NISAを始めたいけど「年率5%」は意外と高ハードル!? 実際いくらで想定すべき? NISA初心者が“知っておきたいポイント”とは
「一体何%の数字を入れればいいんだろうか?」「5%という数字を見たことがあるけど本当にこの数字は正しいのだろうか?」と疑問に思う人も多いかもしれません。
今回は、NISA運用における「年率」の意味や実際どの程度の利回りを想定すべきなのか、5%は目指せるのかを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
年率ってそもそも何? 5%で将来どれだけ増える?
NISAのシミュレーションで入力する「年率」は、「想定利回り」とも呼ばれ、1年間にどれだけ資産が増えるかを示す指標です。
60万円を年率5%で運用すると、1年後には3万円増えて63万円になります。重要なのは、この増えた3万円にも翌年以降リターンが発生することです。
2年目には63万円の5%に当たる3万1500円増えて66万1500円になるといった具合に雪だるま式に増えていきます。これが複利効果と呼ばれるものです。
例えば、年率5%で20年間運用すると2.65倍の159万円に増えることになります。4%の場合は2.19倍なので131万4000円。たった1%の差でも複利の効果で、運用成績が大きく違ってくるのです。
「年率5%」は実際どれくらいのハードル? 5%を目指すための資産構成は?
では年率5%を目指すためにはどういった資産に投資すべきなのでしょうか? 未来の結果は誰も予想できませんが、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金の運用をする際に用いる資産別の想定利回りを参考にして考えていきます。
・国内債券 0.7%
・外国債券 2.6%
・国内株式 5.6%
・外国株式 7.2%
国内株式だけ、あるいは外国株式だけを買えば5%を超えますが、想定利回りが高いほどリスクも高いとされており、これだけを購入することには不安が残ります。いくつかの資産に分散しながら5%を目指すのが、リスクとリターンのバランスが取れた合理的な選択となるでしょう。
複数の種類を買う場合、加重平均が資産全体の利回りになると考えられます。例えば、国内債券と海外債券に半分ずつ投資した場合の想定利回りは以下の通り1.65%になるわけです。
0.7%(国内債券の想定利回り)×0.5(保有割合)+2.6%(外国債券の想定利回り)×0.5(保有割合)=1.65%
4つの資産を均等に25%ずつ持った場合は、同様の計算をすることで4.03%と求められます。
0.7%(国内債券の想定利回り)×0.25(保有割合)+2.6%(外国債券の想定利回り)×0.25(保有割合)+5.6%(国内株式の想定利回り)×0.25(保有割合)+7.2%(外国株式の想定利回り)×0.25(保有割合)=4.03%
国内外の債権と株式を均等に持ったバランスの良い資産構成なので、こういった資産の持ち方をするのも1つでしょう。
しかし、これでは5%になりません。想定利回りを上げるためには、株式の比率を上げる必要があります。例えば、国内外の株式の割合を35%ずつに増やし、逆に国内外の債券を15%ずつに減らした場合以下の通り4.98%となり、5%に近づきます。
0.7%(国内債券の想定利回り)×0.15(保有割合)+2.6%(外国債券の想定利回り)×0.15(保有割合)+5.6%(国内株式の想定利回り)×0.35(保有割合)+7.2%(外国株式の想定利回り)×0.35(保有割合)=4.975%
つまり、想定利回りを5%とするためには株式を多めにした構成で資産を持つ必要があるのです。ただし、利回りが上がる分当然リスクも上がります。
なお、GPIFの想定利回りはあくまで将来予測に基づくものであり、必ずしもその通りになるわけではありません。市場環境や経済情勢によっては、利回りが大きく下振れする可能性もあることに注意しましょう。
NISA初心者が知っておきたいポイント
年率5%と想定しても、毎年きれいに5%ずつ上がるわけではありません。
10%上がる年もあれば、1%しか上がらない年、あるいはマイナスになる年もあります。そういった上げ下げを続けながら、長期的に年率5%になるように成長していくのです。
長期投資を続けていると、リーマンショックのように資産が半分近くになることもあるでしょう。それでも、パニックになって売却せずに保有し続けることで、いつか株価は回復し、想定利回りに近づいていくのです。
短期的な結果に一喜一憂せずに長期目線で運用を続けましょう。
年率5%を目指すなら株式比率がカギ
年率5%は資産運用における1つの目安ですが、実際に毎年5%のリターンを安定して得るのは簡単ではありません。4資産を均等に持った場合の期待利回りは約4%にとどまり、5%を目指すには株式の比率を高める必要があります。
ただし、株式比率を上げることでリターンは高くなる一方、価格変動のリスクも大きくなる点に注意が必要です。「想定利回りを何%にすべきか」という問いには答はありません。リスクとリターンのバランスを考えながら、どの資産をどれくらいの割合で持つか考えましょう。
また、想定利回りはあくまで将来の予測値であり、市場環境や経済情勢によっては想定通りにいかない可能性もあります。短期的な結果に一喜一憂せず、長期的な視点で安定した運用を目指すことが重要です。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人 基本ポートフォリオの変更について
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
