更新日: 2021.02.03 確定申告

確定申告をスムーズに進めるために準備しておきたいポイント

執筆者 : 小山英斗

確定申告をスムーズに進めるために準備しておきたいポイント
働き方や生き方が多様化してきている中、副業を認める企業も増えてきているようです。これまで会社からの給与が唯一の収入だった人も、副業からも収入を得た場合は確定申告が必要になる場合があります。
 
ここでは会社員の人が確定申告する場合、どんな準備が必要か見ていきたいと思います。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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確定申告とは

確定申告は1年間(毎年1月1日から12月31日)で得た全ての収入を基に、所得とこれに対する所得税および復興特別所得税を計算し、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に申告する手続きのことをいいます。
 
確定申告は1年間の所得金額を確定させ、それによって算出された税額と、給与や配当などの所得について源泉徴収された税額などの総額とを比較し、納め過ぎている分や、納め足りない分などを精算する意味合いもあります。
 
確定申告が必要な人は主に個人事業主やフリーランス、会社経営者などの事業所得がある人や家賃収入などの不動産所得がある人ですが、他にも退職所得、給与所得、利子所得、配当所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得がある人なども対象になる可能性があります。
 
それら所得金額の合計額が基礎控除や扶養控除などの所得控除額の合計額を超え、かつ課税総所得金額に対する税額が配当控除額などの税額控除額を超えるとき、つまり納めるべき税額があるときに確定申告をしなければなりません。
 
なお、納めるべき税額があるときの確定申告書の提出は義務ですが、純損失および雑損失の金額を翌年以降に繰り越す場合の確定損失申告および還付などを受ける(源泉徴収税額および予定納税額の納め過ぎている分を取り戻す場合)ための確定申告についての申告書の提出は任意となります。また、税金を取り戻す還付申告は還付申告の対象となる年分の翌年1月1日から5年間が提出期限となります。
 

会社員で確定申告が必要な場合

会社員の人であれば所得税は給与から源泉徴収され、かつ年末に所得調整(年末調整)がされ、会社が納税の手続きを代行してくれています。そのため特例として、通常は給与所得者である会社員の確定申告の必要はありません。
 
しかし、会社員であっても以下の条件に該当するような場合は確定申告が必要となります。
 

条件
  • 給与収入が2000万円を超えている
  • 給与所得および退職所得以外の所得金額合計が20万円を超えている
  • 給与を2つ以上の会社から受け取っている ※1
  • 初めて住宅ローン控除を受ける(2年目以降は年末調整の対象)
  • 医療費控除や雑損控除、寄附金控除などを受ける
  • ふるさと納税をしていて寄付先の自治体数が5つを超える(ワンストップ特例制度の対象外)
  •  
    ※1 従たる給与(給与所得者の扶養控除等申告書を提出していない会社からの給与)の金額と給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下は申告不要

 
なお、会社員で退職金を一時金で受け取る人については「退職所得の受給に関する申告書」を提出して会社から税金が源泉徴収された場合には退職金に係る確定申告は不要となります。
 

確定申告で使う申告書の種類

確定申告で使用する申告書は大きく3種類あります。それぞれ対象となる人を見ていきます。
 

■確定申告書A
所得の種類が給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけの人向けです。主に会社員やパートなどで給与を得ている人や、年金をもらっている人、株式などから配当を得ている人、保険の満期金などを受け取った人などが対象となります。
 
しかし、確定申告書Aの対象者が次に説明する確定申告書Bを使っても問題ありません。

 

■確定申告書B
確定申告書Aで記入する項目が足りない人(確定申告書Aに記載の所得に加えて、事業所得、不動産所得、利子所得、譲渡所得などがある人)が対象になります。個人事業主やフリーランス、マンション経営者などです。

 

■申告書第三表(分離課税用)
確定申告書Bの対象者の中でも、土地・建物の譲渡、株式などの譲渡、FX取引や先物取引などを行った人が利用します。

 

確定申告で準備しておきたいポイント

ここで、会社員が確定申告の必要となるいくつかの例をあげ、それぞれ準備しておきたいポイントを整理してみます。
 

■住宅ローン控除を受ける場合

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の作成が必要となります。また次のような証明書類の準備が必要です。
 

証明書類

・勤務先の源泉徴収票
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(借入先の金融機関で発行)
・住民票の写し
・土地・建物の登記事項証明書
・売買契約書の写し、または建築請負契約書など

 

■医療費控除を受ける場合

医療費控除は、生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が10万円、あるいは「所得金額」の合計に5%をかけた金額のどちらか少ない方の金額を上回った場合に受けることができます。
 
この控除を受けるためには「医療費控除の明細書」と領収書の準備が必要です。医療費控除の明細書は、医療を受けた人や病院・薬局ごとに医療費の内訳を一覧表にしたものです。
 
2017年の確定申告から医療費の領収書を添付する必要はなくなりましたが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除く)の提示または提出を求められる場合がありますので保管が必要です。
 
また、医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、医療費通知を添付することによって医療費控除の明細書の記載を簡略化することができます。
 

■副業をして収入を得た場合

会社員が副業で得た1年間の所得が20万円を超えた場合には、確定申告を行う必要があります。所得は収入から必要経費を差し引いた分となります。所得には給与所得や雑所得などの10種類の所得がありますが、副業で得た収入がどの所得の扱いになるのか、いくつか簡単に例をあげてみます。
 

・アルバイト先から給与所得源泉徴収票を受け取ったら「給与所得」
・不動産から賃貸収入を得ている場合は「不動産所得」
・執筆料やアフィリエイト料などにより支払元から「支払調書」を受け取ったら「雑所得」
・「独立・継続・反復して行っている事業(農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業)である」と認められる副業は「事業所得」

 
会社員が行う副業の場合は事業所得ではなく、雑所得とみなされる場合もあるようです。副業が事業所得と認められれば、例えば、副業で赤字が出た場合に給与所得などから損失を差し引くことができますが、雑所得の場合はできません。
 
また事業所得で青色申告をした場合には青色申告特別控除といった税制面での優遇もあります。副業で得た雑所得には税制面での優遇はありません。事業所得扱いの方が雑所得よりもメリットが多いといえます。
 

■仮想通貨で利益が出た人の場合

仮想通貨バブルと呼ばれた2017年当時につけたビットコイン価格の最高値が2020年12月に更新されました。仮想通貨の売買で多くの利益が出ている人もいるのではないでしょうか。
 
2020年12月現在、仮想通貨で得た利益は「雑所得」に分類されます。しかも、この雑所得は総合課税の対象となり、給与所得など他の所得と合算した額に応じて税率が決まります。そのため、利益が多額の場合は累進課税により所得税と住民税の合計では最大55%になることに注意が必要です。
 

まとめ

確定申告は申告書を手書きで準備することもできますが、国税庁がインターネット上で提供する「確定申告書等作成コーナー」を使えばある程度は画面の指示に従い書類作成が進められるので便利かと思います。
 
また確定申告書の提出方法には「税務署へ郵送」「税務署の窓口に提出」「電子申告(e-Tax)によりオンラインで提出」などの方法があります。時間や場所的な制約が緩和されるe-Taxが提出には便利かと思いますが、e-Taxの利用には「マイナンバーカード」が必要になります。マイナンバーカードの取得にも時間がかかるので注意が必要です。
 
確定申告は時間に余裕を持って行うようにしましょう。
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
 

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