NISAは「1月に12万円」「1万円×12ヶ月」どちらが有利ですか?「一括投資・毎月投資」を“過去20年”で比較した結果とは? メリット・デメリットも解説
今回は、このような議論が生まれる理由や、一括投資と積み立て投資のメリット・デメリットを解説します。また、S&P500に投資した場合のシミュレーションも行います。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
一括投資VS毎月コツコツ投資の議論が生まれる理由
2024年から新制度となったNISAでは、投資枠が大幅に引き上げられました。2023年までのNISAは、つみたてNISAは年間40万円、一般NISAでは年間120万円が上限でした。また、どちらか一方を選ぶ必要がありました。
しかし、2024年からは、つみたてNISAはつみたて投資枠となり年間120万円、一般NISAは成長投資枠に引き継がれ年間240万円まで投資が可能です。また、併用できるため、年間360万円まで投資できるようになりました。
つみたて投資枠の場合、毎月積み立てられる上限額が10万円に設定されていることが多く、120万円を一括投資することはできません。しかし、成長投資枠は一括投資ができるため、毎月コツコツ投資をするのとどちらがいいのか、といった議論がされるようになりました。
また、「市場は長期的に上昇する」と考えられています。そのため、年始に一括購入をすると安い時期に購入でき、利益を得やすいと考えられていることも、このような議論がされる理由です。
一括投資と積み立て投資のメリット・デメリット
改めて、一括投資とは何なのか、メリットとデメリットを押さえておきましょう。一括投資とは、一度にまとまった資金を投資することです。まとまった資金を早く投資するため、積み立て投資をするよりも運用期間が長くなり、複利効果によってより大きな利益を得られる可能性があります。
しかし、相場によって大きな損失を被る可能性もあるため、リスクが大きい点がデメリットです。
積み立て投資とは、毎月決めた一定額を投資することです。一括投資よりも投資額は少なくなります。また、購入するタイミングが分散されるため、長期間にわたって運用することで、購入価格が平準化され、安定して利益を得やすくなります。しかし、短期間で大きな利益を得ることは難しくなります。
一括投資と毎月投資はどちらが有利?
それでは、一括投資と毎月投資するのとでは、どちらが有利なのでしょうか。ニッセイ基礎研究所によると、2000年1月~2023年11月まで、S&P500の配当込み指数に1月に1万円を投資した場合と毎月1万円ずつ投資した場合を比較した結果、一括投資のほうが有利だったとのことです。
詳細を見ると、投資元本287万円に対し、一括投資をした場合は1603万円、毎月投資をした場合は1476万円に増えました。また、2001年以降、各年に投資を始めた場合も、1月に一括投資をしたほうが、毎月投資をしたケースよりも資産額が上回る結果となりました。
一方、毎月投資したほうが有利だったケースは、年間通して下落傾向にあった年であることも分かりました。
これまでの結果を踏まえると、一括投資のほうが有利であるといえるでしょう。
一括投資か毎月投資のどちらがいいかはリスク許容度も考えて決めよう
そもそも一括投資は、まとまった資金がなければできません。これまでの結果を見ると、年始に一括投資をしたほうが有利でしたが、年始の時点では上昇するのか、下落するのかは誰にもわかりません。場合によっては、株価の影響を受け、大損する恐れもあります。
NISAは、長期にわたって運用することを前提としているため、長く続けることで損をリカバリーできる可能性があります。しかし、一時のマイナスで精神的にもダメージを受けるようであれば、一括投資は避けたほうがいいでしょう。自分のリスク許容度をよく考えて、投資をすることが大切です。
出典
株式会社ニッセイ基礎研究所 新NISA、「毎月投資」か「1月一括投資」か 基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.323]
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
