不動産投資の「5棟10室基準」ってどんな基準なのか解説

配信日: 2019.07.12

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不動産投資の「5棟10室基準」ってどんな基準なのか解説
今の世の中、不動産投資をされている方も少なくないようです。
 
年金制度の将来像への不安(長寿高齢化や少子化が進展)から私的年金代わりに、との考えもあるでしょう。そして「働き方改革」などでサラリーマンが以前よりも副業しやすくなっている状況が後押ししているようにも思えます。
 
その投資対象は、ワンルームマンション1室から、戸建1棟、ビル・マンション・アパート丸ごと1棟、はたまた駐車場まで、規模も形態もさまざまです。 
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「事業的規模」とは

これらの不動産を貸し付けて得た収入は不動産所得となりますが、所有する不動産のボリュームが基準を超えると、「事業的規模」であるとされます。
 
所得税基本通達26-9(※1)では「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべき」と実態に基づくとしながらも、形式基準として次を示しています。
 
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

 
(1)はアパートやマンション、(2)は戸建ですが、その数から「5棟10室基準」と言われています。ちなみに、複合形態の場合は、次のとおり換算します。
 
 ・戸建1棟は、アパート・マンション2室
 ・駐車場は、5区画でアパート・マンション1室
 ・共有の場合は、持分換算せずに全体で判断
 

 
なお、不動産所得が多額(1室の賃料が高額)だったり、主に不動産収入で生活しているなどの実態がある時には、「5棟10室」以下でも「事業的」と認定される場合もあるようです。
 

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事業的規模になると、どんなメリット・デメリットがあるの?

事業的規模になったことそれ自体が形式要件となって、例えば所得税(国税)の税率が高くなるといったわけではありませんが、次のようなメリット・デメリットがあります。
 

 
「サラリーマン大家さん」が投資額を大きく増やして、数十の室数、数億円を超える規模の不動産を所有している、というような話を耳にすることもあります。
 
こうした事例はもちろん「事業的規模」として営まれていると思われ、本業(会社員)を超える所得を得ているものと推察されます。
 

副業のつもりが、こんな事例も・・・

そうなると、副業のつもりでいた不動産投資でも、【どこまでが副業で、どこからが本業なのか】といったことが気になるところです。これに関して、今年2月にちょっと気になる新聞報道を目にいたしました。要点は、次のとおりです。
 
 ・仙台市の職員が懲戒処分を受けた。
 ・処分理由は、平成20年に無許可で仙台市内にアパート3棟を購入して、年間600~700万円の家賃収入を得たこと。
 ・さらに平成28年3月には母親を代表とするアパート経営のための法人を設立し、職員が実質的に経営していた。
 
人事院規則14-8(※2)では、国家公務員が営利企業の役員になったり、自ら営利企業を営む(自営)ことを原則禁止し、一定の条件を満たして上司(任命権者)が許可した場合は例外的に認めるという建付けにしています。
 
地方公務員でもこの規定が準用されるケースが多いでしょう。不動産事業について見ると、「5棟10室基準」のほかに「駐車場は10台以上または機械設備設置」「年額収入500万円以上」などが、「自営」に該当します。
 
該当する場合には、自ら経営に関与(法人設立など)しないことや、賃貸管理会社に委託(アウトソーシング)するなどの措置を取らないと、許可されないことになっているのが現状のようです。
 

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まとめ

「働き方改革」、そして70歳まで働ける社会を目指す流れなどによって、会社員の副業のイメージが以前よりもポジティブになり、副業をしやすくなっているのは確かだと思います。
 
しかしながら、公務員ではこのような制約が未だに存在し、民間の会社員でも会社の就業規則などで、類似の制約があるケースも想定されます。
 
不動産投資では、事業規模を拡大・伸長していく際の“マイルストーン”のひとつに「5棟10室」が位置付けられる場合もあるようです。それを達成することによるメリットとデメリットは、あらかじめ入念に比較して、吟味しておくべきでしょう。
 
出典:(※1)国税庁「法第26条《不動産所得》関係 (建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)」
   (※2)人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
 

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