“塩漬け”になっている株式や投資信託を売って、NISAでの投資を考えています。損をした場合に何かできることはありますか?
配信日: 2024.12.24
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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損益通算することで税金還付
今年は投資への関心が高まった年でした。投資にはリスクがつきものです。「長期投資をすればリスクは軽減できます」という理論には一理ありますが、塩漬けになった株式や投資信託に頭を痛める例も少なくありません。
これまで見て見ぬふりをしていた場合も、「世間が投資に動いているので、いつまでも放置していられない」と損切りを迷っている方もいるかもしれません。今回は損失が出た場合にできる損益通算を考えます。
退職金を銀行の退職金プランに預けたAさん。
契約したプランは、定期預金50%と指定された投資信託50%に預けると、定期預金の利率が優遇されるというものでした。Aさんは投資初心者ですが担当者の詳しい説明に納得し、いくつかある投資信託の中からXファンドを選ぶことにしました。
その後、購入した投資信託の基準価額は上下変動し、結果的にAさんは含み損を抱えることになりました。
もちろん、自己責任なので「自分は投資に向いていない」と諦めて、ほったらかし状態が続き半年がたちました。やがてAさんは完全にリタイアしたので公的年金以外に収入がほしいと思い、毎月分配型の投資信託に乗り変えることにしました。Xファンドを売却し、毎月分配型の投資信託であるYファンドを購入したのです。
この時点でXファンドの損失は確定です。乗り換え後、AさんはBファンドから毎月の分配金を受け取っています。受け取る分配金には税金が掛かります。その都度、所得税15%と住民税5%復興特別所得税0.315%が源泉徴収された形で指定口座に振り込まれる仕組みです。
翌年になり通帳を見たら、振り込みがありました。これは、Xファンドを売却した時の損失とYファンドからの分配金(利益)を損益通算して還付されたものです。売却損が出た場合は、売却益や分配金などの利益と相殺することで課税の対象となる金額を減らすことになります。
ということは、支払うべき税額も少なくなりますので、すでに源泉徴収されていた金額から再計算された差額が還付されたのです。
損失と利益が同じ口座内での取引なら、金融機関が年間を通して計算・納税しますので自分で手続きする必要はありません。Aさんも報告書は受け取っていますが、知らない間に手続きしてもらっていたのです。
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NISA口座とは損益通算できないことに注意
一般的には「源泉徴収ありの特定口座」で取引をしていますので、1つの証券会社のみと取引している場合は、Aさんのように“お任せ”で損益通算の手続きは完結します。
ですが複数の会社と取引している場合は、自分で確定申告をする必要があります。「申告分離課税」を選び、損失と利益を通算します。再計算された税額に基づき、納付済みの税金が還付される手順は“お任せ”と同じです。
もともとは対面式の証券会社と取引していたが、手数料の安さなどから最近はネット証券と頻繁に取引している……そんな話は多いです。今年は株式相場の値動きが激しい1年でした。配当金や分配金を得た方、利益を確定した方の中で、塩漬け株(投信)を持っている場合は、損益通算をして塩漬けの整理を考えてはいかがでしょうか。
実体験からの個人的感想ですが、こうして整理すると“塩漬け”も少し救われる気がします。「新しい投資先で大いに働いてもらう」と前向きになれるかもしれません。
この損益通算、マイナスが多い場合は翌年から3年間繰り越すこともできます。損失を意識して無理に利益確定を急ぐことはありません。ただし、毎年の確定申告は必要です。
最後に、以上のように損益通算することで節税することは、課税口座でできることです。NISA口座では損益通算はできません。そもそもNISAは非課税制度です。もうけに対しては非課税なのはありがたいことですが、損した場合にも他のもうけと通算できません。これはNISA口座で取引する上での注意点です。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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