月6万円いれるとNISA貧乏に⁉ 家計とNISAちょうどよいラインはどのくらい?
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
着実に進んだ“貯蓄から投資へ”の流れ
「投資にはリスクがある」、この点について注意が必要なことはいうまでもありません。新NISAが始まってから約2年の間にも株価急落の局面がありましたので、「投資にはリスクがある」を実感した方も多いでしょう。「怖くなって売却した」という話も耳にしました。
この変動リスクに対して「長期・分散・積立」を取り入れる手法が効果的であることや、NISAの制度設計が適していることはご存じのとおりです。
さて、「投資にはリスクがある」という不安がありながらも、“貯蓄から投資へ”の流れが進んでいるのは、2つの理由があります。
一つ目は、日経平均が最高値を更新する局面でもあり、急落を経験しても持ちこたえた人たちが、“我慢していれば株価は上昇する”という見方にあります。これは「投資したもの勝ち」的な考え方にもつながるので、少し慎重さも必要だと感じています。
もう一つは、インフレ防衛という観点です。長らくデフレの時代が続きましたが、最近はモノの値段が高騰しているニュースが多く、将来のインフレに不安があります。
デフレに慣れてきた私たちにとっては、100円ショップで買えるものが20年後に300円に値上がりすることは想定外でした。老後資金に2000万円貯めようと毎年100万円の積立預金をコツコツ20年続けた場合、2000万円を貯めることはできても、その2000万円では思い描いていた生活はできません。
今後は貯めるだけでなく、将来のインフレにも対応できるような工夫が求められます。インフレ対応となる資産の代表例は、不動産や株式、金などです。昨今はマンションの値段、日経平均株価、金の価格、いずれも高値で推移していますので、将来への不安があおられることは明らかです。
将来不安のために犠牲を払っていないか
今回取り上げたい「投資にはリスクがある」だけではない、もう一つの注意点が以下になります。
NISAは“少額投資非課税制度”ですが、新NISAでは年間投資金額の上限が増えました。長期的な資産形成を目的としている、つみたて投資枠の上限は120万円で、毎月10万円まで積み立てることができます。ただ、「毎月10万円の積み立て」、この金額は少額ではありません。
“投資は余裕資金で”これもよく耳にする言葉かもしれません。しかし、NISAがブームになりつつある今、例えば隣にいる同期の積立額が気になるのではないでしょうか。「毎月5万円投資している」と聞けば、自分もそれ相応の積み立てを考えてしまうという人もいるかもしれません。
これまでも毎月の貯金が習慣になっていたのなら、資産形成の手段を銀行口座からNISA口座に移行しても、通常どおりの生活が維持できるかもしれません。しかし、「5万円を捻出して大丈夫ですか? 無理はないですか?」と、まず問いたいです。
“現在の生活スタイルをNISAのために我慢する”これでは長続きしません。NISAは、将来希望する生活の実現に向けた資産形成手段の一つです。NISAが目的になっては、本末転倒です。無駄遣いを見直して節約し、その資金を投資にまわすことは大賛成ですが、欲しいものや必要なものを犠牲にすると今を楽しめません。
“NISA貧乏”をご存じでしょうか? NISAを優先するために消費が縮小している、という説もあります。何事もやり過ぎは禁物。自分の適性金額を見極めることが肝要です。
金融庁のサイトでは、NISA制度の解説だけでなく、ライフプランや積み立てのシミュレーションもできますので、参考にしてください。
出典
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
