58歳の母が、祖母の介護費用で「貯金200万円」を取り崩したようです。もともと預貯金は多くないようなのですが、老後の母の生活は大丈夫でしょうか?

配信日: 2025.12.30
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昨今「人生100年時代」「老々介護」「介護離職」などのキーワードがよく聞かれます。
介護に関する諸課題は、すでに高齢化社会を迎えているわが国にとっては、誰もが避けて通れないものとなっています。ご質問者もお母さまの老後の生活を少々人ごとのように思われているようですが、決して人ごとではなく、誰もが当事者であることを自覚する必要があるでしょう。
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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祖母の介護は義務なのか?

民法第877条には、直系血族と兄弟姉妹が互いに「扶養する義務」があることが定められています。また、特別な事情がある場合には、家庭裁判所の審判により三親等内の親族にも扶養義務を負わせることが可能です。直系血族とは、血縁関係を有する者を指し、親子間はもとより、祖父母と孫の間にも扶養義務があります。つまり、ご質問者にも祖母の扶養義務はあるといえます。
 
この扶養義務は、場合によって「介護義務」も含まれます。これは、身体的な介護だけでなく、経済面での支援も含まれるとされています。つまり、原則、親や祖父母の介護は子や孫の義務となります。ただし、扶養義務について扶養する者(子どもや孫)が、経済的に余裕がない場合などには、強制はされません。家庭裁判所に生活が困窮していると認められた場合は、無理に親の支援をしなくて良いものとされています。
 

もしも祖母の介護を放棄すると?

扶養義務がある者が、必要な支援や介助を怠った場合はどうなるのでしょうか?
刑法では、保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります。さらに、遺棄したことによって傷害を負わせたり、死亡させたりした場合には、「保護責任者遺棄致傷罪」や「保護責任者遺棄致死罪」に問われる可能性があります。これは、介護義務を放棄した結果、たとえ故意(殺意)がなくても、介助がないと生活に支障があるにもかかわらず、自宅などに長期間一人で放置したり、食事を与えなかったり、必要な治療をさせなかったりした場合には、責任が問われる可能性もあり、拘禁刑などの罰則もあります。
 

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祖母の介護の経済的負担は?

祖母の介護期間が長期化すると、介護する母の経済的負担も大きくなります。もちろん、精神的、肉体的な負担も大きいものと思われますが、本記事では、経済的な側面に絞って考えていきます。
母が働いて介護費用を賄っていた場合には、介護に要する時間的な制約から労働時間が削られたり、休職せざるを得なかったり、場合によっては介護を理由とする「介護離職」を余儀なくされる場合もあります。
 
これらを回避するためには、介護施設に入所してもらうことが解決策の一つとなるでしょう。
当然ながら、介護施設に入所するための費用が発生するため、この問題を解決できるのかが最大のネックとなります。ただし、状況によりますが、介護負担全般の軽減により、介護離職などの最悪の事態は回避できる可能性は高くなると思われます。
 
もう一つ考えられることは、生活保護の検討です。これは、祖母と母のそれぞれに経済的余裕がなく、いずれかまたは双方が生活保護を受給することが想定されます。ただし、生活保護を受ける場合には、親族からの援助の有無や働くことが困難であること、預貯金のほかの使用していない不動産等の資産状況についても確認が必要となり、家族にも調査協力が求められることになります。つまり、ご質問者(孫)に対しても経済的な援助の可能性などが調査される場合もあります。生活保護は、世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活維持のために活用することが前提であり、また、「扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します」とされています。
 

まとめ

「老後の母の生活は大丈夫でしょうか?」との問いには、明確な答えはありません。ただし、直系血族と兄弟姉妹が互いに扶養する義務があることを鑑みれば、母の心配はもとより、孫であるご自身にも扶養義務があることを認識しておく必要があると思われます。
 
親族を含めた家族が相互に助け合い、介護などの経済的な負担が生じた場合でも自分事として対応していくことが理想といえます。ただし、それぞれの家庭環境においては理想論だけでは解決できない場合もあり得ます。可能であれば、祖父母や両親が元気なうちから将来的な介護の可能性を考慮したうえで、必要となる資金の準備や保険加入などを検討しておくべきでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法 (扶養義務者)第八百七十七条

厚生労働省 生活保護制度

 
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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