2019.01.11 家計

タンス預金は資産防衛策として万全か?そもそも現金を持つことの意味は?

国の財政赤字は大きくなる一方で、将来の一層の増税が懸念されています。
 
いつか財産税のようなものが導入されるのではないかという恐れから、タンス預金をしている人も少なくないかもしれません。確かに、タンス預金なら政府から資産を隠しておくことが可能です。しかし、そこにリスクはないのでしょうか?
 

タンス預金のリスクとは?

すぐに思いつくタンス預金のリスクとしては、火災や盗難といったものがあります。火災保険に入っていたとしても、自宅にある現金が燃えてしまった場合は、補償の対象とは通常なりません。盗難が火災保険でカバーされている場合には現金も補償対象となるものが多いのですが、ほとんどの場合、その保証額には20万円程度の上限がついています。多額のタンス預金には、保管上のリスクがあるのです。
 
保管以外のリスクとしては、そのお金が使えなくなるというリスクが考えられます。紙幣廃止や新紙幣発行による旧紙幣の流通停止といったことがあれば、タンスに眠るお金は、新紙幣や別の金額の紙幣に交換しなければ使えなくなってしまいます。現時点ではそうした事態が近く起こるとは想定しにくいものの、可能性を全く排除できないと感じさせる事柄もあります。
 

海外では高額紙幣を廃止する国は少なくない

インドでは2016年11月、当時の最高額紙幣だった1000ルピー(日本円で約1600円)と、その次に高額だった500ルピーの紙幣の利用停止を、モディ首相がテレビ演説で突然発表しました。日本で言えば、1万円札と5千円札が一夜にして使用停止となるような過激な措置です。目的は、巨大な地下経済に流れている不正資金の根絶だったとされます。
 
代わりに2000ルピー札と新たな500ルピー札が発行されましたが、交換もそれほどスムーズにはいかず、現金決済が9割を占めていたインドでは経済的なダメージも小さくありませんでした。しかし、高額紙幣の廃止はとにかくも完遂されました。
 
高額紙幣は脱税やマネーロンダリングに使われることが多いため、インド以外にも廃止に踏み切った国は少なくありません。カナダでは2000年に1000カナダドル札(約8万2千円)が廃止され、スウェーデンでは2013年に1000クローナ札(約1万2千円)が廃止されました。シンガポールも2014年に1万シンガポールドル札(約8万1千円)を廃止しています。
 
EUでは今年いっぱいで500ユーロ札(約6万3千円)の発行を停止することが決定されていますが、英国では2010年から既に同札の使用に制限を課していました。ただしEUの場合はインドとは違い、500ユーロ札は今後も法定通貨として使用することは可能です。
 

日本での1万札廃止を提唱する学者も

マクロ経済学の第1人者である米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授が昨年、「日本は1万円札を廃止するべきだ」と自著のなかで主張しました。「脱税やマネーロンダリングなどの犯罪が防げる」ほか、「次の金融危機が起こった際の金融政策の余地を広げることができるため」だと言います。
 
日本では個人の預金にはマイナス金利は適用されていませんが、今後再び深刻な景気後退が訪れれば、マイナス金利を深堀りせざるを得なくなる状況も想定されます。マイナス金利を嫌って個人が預金を引き出そうとしても、高額紙幣がなければ保管にも不便であるため、金融政策が効きやすいだろうという主張です。確かに、発行済みの紙幣の9割以上が1万円札であることを考えると、そのうちのかなりの部分が地下経済やタンス預金のようなものに回っていることが推定されます
 

キャッシュレス化を目指す日本政府

政府や日銀は1万円札の廃止を現時点では否定するものの、キャッシュレス化を目指すことは明確にしています。2017年6月に閣議決定した「未来投資戦略2017」では、2027年までにキャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指すとしました。こうした方針もあり、2019年10月の消費税増税の際には、クレジットカードなどのキャッシュレス決済で購入した分にはポイントを還元することが決まりました。また厚生労働省では、2019年にも給与をデジタルマネーで支払うことを認める方針を固めたとされます。
 
キャッシュレス化が多少進んでも、1万円札が使えなくなるわけではありません。しかし、現金が使いづらい環境になっていく可能性はあります。キャッシュレス化が最も進んでいるとされるスウェーデンでは、「現金お断り」と張り紙をする店は珍しくありません。そして日本でも昨年、ロイヤルホストが現金を受け付けない実験店を開店しました。
 
キャッシュレスは店舗側にとっても安全面や生産性の上でメリットがあると考えられ、そのような店が今後一気に増加する可能性はあります。さらに欧州では、現金決済の上限額を法律で定めている国が少なくありません。もし日本でもそのような法律が作られれば、タンス預金は一層使いづらくなることは間違いありません。
 
預金封鎖や1万円札紙幣廃止などに対する懸念は、現時点ではそれほど必要ないようにも思われます。しかし、国内外でキャッシュレス化に向かっている流れは認識した上で、資産防衛策としてのタンス預金も検討するべきかもしれません。
 
Text:北垣 愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
 
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執筆者:北垣愛(きたがき あい)

マネー・マーケット・アドバイザー

証券アナリスト、FP1級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級
国内外の金融機関で、マーケットに関わる仕事に長らく従事。
現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、マーケットに関する情報等を発信している。
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