更新日: 2024.10.10 働き方

日本を人口100人の国にしたら、働き方や社会保障のことがわかりやすかった!

日本を人口100人の国にしたら、働き方や社会保障のことがわかりやすかった!
各官庁が発行する白書。難しい言葉や統計がたくさんあり、とっつきにくいイメージがあるかもしれません。そのなかで、厚生労働白書は11年前から、日本を100人の国に例えた資料を公表しています。どのような発見があるでしょうか?
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

事例1 非正規雇用者の動向

 
まず見ていただきましょう。令和3年版の厚生労働白書「100人でみた日本」(※1.)です
 
表1.

(出典:厚生労働省「令和3年版厚生労働白書 -新型コロナウイルス感染症と社会保障- (100人でみた日本、日本の1日)」から転載)
 
お堅い統計の数字が親しみやすいタッチで表されています。最初にある男女別の人口を見ると、女性のほうが多いのですね。パーセントに読み替えられるので頭に入りやすいかもしれません。
 
女性の平均寿命のほうが長いのであたりまえかもしれませんが、実は統計では54歳以下だと男性のほうが多いのです。それが次第に接近し、50~54歳だと男性50.3人、女性49.7人となり、55~59歳で初めて女性が逆転します(※2.)。
 
このように、正確な数字ではなくても、大きな流れや傾向を把握するのに、100人で例えるのはとても有効なようです。
 
さて、見出しに挙げた非正規雇用者について、11年前の「100人でみた日本」(※3.)と比較してみます。
 
表2.

(厚生労働省「令和3年版 厚生労働白書」、「平成22年版 厚生労働白書」を参考に筆者作成)
 
全体に若干増えているようですが、どんな理由が考えられるでしょうか?
 
2010年は、リーマンショックが起きてから2年目。景気回復もまだこれからという時期です。非正規雇用数がいったん落ち込んだ当時から、持ち直してきたのが現在といえます。失業者も2.6人から1.5人と大幅な改善となっており、非正規雇用が受け皿になったことが考えられます。0.1が約12.5万人ですから、これらの変化は決して小さなことではなかったといえます。
 
他にも増加理由はないのでしょうか? それは、次の項にも関係してきます。
 

事例2 女性の就業状況の変化

同様に、女性の就業状況を2010年と比較してみます。
 
雇用される女性は、2010年が18.1人、2021年が21.5人と3.4人増えています。この間、男性は1.3人の増加にとどまります。注目したいのは、国民年金被保険者の区分別人数です。2010年は第二号(会社員や公務員)が29.9人、2021年が33.6人と3.7人増、第三号(第二号の配偶者)は2010年が8.2人、2021年が6.5人と1.7人減となっています。
 
専業主婦から仕事をもつ女性へと、ライフスタイルへの変化が進んでいることの一端と考えられます。前項で説明した非正規雇用増加の一要因ともいえるでしょう。また、週35時間未満の「短時間勤務」者が6.6人と大幅に増えており、こちらにも多くシフトしているのではないかと考えられます。
 

事例3 年金を支える就業人口の変化

老後の年金については、「現役の保険料負担者が減るばかりで将来の給付が不安」といった声がよく聞かれます。ここでは表1.の人口データから年金受給者を支える人数を確認していきます。
 
以下の期間で比べると、少子高齢化の進行が如実にわかります。
 
表3.

(厚生労働省「令和3年版 厚生労働白書」、「平成22年版 厚生労働白書」を参考に筆者作成)
 
子どもが減っていく5倍近いスピードで高齢者が増えているのですね。65歳以上の高齢者(分子)を、15歳未満と65歳以上を除いた人数(分母)で割ると、2010年が2.82人、2021年が2.06人になります。1人の年金受給者を、2人未満で支える世界が、もう目前に迫っているということです。
 
このように、家計や老後資金などの関心の高いテーマも、扱いやすい数字に置き換えることで理解を助けてくれます。
 

最後に

ここまで、ほんの一部ですが「100人でみた日本」をみなさんとともに眺めてきました。実は、白書にはもうひとつ、「日本の1日」という資料もあります(※4.)。こちらは、日本で1日に起こる出来事の数を調べて載せています。
 
例えば2021年では、1日に結婚するのは、2010年と比べて503組、離婚は166組と、ともに25%近くも減りました。少子化に加え、非婚化の流れを感じさせる数字です。
 
また、介護している人が介護・看護に費やす時間は、1日に49分から42分と7分減っています。
 
一方、デイサービスやホームヘルパーの利用はともに1.6倍ほどに大きく増えています。介護保険制度がスタートしてから20年、介護保険利用が進んでも、家庭内の介護・看護の労力を大きく移転させるには至っていないように見えます。
 
以上のように、単位を変えるだけで、遠い数字の世界が身近に近寄ってきます。一度、のぞいてみてはいかがでしょうか。
 
出典
※1.厚生労働省「令和3年版厚生労働白書 -新型コロナウイルス感染症と社会保障- (100人でみた日本、日本の1日)」
※2.総務省統計局「人口推計 -2021年(令和3年)11月報-」
※3.厚生労働省「平成22年版 厚生労働白書 厚生労働省改革元年(100人でみた日本、日本の1日、参考事例集、カルタ)」
※4.厚生労働省「令和3年版厚生労働白書 -新型コロナウイルス感染症と社会保障-/日本の1日」
 
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

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