更新日: 2024.10.10 家計の見直し
子どもがいる世帯の家計運営や貯蓄計画、どんな点に注意すればよい?
住宅ローンや教育ローンなど30代・40代で借り入れをした場合、家計運営や貯蓄計画についてどのような点について注意すればよいのか考えてみたいと思います。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
厚生労働省の調査はコロナ禍の実態は反映されていないが
厚生労働省では、医療、福祉の行政に役立たせるために1986年(昭和61年)を初年として3年ごとに大規模な調査を実施しています。
直近では2019年(令和元年)となり、新型コロナウイルス感染拡大前の状況なので、今の実態を反映したものとは言い難いところもありますが、おおよその傾向を理解できます。
子どもがいる世帯の借入額は、世帯あたり平均借入額の2倍超
調査結果は、所得、貯蓄と借り入れに分かれていますが、今回はそのうち借り入れについてのみとりあげたいと思います。
借入金の状況は、「借入金がある」と回答した世帯は 28.5%で、「1世帯当たり平均借入金 額」は 425 万 1000円です。一方で、児童のいる世帯では、「借入金がある」は 55.8%で、「1 世帯当たり平均借入金額」は 1119 万 7 000円と2倍超となっています。
子どもがいる世帯では、日常の生活費のほかに教育費がかかってきますから、当然の結果と思えるかもしれません。
就学前の教育費負担率が突出して高い日本
文部科学省がまとめた調査結果によると、日本において大学卒業までにかかる平均的な教育費(下宿費、住居費等は除く)は、すべて国公立でも約800万円。 すべて私立だと約2200万円にのぼると報告されています。
しかし注目したいのは、就学前の家庭の負担率で、OECD(経済協力開発機構)各国で、子どもが学童期に入る前にかける教育費の負担率は家計の約18%であるのに対して、日本は2倍以上の38%にのぼっているということです。
言い換えると、実際に学校に上がる前にいろいろな習い事をさせているためであると考えられます。
同じく文部科学省が公表している「平成30年度子供の学習費調査」の結果によれば、保護者が1年間、子ども1人当たりに支出した学習費のうち、学校外活動費は公立幼稚園に通う児童で約8万4000円、私立幼稚園に通う児童に対しては16万6000円となっています。
もう少し見てみると、公立小学校の児童では年間21万4000円、私立小学校の児童では年間64万7000円です。
学校教育にかかる費用だけならば大きな負担感はないかも
これに対して、学校教育費を見てみると公立幼稚園が年間14万円、私立幼稚園が36万2000円、公立小学校では年間10万7000円、私立小学校では164万7000円です。このように見てみると、公立の幼稚園や小学校では家計を圧迫するような費用は発生しないと考えてよいでしょう。
さらにいうと、年収の低い世帯を対象とした教育費負担軽減事業を実施している自治体も多く、また母子家庭などひとり親世帯についても教育費についての補助金制度が充実しています。
ただし、条件に合致すれば自動的に適用になるものではなく、申請をする必要があります。学校や地元行政からも告知されますので、情報収集を怠りなく心がけておけば十分対応できます。
長期的な家計運営を圧迫するような習い事はスルーする勇気も必要
家計運営は収入と支出があって、入り口を広げるか(収入を増やすか)出口を狭めれば(支出を減らすか)の二者択一によって余裕が出てくるシンプルな仕組みです。入り口が広がる見通しが立てづらければ、出口を狭める以外にありません。
子どもは、まだ家計の仕組みについては当然わかっていないので、自分の友だちがはじめた習い事はとてもまぶしく映るかもしれず、後先を考えずに「やりたい」と意思表示をしてくるかもしれません。
そこで、ついつい親世代も「やりたい気持ちを大事にしてあげたい」と言われるがままにあれこれ手を付けてしまうと、発表会だの公式試合だの、新しいユニホームや楽器が必要になる、といったように次から次へと追加支出が発生します。
ただ、一度始めてしまった習い事を「経済的な理由で辞めさせるわけにはいかない」と意地をはってしまっては、借入金を膨らませる悲惨な状況に陥るだけです。始める前に、収支を考えて「無理なものは無理」だと説明し理解させましょう。
家計運営は一生ついてまわるもので、充実した人生を送ることができるかどうかを左右するほどの影響力をもちます。小さいときから、収支のバランスを理解させられれば、子どもにとっては、一生もののスキルになるかもしれません。
出典
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況/Ⅱ 各種世帯の所得等の状況」
文部科学省「教育投資参考資料集/2.教育費負担」
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」
東京都「私立学校教育費の保護者負担軽減事業のご案内」
厚生労働省「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について」
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者