譲渡所得とは? その3 株式等を譲渡したとき

配信日: 2020.07.03

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譲渡所得とは? その3 株式等を譲渡したとき
株式等を譲渡して得た利益は譲渡所得と見なされ、税金が課せられます。この場合のポイントは次のとおりです。
 
1.株式等には何が含まれるか?
2.株式等は上場株式等と一般株式等に分類され、それぞれ扱いが異なる
3.それぞれの譲渡所得に関する税金の計算方法
4.損益通算や損失の繰越控除はどこまで可能か?
 
それらについて、順を追って説明したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

株式等の譲渡益課税

(1)株式等を譲渡した場合、必ずしも譲渡所得になるとは限りません。通常の場合は譲渡所得になりますが、営利を求めて継続的に売買する場合、事業的規模である場合は事業所得、そうでない場合は雑所得になります。
 
ただし、課税方式や税額の計算方法は同じなので、それらをまとめて「譲渡所得等」と呼んでいるので、この記事でもそう呼ぶことにします。
 
(2)株式等の譲渡による譲渡所得等の金額は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分され、それぞれ他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税の対象となります。
 
(3)「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」は、それぞれ別々の申告分離課税とされているため、上場株式等の譲渡所得等と一般株式等の譲渡所得等の間で損益通算はできません。
 
ですから、上場株式等に係る譲渡所得等と一般株式等に係る譲渡所得等はそれぞれ別の項目として捉える必要があります。

株式、上場株式、一般株式とは?

株式とは、株式会社が資金を出資した人に発行する証券のことで、出資者はその見返りにその会社に対する地位や権利を得ることになります。
 
地位や権利には、会社の経営方針の承認等に関する株主総会での議決権や配当を受け取る権利があります。税務的には、株式会社だけでなく合資会社や協同組合等の出資者の持分や投資信託の受益権、公社債等の債券も株式等に含まれます。
 
そのうち、上場株式等とは金融証券取引所に上場されている株式等、店頭売買登録銘柄として登録されている株式、投資信託の受益権、国債、地方債、公社債等の債券が含まれます。
 
一般株式等とはそれ以外のものです。具体的には同族会社等上場していない会社の株式等が挙げられます。詳細を知りたい方は、国税庁のホームページ(※1)をご参照ください。

上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)の金額の計算方法

上場株式等、一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)の金額の計算方法は次のとおりです。上場株式等、一般株式等共に譲渡価額から必要経費を差し引いた金額が譲渡所得となります。税率は20%プラス復興特別所得税と覚えてください。
 
総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等の金額
 
上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)の税率は20%(所得税15%、住民税5%)となります。
 
注)2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

損益通算・繰越控除等

この問題を考える際は、上場株式等と一般株式等に分けて考える必要があります。

1.上場株式等

上場株式等の中では、基本的に損益通算・繰越控除とも認められます。上場株式等と債券等の間で損益通算・繰越控除の適用が可能であり、上場株式等の譲渡所得等と上場株式等の配当所得等および特定公社債の利子所得との間でも損益通算および繰越控除の適用が可能です。
 
ただし、配当所得等については申告分離課税を選択することが条件となります。

2.一般株式等

これに対し、一般株式等の間では株式等と債券等の損益通算・繰越控除の適用は認められません。

3.上場株式等と一般株式等

上場株式等と一般株式等の間でも、損益通算・繰越控除の適用は認められません。
 
上記のとおり、上場株式等は税務的に優遇されているということができます。

まとめ

証券税制は非常に複雑です。これらを完璧に理解する必要はありませんが、株式等には株式、投資信託および債券が含まれ、税率も20%プラス復興特別所得税となり、上場株式等では、損益通算と繰越控除ができることは知っておきましょう。
 
参考
※1 国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
国税庁 株式等を売ったとき
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー


 

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