扶養内パートの主婦が「iDeCo」をやっても意味がない? 月5000円だけなら「新NISA」のほうがいいでしょうか? 30年間運用した場合でシミュレーション
iDeCoは老後資金作りのための制度ですが、掛金が所得控除の対象となり、運用中にもメリットがあります。一方、新NISAは無期限で、非課税で運用できるため、老後資金をはじめ、子どもの教育費や車の購入費など、人によってさまざまな使い道を選択できるでしょう。
しかし、扶養内で働いているパート主婦(夫)の場合、iDeCoで受けられる恩恵が少ないことから、iDeCoか新NISAのどちらがいいのか、悩む人もいるのではないでしょうか。
本記事では、iDeCoと新NISAの違いをまとめ、毎月5000円ずつ運用した場合、どうなるのかをシミュレーションします。どちらを始めるか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
iDeCoと新NISAの違い
iDeCoと新NISAの違いを図表1にまとめました。
図表1
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト、金融庁 NISA特設ウェブサイト より筆者作成
iDeCoは、自分で掛金を出して運用する、年金制度の1つです。老後資金作りを目的としているため、原則として60歳以降に引き出せます。年間投資額は、公的年金の被保険者の種別によって異なり、専業主婦(夫)であれば月2万3000円、年間で27万6000円が上限です。
新NISAは、利用目的に制限があるわけではありません。そのため、本人次第で自由に使い道を選択できます。年間投資額はiDeCoよりも多く、つみたて投資枠では120万円、成長投資枠では240万円、合計で360万円です。しかし、非課税で保有できる金額は1800万円までと決まっています。
どちらも運用中に得た利益に対して、税金はかかりません。さらに、iDeCoでは掛金が全額所得控除となります。また、iDeCoの場合、年金として受け取る場合は「公的年金控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の適用を受けられます。
扶養内パート主婦はiDeCoと新NISAのどちらがいい?
iDeCoと新NISAの違いを理解したところで、どちらがいいのかシミュレーションをしてみましょう。まず、扶養には、税法上と社会保険上の2種類があります。ここでいう扶養とは、年収103万円以下で、所得税と住民税の支払いがない、税法上の扶養を指します。シミュレーションする際の条件は次の通りです。なお、運用利率は3%とします。
●年収:100万円
●運用時期:30歳から60歳まで
●毎月の投資額:5000円
iDeCoで30年運用した場合
まずは、iDeCoで運用した場合をシミュレーションしてみました。
積立総額:180万円
運用益:111万3684円
合計金額:291万3684円
運用益の節税額:22万2737円
収入が少なく、所得税、住民税ともにかからないことから、所得控除の恩恵を受けられません。しかし、運用益にかかる税金は非課税のため、仮に税率を20%とすると、約22万円を節税できます。
ただし、iDeCoにはさまざまな手数料がかかります。どのような手数料がかかるのかを見てみましょう。
●加入したとき・資産を移したとき:2829円(初回のみ、税込)
●掛金を納付するとき:毎回105円(税込)
●運営管理手数料:運営管理機関によって異なる
●事務委託手数料:事務委託先金融機関によって異なる
なお、国民年金基金連合会にかかる手数料は掛金から、運営管理機関にかかる手数料は積み立てた資産から差し引かれます。
ここでは、楽天証券でiDeCoを運用したと仮定して、手数料を計算してみましょう。
●加入したとき:2829円
●毎月かかる手数料:6万1560円(171円×12ヶ月×30年)
合計すると6万4389円です。実際には差し引かれる元は異なりますが、運用益から差し引いたと仮定すると、運用益は104万9295円となります。元本と合わせたときの合計額は、284万9295円です。
新NISAで30年運用した場合
次に、iDeCoと同様の条件でシミュレーションすると、運用益、運用益の節税額ともにiDeCoと変わりません。
積立総額:180万円
運用益:111万3684円
合計金額:291万3684円
運用益の節税額:22万2737円
新NISAでも、商品の購入時や保有時などに手数料がかかります。しかし、商品によっては、購入時の手数料がかからない商品もあります。手数料の中でも運用・管理費用である信託報酬は、保有額に応じて日々支払うものです。一定の水準以下に設定されていますが、積み重なると運用成績に影響を与えるため、よく確認しましょう。
例えば、資産の総額が180万円、信託報酬率が税込0.5%とすると、年間9000円が差し引かれます。30年運用すると27万円かかる計算です。ただし、実際には保有額が毎日変動するため、一定ではありません。
信託報酬率が高いと、運用期間が長くなるほど運用益の差が大きくなります。そのため、信託報酬率の低い商品を選ぶことがポイントです。
資産運用をする目的を踏まえて考えよう
扶養内で働くパート主婦(夫)の場合、もともと所得税・住民税の支払いがないため、iDeCoに加入をしても、所得控除の恩恵を受けられません。
配偶者がiDeCoに加入しておらず、所得税や住民税の支払いが多い場合は、配偶者が加入して所得控除の適用を受けたほうが、節税効果が高まるでしょう。しかし、iDeCoは所得控除だけではなく、運用益が非課税になり、受け取り時にも控除を受けられる点がメリットです。
まずは、資産運用をする目的を考えましょう。iDeCoは老後資金作りが目的であるため、原則として60歳まで引き出せませんが、言い換えれば確実にその年齢まで貯められます。
老後資金だけでなく、教育費やマイホームの購入など、使い道の選択肢を広げたい場合は、新NISAのほうが適しているでしょう。特に、新NISAは100円からできる証券会社もあります。投資がどのようなものなのか、試しに始めてみたいという人は、新NISAから始めるといいでしょう。
出典
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト
金融庁 NISA特設ウェブサイト
楽天証券株式会社 手数料|個人型確定拠出年金(iDeCo)
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

