“保険で貯金”に潜む落とし穴 ~ファイナンシャルプランナーへの相談実例~
配信日: 2018.03.22 更新日: 2024.10.10
お子さんもまだ小さいので、保育料も決して安くはありません。特に浪費をしていなくても、これでは貯金できなくて無理もありませんでした。
ほかの人からも「貯金ができない性格だから保険をかけている」という言葉をよく聞くことがあります。
今回は、住宅購入を検討していたMさんの事例から「保険で貯金」に潜む危険なポイントをチェックしようと思います。
Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
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いざというときの現金が足りなくなる
Mさんが支払っている10万円の保険料のうち、7万円弱は貯蓄性のものでした。一定期間(Mさんの場合は60歳以降まで)おいておけば払込金額相当、もしくはそれよりいくらか多く受け取ることができるものでしたから、ある意味では「貯金」だったのです。
しかし、Mさんは住宅の購入を希望していました。ここで問題になるのは、頭金や諸費用に充てられる現金預金がないことです。
貯蓄性の保険は現段階で解約すると元本割れ、またそこから借り入れてしまえば、余計な利息がついてしまいます。
諸費用も用意できないとなると借り入れるローンが増えてしまうため、総返済額が上がるとともに、頭金を入れられないことでローンの優遇幅が小さくなってしまうなど、余計なコストがかかってしまいそうになったのです。
保障と貯金が混同してしまう
Mさんは住宅ローンを検討するときに、団体信用生命保険についても一緒に検討しました。保険料の負担なく自動で加入になる場合は、すでに自分で加入している保険と重複することがあるので、住宅購入は保険の見直しのタイミングでもあるのです。
しかし、現在加入している保険のほとんどが貯蓄型。確かに「死亡時は〇〇万円」という保険ですが、これは教育費用で、これは老後用で……と、死亡時に使おうと思っているものと貯蓄とが混同してしまっているため、どれを見直せばいいのか判断に困っていました。
解約前提で貯蓄のために使っている保険と、いざというときの死亡保険を混同してしまうと、とても管理しにくくなるのです。
実はそれほど利回りのよくないものも多い
保険金をもらうときに、掛けた金額以上にもらえるので、貯蓄と運用を兼ねてという意味合いもあって加入したものがありましたが、受け取るときの増え率を上げようとすると、解約すると元本割れする期間が長く続きます。
30年以上加入して、ようやくそこから増えてくるものなどは解約すると損する期間が多く「実質解約不能」な状態になってしまっていることも多いのです。受取金額が120%程度で30年固定されていたら、利回りは決して良くありません。
資産運用をしたいのなら、30年も元本割れする期間があるものでなくても、ほかに選択肢はたくさんあります。
Mさんは一度住宅の購入を見送り、家計の見直しと保険の検討を先に行いました。このままだと教育費も足りないまま、財産は有るのに「お金ない」ということになりかねないと自身が判断し、一部の保険を払い済みに変え、一部を解約しました。
もともと保険料を払うことができていたので、減った掛金分の貯金はどんどん増えました。解約した保険の返戻金と半年程度の貯金で、住宅の頭金を作ることもできたのです。
保険の解約で確かに元本割れが発生しましたが、住宅ローンの金利が下がったり、諸費用分の借り入れが不必要になったりしたおかげで、その分は1年を待たずして元が取れたことになります。
保険には保険にしかない特別な役割があります。契約が成立していれば、払込金額に限らず契約の保険金が下りてくるというのは、保険にしかない素晴らしい機能です。ですが、保険は万能ではありません。
貯金・保証・資産運用。それぞれの特徴やメリットデメリットを我が家の家計と照らし合わせて、それぞれベストな選択ができるといいですね。
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催