20万円になります。
 
所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの所得に対して課せられる税金をいいます。日本は超過累進課税方式をとっているので、所得の額が大きくなるにつれて税率も大きくなり、高額所得には率的にも金額的にも、大きな所得税がかけられることになります。

10種類の所得

所得にはどんなものがあるでしょうか?どのような方法によって稼ぎ、そのような形態で発生するのか(所得の発生原因と発生形態)によって、次の10種類の所得があり、それぞれに所得税の支払方法や計算方法(所得税の課税形態)が異なります。
 
所得税の課税形態としては、所得者の受け取る前に所得税が差し引かれる源泉分離課税方式(源泉徴収)、確定申告時に個別に申告して所得税を支払う申告分離課税方式、確定申告時に他の所得と合算して所得税を支払う総合課税方式があります。
 
以下の示す所得はさまざまな性格を持っているので、10種類の所得をいくつかに分類することも容易ではありません。10種類の所得を簡単に説明してみたいと思います。
 
1.事業所得
サービス業、農業、漁業、商工業、医者、弁護士、芸能人等、事業を営んでいる人の所得をいいます。
 
2.不動産所得
土地建物等の賃貸による所得をいいます。
 
3.利子所得
預金の利子や公社債などの利子収入の基づく所得をいいます。
 
4.配当所得
株数・出資額に応じて、株主や出資者が受け取る剰余金の配当をいいます。投資信託による分配金も含まれます。
 
5.給与所得 
給与所得者の給与収入に基づく所得、パート・アルバイト収入による所得等をいいます。
 
6.雑所得
その他9つの所得に当てはまらないものをいいます。厚生年金等公的年金保険や個人年金保険による年金、作家以外の人が受ける原稿料も雑所得に含まれます。
 
7.譲渡所得
土地、建物、株式等の資産を譲渡した場合に得られる売却益をいいます。
 
8.一時所得
当たり馬券、宝くじ、満期保険金等、継続的な営利目的の活動によるものでない、一時的な所得をいいます。
 
9.山林所得 
山林を伐採して売却したり、立木のまま譲渡したりした場合の所得をいいます。
 
10.退職所得
退職手当、一時恩給その他退職により一時的に受ける給与に基づく所得をいいます。

まとめ

FPが解説する所得は圧倒的に給与所得が多く、所得税や住民税の計算の仕方や節税効果なども、ほとんどの場合が給与所得者に関するものです。
 
しかし実際には、これだけのさまざまな所得があります。これらの所得の知識を得ることは、皆さん自身の資産運用や節税対策にも役に立つので、これからそれら所得の特徴を1つずつ説明していきたいと思います。
 
[出典]
国税庁「所得の種類と課税のしくみ」
国税庁「税大講本 所得税法(基礎編)令和2年度版/第3章 所得の種類」
国税庁「所得の種類と課税方法」
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー


 

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