これから日本経済はどうなる? 「ファンダメンタルズ分析」で自分なりのストーリーを組み立てよう
配信日: 2020.08.11
資産運用をする上で相場の動向を予測するためにファンダメンタルズ分析が用いられますが、必ずしも専門的に考える必要はなく、自分に身近な情報から相場の動向を探れるようになればいいように思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
日経平均株価指数で方向性をイメージする
例えば、日経平均株価指数をベンチマークにしている株式型の投資信託を購入している場合、保有している投資信託がこれからどうなるか気になることでしょう。そんなとき、こんな問いを投げかけます。
「これから日本経済は良くなるのだろうか、それとも悪くなるのだろうか」
日本経済が良くなると思うなら日経平均株価指数は上がるでしょうし、悪くなると思うなら逆に下がるでしょう。これをチャートで見ると、次のような相場観になるのではないでしょうか。
○日経平均株価指数(1965年1月5日~2020年6月12日)
※筆者作成
上のチャートは1965年1月5日から2020年6月12日までの日経平均株価指数の推移です。このチャートを見て、これから日本経済は良くなると思うなら日経平均株価指数は上がると判断し、株式型の投資信託を選ぶと思います。
これとは逆に、日本経済は今後悪くなるだろうと思うなら、日経平均株価指数は下がると判断し、株式型の投資信託を選ぶのは控えることになるかもしれません。
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これからの日本についてストーリーを組み立ててみる
それでは、日本経済が「良くなる」、もしくは、「悪くなる」の判断材料について考えてみましょう。今から将来を予測するわけですから、基準をコロナショック後とします。
(1)世界の潮流
コロナショック後の世界は「アメリカと中国の対立が激化する」といわれています。
新型コロナウイルス感染症が発生した国が中国であることから、世界経済に悪影響を与えてしまった中国への損害賠償や制裁などが指摘されていますが、それ以上に、これまで中国に依存してきた経済構造が是正され、自国経済がより重視されやすくなるといった「グローバリズムとナショナリズムの対立が深まる」ことが考えられます。
このような話はテレビなどの討論番組などで指摘されるようになってきているため、日常の中で耳にしやすい情報といえるかもしれません。世界の潮流がグローバリズムとナショナリズムの間で大きく揺れるようになると、その流れの中で日本経済はどのように動いていくのでしょうか。
(2)マネーの流れ
日本ではすでに方向性として決定されていますが、今後、自国経済への回帰がビジネスシーンで検討されてくるように思います。
他国においてもそのような政策の下、経済運営がされるようになるとお金の流れが変わります。中国からマネーが流出し他国に流れ込むようになるでしょう。
このとき、基軸通貨であるドルが貿易などの決済通貨であるため、必然的にドル需要が高まります。つまり、長い目で見るとドルの力が他の通貨に比べ相対的に強くなることから「ドル高・他国通貨安」の流れが訪れるかもしれません。
ただ、現在行っている大規模な金融緩和政策において、アメリカは2020年までゼロ金利を継続すると発表しているため、金利政策によって極端なドル高になるのを防いでいるといえます。
日本においては、日銀もゼロ金利政策の維持を発表したため、ドル・円では相対的に極端な偏りが生じにくくなっており、方向感の定まらない動きとなっています。
このようなことから、グローバリズムとナショナリズムという対立構造の深まりは、当面、ドル・円には大きな影響を与えないにしろ、長期的には徐々に円安・ドル高を誘発する可能性があるのかもしれません。
(3)国内経済の傾向
世界の潮流がグローバリズムVSナショナリズムの対立の深まりによって、ドル基軸体制の強化につながるとすると、ドルに対して円が安くなる可能性があることから、日本経済にとってはプラスに働くことが考えられます。
これは輸出額が増えることで貿易黒字に寄与するという意味ですが、この点では輸出企業にとっては有利に働き、逆に輸入企業にとっては不利に働くことになります。
つまり、外需産業にはプラス、内需産業にはマイナスになりますが、ここで自国経済への回帰を絡めると、おそらく日本としては消費を喚起するための政策を多く打ってくることが予測できます。
消費が喚起されるようになると、国内経済は活発化し、企業が潤い、家計が満たされ、経済の好循環が生まれるかもしれません。
このように考えると、物価は徐々に上がり、これに伴い金利も上昇し、日本経済はデフレから脱却、そして復活するといった絵図も描けるかもしれません。
(4)日本の問題点
しかし、日本国内の問題に目を向けると、今後、さらに進んでいくだろうといわれている「超高齢化社会」と出生率の低下に象徴される「少子化社会」の結果、人口が減少していく可能性が高いため、果たして内需、つまり、消費が活発になるのだろうかという疑問が湧いてきます。
そこで、国は生産性を向上させようとIT・ICT・IoTといった最新技術を国の基幹産業とすべく予算配分を行っていますが、これが実体経済に上手く結びつくと日本経済は良くなり、実質的にあまり機能しないとなると経済効果は期待できないため日本経済はそれほど浮揚しないと考えられます。
まとめ
ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析とは、つまるところ、これから世界がどうなるか、日本がどうなるかをときには数値を用いながら自分の言葉でストーリー化していくという作業です。
冒頭で見た日経平均株価指数のチャートは、日本経済が描いてきた軌跡とも呼べますが、これから日本がどうなるかを自分なりにイメージすることで資産運用における投資判断を下すことになります。
このとき、自分の日常からファンダメンタルズを眺めてみてください。自分の会社はこれからどうなるのか、自分の働き方はこれからどうなるのか、そして、自分の家計はこれからどうなるのか。
これまで述べてきたような難しいひも解きをしなくても、おのずと自分なりの答えが導き出されるかもしれません。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)