更新日: 2024.01.18 その他資産運用
投資初心者が選びがちの全世界株式型投資信託。必ずしも分散投資であるとはいえない?
本記事では、全世界株式型のETF(上場投資信託)が、米国を代表する株価指数のS&P500と値動きがほとんど同じであることを確認したうえで、分散投資の意味について改めて考えていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
VTとS&P500はほとんど値動きが同じ
全世界株式型ETFで有名なバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(以下、VT)の場合、ファンドに組み入られている上位10銘柄は2024年1月10日時点で、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラ、バークシャー・ハサウェイ、ユナイテッドヘルス・グループとなっています。
上位10銘柄の組み入れ比率を合計すると、VTの構成銘柄全体の16.21%を占めます。これらは世界的にも時価総額が高い企業の銘柄で、たとえ全体の割合では少なく見えても、実際はこのファンドの値動きを決めているといっても過言ではありません。
それでは、実際にVTのチャートを見てみましょう。図表1のチャートでは、VT(黒)と米国の株式指数であるS&P500(オレンジ)について、2015年3月付近を100として推移を表示しています。
図表1
〇VTとS&P500の推移
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
S&P500が上昇するとVTも上昇し、反対にS&P500が下落するとVTも下落していることが分かります。つまり、全世界株式型投資信託のVTは、ほとんど米国株と同じ値動きを示しています。
このように同じような値動きになるのは、先ほど述べたとおり、VTに組み入れられている上位10銘柄が、世界的に時価総額が高い米国企業の株式だからです。
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なぜ全世界株式型投資信託が分散投資とはいいにくいのか
分散投資は、リスク(不確実性)を散らせて投資を行うことです。
資産配分(アセットアロケーション)を考える際、例えば株式や債券、不動産、コモディティー(貴金属や穀物、エネルギーなど)など、さまざまな金融商品に投資資金を分けることでリスクを分散します。また、異なる国・地域の株式や債券などに資金を振り分けることで、リスクを分散する方法もあります。
前述のVTの場合、投資している金融商品は主に株式で、他の金融商品に資金が振り分けられているわけではありません。確かに全世界の株式に投資しているという意味では分散が図られているといえますが、ほとんどが時価総額の高い米国企業の株式に資金が投じられているため、実体としては必ずしも分散投資になっていないと考える必要があります。
まとめ
投資初心者は何に投資したらいいか分からないという理由で、おそらく米国や全世界の株式型投資信託を選ぶ傾向があるように思います。しかし、今回確認してきたように、チャートを見れば必ずしも分散投資が図られているわけではないことは一目瞭然といえます。
分散投資の意味を正しく理解し、それに適した方法で投資を行っていくようにしましょう。
出典
TradingView Inc. TradingView
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)