更新日: 2024.10.10 働き方
〈働く女性を応援する〉⑤『将来は起業する』 言うのは簡単だけど、開業資金どう準備する?
また、開業資金に占める自己資金の割合が100%という人が半数以上です。開業資金が少なければ、確かに起業はしやすいですし、借金なしで事業が始められれば、倒産リスクもおさえられます。しかし、開業資金を希望どおり準備できなかった人ほど、起業後、売上を上げるのに苦労する傾向にあります。
Text:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
開業資金が足りない! 銀行からお金を借りられる?
前回の「ネイルサロンやカフェをオープンするときに必要な2つの開業資金とは」は、開業資金には設備資金と運転資金があり、それぞれどれくらいかかりそうか見積もりました。意外と開業資金を用意しなければいけない、とわかった人も多かったのではないでしょうか。
では、そのお金はどう準備したらよいのでしょう?
A子さんはダイニングカフェを開業したいと思っています。開業資金としていくら必要か見積もってみたところ、設備資金として500万円、運転資金として300万円必要だとわかりました。A子さんの(自由に使える)貯蓄は100万円、開業資金としてあと700万円足りないので、銀行から融資を受けたいと思っています。しかし、銀行に借り入れなどしたことがないA子さんは、どうしてよいかわかりません。とりあえず、近所にある銀行に行き、融資について相談してみたところ、難しいと断られてしまいました。
創業前に融資を受けるポイントとは?
なぜA子さんは断られてしまったのでしょうか? 理由はいくつか考えられます。
まずA子さんの事業はまだ実績がありませんので、決算書や確定申告書等を見せて、事業の状況を説明することができません。口頭で説明するだけでは、銀行にとっては夢物語を聞かされているのと同じです。
では、創業前の人は事業の状況を示すものがないので、融資を受けられないか、というとそうでもありません。事業計画書を作成し、事業の内容、業績の見込み、取引先など関係先や協力先、開業前・開業後のスケジュールなどを明確に示すことができれば、実績がない場合でも融資を受けられる可能性があります。その事業計画書が「絵に描いた餅」ではいけません。銀行に対し、事業の実現可能性を示すことが鍵になります。
さらに、A子さんは、自己資金100万円に対して、7倍にあたる700万円の融資を受けたいと申し出ました。これは銀行にとってはリスクの大きな話になります。せめて、不動産や有価証券などの担保、もしくは融資額と同等の定期預金があれば、万が一返済ができない状況になったとしても、元本は返済することができます。
したがって、自己資金100万円の他に、自己資金と同等のものが用意できれば、融資を受けられる可能性は広がります。
例えば、親や親類などから借りられないか? そういった借り入れは、無利子や返済期限がないことが多いので、いずれは返済するとしても、一時的には自己資金と同様に考えることができます。A子さんは、親に300万円借りることができました。したがって、自己資金と自己資金に準じるお金が400万円になり、銀行の融資額は400万円で済むことになりました。
このほかにも、融資を受けたい銀行にまず口座を作り、取引を始めておくとともに、良好な関係を築いておくことも大切です。
さらに、融資の審査の際には、必ず経営者の資質が問われることになります。起業をしたら、1人の経営者です。ちょっとやそっとでは事業を投げ出さない気持ちや誠実さなども、見られていることを忘れないようにしましょう。
Text:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士、システム監査技術者、不正検査士(CFE)
アットハーモニーマネジメントオフィス代表