コロナで株で損をした。確定申告で損益通算できる?
配信日: 2021.02.01
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
損益通算とは
結論から述べると、コロナ禍に生じた株の損益は損益通算することで、実質的な損害を減らすことができます。
損益通算とは、各種所得に生じた赤字分を他の所得あるいは翌年の所得と通算し、所得税を抑えることができる制度です。要は、Aから出た赤字分をBという他の所得の黒字分から差し引いたり、翌年のAの所得から差し引き黒字分を少なくできるということです。
株取引でいうなら今年の赤字分を翌年の黒字から差し引くため、今年の赤字を翌年に繰り越すことができるという感じです。
具体的に計算してみましょう。株の配当で10万円の利益があり、約2万円源泉徴収されていたとき、売却により10万円の赤字が発生していれば、損益通算により配当の「利益10万円」-「売却による赤字10万円」となり、トータルの利益はなかったものとされます。そして、既に源泉徴収されていた2万円が還付されるという仕組みです。
株の損益通算は原則、他の所得との間では行えない
株に関する損益通算は、他の所得(例えば山林所得や事業所得など)との間で損益通算することができません。例えば、株の譲渡によって生じた赤字は、不動産売買によって生じた黒字と損益通算できないということです。あくまでも株式によって生じた損益は、株式で生じた損益内でしか通算できないと覚えておいてください。
最大3年間、赤字を繰り越せる譲渡損失の繰越控除
上場株式に係る譲渡損失の金額については、全ての口座で損益通算してもなお、年間で計算すると赤字となってしまう場合は譲渡損失の繰越控除という制度により、翌年以後3年間にわたって上場株式の取引に関する利益や配当と損益通算ができるようになっています。
また、一般株式などに係る譲渡損失の金額のうち、特定中小会社の発行した株式で払い込みにより取得するなど一定の損失の金額がある場合には、その損失の金額については一定の要件の下、翌年以後3年間にわたって「一般株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等」の金額から繰越控除することができます。
損益通算には確定申告が必要
株の取引で利益を得たとしても、必ずしも確定申告が必要というわけではありません。源泉徴収ありの特定口座を利用して取引していれば、利益が出るたびに証券会社の側において税金を計算し、控除と納税まで行ってくれるため、確定申告が不要になります。
しかし、そういった場合でも損益通算の制度を利用する場合は確定申告が必要になります。損益通算を利用する場合は、特定口座の利用の有無に関係なく確定申告が必要だと覚えておいてください。
コロナ禍の株取引は損益通算について頭に入れておくべき
コロナ禍によって株価が予想もしないような動きをし、それに振り回され、株取引で損をしてしまったという方も少なくはないでしょう。そういった場合、損益通算や繰越控除の制度を活用することで、赤字となった株取引を黒字の株取引で帳尻を合わせることができます。
コロナ禍に限らず、少しでも赤字となる取引が発生してしまったときは、確定申告を行い、損益通算や繰越控除の制度を利用することをおすすめします。
出典
国税庁 No.2250 損益通算
国税庁 No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い
執筆者:柘植輝
行政書士