更新日: 2020.05.21 株・株式・FX投資
【株式投資指標のおさらい 後編】低ければよいってものでもない! 「PER」とは?
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
「PBR」と「PER」はどこが違うの
「PBR」は、【会社の株価を、その会社の解散価値(1株当たり)で割った数値】でした。例えば、A社という会社の株価が500円で解散価値(1株当たり)が550円ならば、PBRは【0.91倍】です。
このように「その数値が1倍を切ると投資の好機」とよくいわれると説明しました。もちろん注意すべき点もいろいろあり、この数値だけをうのみにして判断すべきではありませんが、代表的な投資指標のひとつです。
それでは「PER」とは何か。英語「Price Earnings Ratio」の頭文字で、株価収益率といわれています。こちらは、【会社の株価を、その会社が1年間で稼ぐ純利益(1株当たり)で割った数値】です。
例えば、A社の株価が500円で純利益(1株当たり)は50円だとします。この場合のPERは【10倍】です。また別に、同じ株価500円で純利益(1株当たり)が25円のB社があるとします。こちらのPERは【20倍】です。
もしもこの2社が同じ業界で、純利益のうち株主配当に向ける率(配当性向)も同じような水準だとすれば、次のようにいわれることがあります。
◇株式に投資した資金を配当で回収すると考えるとB社の2倍のスピードで回収できるので、A社の株価はかなり割安だ。
◇この業界全体に期待されるPERが【20倍】くらいだとすると、A社の株価は割安であり、1000円くらいにまで上昇する余地がある。
PBRは、会社(企業)の「純資産」つまり、会社の資産から負債(借金やまだ支払っていないツケ)を引いた部分の価値(1株当たり)と株価の関係でした。この純資産は、会社の財産状況(貸借対照表)の中であらわされていました。
一方PERは、会社の稼ぎ状況(損益計算書)における最終的なもうけである「純利益」(1株当たり)と株価の関係になっています。
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「PER」の特徴は
【図表1】の当期純利益を発行済株式数で割った数値が、1株当たり純利益=EPS(Earnings Per Share)です。
株価をこのEPSで割ったのがPERで、その数値が小さい方が株価は割安だと一般的にいわれます。ただし、何倍が妥当な水準なのかなどの定説があるわけではありません。
このPERも、会社ごとの数値は証券会社のサイトなどで簡単に調べられます。また株式相場全体の数値の動きも、日本経済新聞のサイト(※1)や同紙上の「株式市場 ◇投資指標」の欄で日々の動きを確認することが可能です。
このうち日経平均のPERの数値は、昨年12月30日(大納会)で【14.36】(加重平均・倍、以下同じ)が今年に入ると最高【14.69】(2月13日)でした。
しかしPBRと同様に2月下旬から急落して、その後も不安定な動きです。3月は最高【13.16】(3月2日)から最低【10.60】(3月16日)で、4月は最高【16.07】(4月30日)から最低【11.89】(4月3日)でした。
こちらの動きを見ても、新型コロナウイルス感染問題が株式市況に及ぼしている影響の大きさがうかがえます。
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低ければよいというものではありません
PERは、損益計算書の純利益の数値から計算されますが、会社の業績が決算期によって大きく変動することは珍しくありません。日経平均のPERの過去の動きをチャート図化したもの(※2など)を見ても、そのことが実感されます。
さらに純利益の数値を「過去」の実績と「将来」の見込みのどちらで見るか、また「将来」が今期末なのか来期以降も含めるのかによっても幅が出てきます。
また、仮にその数値が高くても、将来にわたる成長性や業績好転を期待して特定の企業や業界の株価が高くなることは珍しくありません。低いほどよいといった絶対的な基準ではないのです。
一方で、ある会社の過去から将来のPER数値の動向を見たり、業界平均や同業他社のPER数値と比較したりして、その株価の割高割安感や将来性などをはかる相対的な尺度として有用な場合があります。
まとめ
<前編>でも申し上げたように、株式投資には「ハイリスク・ハイリターン」の側面が強くあります。また、日経平均など市場全体の指標に対して、個々の株価が全体の動向とは違った動きをすることも決して珍しくないのです。
PBRも、そして今回のPERも株式投資の判断基準として役に立つ場合もありますが、最終的には自己判断と自己責任。慎重にそして無理を避けることが、何よりの“判断基準”なのでしょう。
[出典]
(※1)株式会社日本経済新聞社「ヒストリカルデータ」~「日次投資指標 株価純資産倍率(PER) 加重平均(倍)」
(※2)株式会社ディーボ「投資の森」~「日経平均株価 PERチャート」(チャート下の期間選択ボタンのうち「3年」などを押下)
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士