一人暮らしの母は生活保護を受けています。もう高齢なので将来が心配…生活保護受給者は年金を受け取れないのでしょうか?
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
目次
「生活保護を受けていると年金はもらえない?」という誤解
「生活保護を受給していると、一般の人が受け取る年金はもらえないのでしょうか?」この疑問は非常によく聞かれます。結論からいうと、生活保護を受給していても、年金を“もらえない”わけではありません。
ただし、年金と生活保護は同時に満額もらえる制度ではなく、両者の関係を正しく理解する必要があります。誤解の多いテーマだからこそ、仕組みをひとつずつ整理していきましょう。
年金は「権利」、生活保護は「最低生活の保障」
まず、公的年金は保険料を納めたことによって生じる権利であることを確認しましょう。
国民年金や厚生年金は、「要件を満たせば」受給資格が発生し、生活保護を受けているかどうかに関係なく請求できます。これに対して、生活保護は「資産や収入を活用しても、なお最低限度の生活ができない場合」に不足分を補う制度です。
つまり、制度としては、「年金が最初、生活保護が後」になります。このため、生活保護受給者であっても、年金の受給資格がある場合は、原則として年金を請求できます。
年金をもらうと生活保護はどうなる?
では、年金を受け取ると生活保護は打ち切られるのでしょうか。答えは「ケース・バイ・ケース」です。
生活保護申請・支給決定の判断において、年金は「収入」として扱われます。そのため、年金額が「生活保護基準額を下回る」場合には、年金を受け取りつつ、不足分を生活保護が補うことになります。一方で、年金額が生活保護基準額を上回る場合には、生活保護は停止または廃止になります。
例えば、生活保護基準が月13万円の人が、年金を月8万円受け取る場合、差額の約5万円が生活保護として支給されます。「年金をもらうと損をする」ということはなく、最低生活水準は必ず確保されるしくみになっています。
障害年金・遺族年金も対象になる
生活保護受給者と年金の関係で、重要なのが障害年金や遺族年金です。いずれも公的年金の一種であり、受給資格があれば請求できます。
実務上では、「生活保護を受けているから障害年金はもらえない」と誤解され、未請求のままになっているケースも耳にします。もちろん、障害年金や遺族年金を受給すると、その分生活保護費は調整されますが、本人の生活水準が不利になることはありません。むしろ、生活保護から将来的に自立できる可能性が広がる点で重要な制度です。
年金請求は「義務でもあり、権利でもある」
生活保護と年金は対立する制度ではなく、役割をそれぞれ分担しています。生活保護を受給している場合でも、年金の受給資格がある人は、原則として請求する必要があります。これは不利になるからではなく、「公的制度を正しい順番で使う」ためです。
大事なことは、「生活保護を受けているから年金とは無縁」ではない、ということです。年金記録の確認や、障害年金・遺族年金の可能性を一度整理することで、将来の選択肢が広がる場合もあります。
制度を利用・活用しようと思えば、まずはしくみについて知っていることが前提になります。誤解のまま放置せず、正しい情報をもとに判断することが大切です。
出典
厚生労働省 生活保護制度との関係について
厚生労働省 生活保護と公的年金の役割の違い
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者