更新日: 2020.09.07 その他資産運用
想定利回りと想定資産額にこだわらない方がいいワケ
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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私たちが預けている定期預貯金の投資先はゼロ金利の国債がメイン
現在、定期の預貯金をした場合の金利は金融機関によって異なりますが、0.1%を下回る水準です。われわれが預金をしたお金は貸付先がないため、金融機関の投資先は主に国債です。われわれのお金に金利がつかないゆえんです。
それでも国債は「国」が発行するものですから、安心度は高いということで定期預貯金を主な預け先としている方が多いのでしょう。
しかし、「安心感が高い=安定」ということは、同時に「上にも動かない=投資対象の価額が上がらない」ということにほかなりません。
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モデルポートフォリオの中身をよく見ると……
元本が10年間で1.5倍になるようなモデルポートフォリオを見ると、想定利回りは3.5%などと記されています。これを実現するためには、どうしても値動きが大きいものに投資せざるを得ません。
よく「外債=外国債券」などと提案されていますが、先進国はご存じのようにおしなべて低金利政策をとっていますから、比較的金利が高い新興国債券をメインの投資対象にしなければなりません。
例えば、2020年1月現在ではトルコリラ建てであれば年率10%というものもありますし、ブラジル国債やロシア国債で8%を上回るものもありますので、これらを組み込めば簡単に前提条件3.5%を上回る利回りを想定できます。ただ、想定することと、実際に投資をすることは違います。
自転車も転んでみないとうまくなれない
そしてこのギャップを目の当たりにすると「やっぱりこの国のことはよくわからないし」「ちょっとリスクが高いし」「現実的じゃないし」「もうちょっと考えてから」ということで投資を先送りしがちです。
それでも、メディア等で老後資金問題が取り上げられるたびに、思い出して「資産運用しなければ」→「中身を見てなじみのない国の債券を組み込まなければ想定利回りが実現できない」と知って、「二の足を踏む」の繰り返し。このような方は少なからずいらっしゃいます。
投資であっても、自転車の練習と同じで、やってみないと始まりません。蛇足ながら投資での「リスク」というのは「危険」ではなく、「値動きの幅(が大きい)」という意味です。言い換えると大きく下がる場合もあれば大きく上がる場合もあるという意味であることを確認して始めましょう。
いざ始めるとなると、最初は想定利回り3.5%どころか1.5%ぐらいが妥当でしょう。経験を積んで、徐々に上げていけば良いのです。皆さんが幼いころに補助輪なしの自転車に初めて挑戦するときのことを思い描いてください。
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者