株式の取得費が分からない! どうしたら分かる? 分からないと困ることは?
配信日: 2023.04.27
しかし、もし取得費が分からなければ、株式の売却額から差し引けるのは、売却時の手数料等のみになってしまいます。つまり、譲渡所得の額が大きくなりますので、課税上不利です。
もし特定口座で株式を保有していなければ、株式の取得費は自身でしっかりと記録しておかなくてはなりません。そもそも、株式を相続(NISAや限定承認を除く)等で取得したのであれば、被相続人が記録した株式の取得費になります。
どうしても取得費が分からない場合は、どうしたらよいのでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
まず取引報告書で確認
取得費は、証券会社などの金融商品取引業者等(以下、証券会社等とします)から送られてくる取引報告書で確認できます。取引報告書以外でも、口座を開設する証券会社等が発行する取引残高報告書(上場株式等の取引がある場合)や、月次報告書、受渡計算書などの書類で確認できる場合があります。
■取引報告書等、証券会社から届く書類もない……顧客勘定元帳
まずは株式の取引をした証券会社等に、取引報告書等の書類の再発行を相談してみましょう。再発行等が難しいようであれば、証券会社等で記録している「顧客勘定元帳」で確認できます。
基本的に、過去10年以内の取引が記録されていますが、10年を超える取引を保管し開示するか否かは、証券会社等によるようです。
■証券会社等から届く書類でも顧客勘定元帳でも分からない
こうしたケースは、相続等で株式を取得した場合等で想定できるかもしれません。そもそも、どこの証券会社等で購入したかも分からない、証券会社の合併等により購入した証券会社が分からなくなった、などです。
そこで、日記帳や預金通帳などの手控えによって株式の取得費が分かれば、その額で問題ありません。もしも手控えで取得時期のみが確認できる場合は、その取得時期を基に取得費を算定してもよいでしょう。
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名義書換日を調べて取得時期を把握する
上記の方法で取得費を把握できなかった場合には、名義書換日を調べ、取得時期を把握することで、その取得時期の相場を基に取得費を算定できます。
例えば、発行会社か信託銀行等の名義書換代理人等の株主名簿・複本・株式異動証明書などの資料を手がかりにして、株式等の取得時期(名義書換時期)を把握することで、その名義書換の時期の相場を基に、取得費(取得価額)を計算できます。なお、株券電子化後に手元に残った株券の裏面でも確認できます。
また、概算取得費というものがあります。同一銘柄の株式等ごとに売却額の5%を、概算取得費として売却額から売却時の手数料とともに差し引くことができます。
まとめに代えて
特定口座で株式を保有していれば、株式の取得費等が分からなくても譲渡所得の計算ができます。しかし、例えば相続等で取得したため、取得費が分からないと、今度はその株式を特定口座で保有できません。特定口座で株式を保有するためには、取得費を把握している必要があるのです。
出典
国税庁 上場株式等の取得価額の確認方法
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1464 譲渡した株式等の取得費
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役